顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

湧き出る泉がご神体?…泉神社(日立市)

2024年08月15日 | 歴史散歩
暑い夏は、日陰と水辺を探して…ということでパワースポットとして最近テレビでも取り上げられたという日立市水木町の泉神社に出かけました、近くに居ながら初めての訪問です。


紀元前42年に祀られたとされ祭神は「天速玉姫命(あまのはやたまひめのみこと)」、あまり知られていない神様で天棚機姫命という機織りの神様の娘と伝わります。社記に「上古霊玉此地に天降り霊水湧騰して泉をなす号けて泉川云ひ霊玉を以て神体とする」とあり、祭神名の「速玉」とは清く澄んだ泉を意味することから、「密筑(ミズキ)の大井」が神格化されたものであるとされています。

1300年前の奈良時代に編纂された常陸国風土記にも「密筑の大井」として夏は冷たく冬は暖かい泉に人々が集まり、特に暑い日には近隣の村々から男女が酒や肴を持ち寄ってこの泉に集うという、ここより約68キロ南西にある筑波山の嬥歌(かがい)のような男女出会いの場の記述があるそうです。そのためか特に「縁結びのパワースポット」として人気が高く、平日なのに他県ナンバーの車が多く見かけました。


幟が並んだ参道は結界の雰囲気が充分に感じられます。神社というと大きな杉の林をイメージしますが、海まで700mというこの社は、海浜の樹叢類が多いような気がします。


参道奥の拝殿、神幕には水戸徳川家の葵紋が付いています。
この地を領した佐竹義篤が享禄3年(1530)社殿を修造したという棟札があり、また水戸徳川家からも厚い庇護を受けました。


水に因んだ龍の彫刻は、祭神が女神のためか親子の龍でした。そういえば辰年の今年の元朝参りはすごい混雑だったという話を聞きました。


本殿は、千木が女神の内削ぎ、鰹木は男神の奇数(三本)でした。


さてご神体の泉は本堂北側を下った池の中に湧き出していました。

池の真ん中には、境内社の厳島神社弁天堂があります。一時は参拝者が行列したようですが、それでも途切れることなく若い人が手を合わせていました。



右手の深さ1.5mくらいの池の中からエメラルドグリーンの清水が湧いています。

写真ではわかりにくいかもしれませんが、水底から青白い砂を舞い上げながら噴き出しているこの画面を携帯の待ち受けにすると素敵な出会いがあるといわれています。


湧水の水温は年間通して約15℃、湧水量は1分間に1500リットルで2008年に環境省が選定した「平成の名水百選」にも選ばれています。


硬貨を投げ入れないでくださいという大きな看板が掲示されていました。トレビの泉の硬貨投入額は年間1億6000万!…信仰風習も歴史も違うのでぜひ守っていただきたいと思います。


本堂横に眼洗いの泉があります。この泉で目を洗うと眼病が直ったと伝わっていますが…? 


まるで龍の頭そっくり…境内を見回っていた神職の方がこの倒木を発見、泉龍木(せんりゅうぼく)と名付け境内の名所の一つになっています。


ところでこの泉の周辺と神域の深遠な森の織り成す一帯は、泉が森とよばれて古くから親しまれてきました。

隣接するイトヨの里では、きれいな湧き水でしか生息できない「イトヨ(糸魚)」が生息し観察できると案内版には書かれています。


目を凝らしても見つけられませんでした。確かに「密筑の大井」から流れ出る小川は、手で掬って飲めそうな透きとおった水でしたが…

最新の画像もっと見る

コメントを投稿