今年は花粉飛散量が非常に多いとの予報、幸いなことに感覚の鈍い仙人は今のところその症状が出たことはありませんが、ここ数日車に降りかかった花粉の量には驚かされます。
原因の花粉を発散する植物はいろいろあるそうです。しかしその中でも最強はスギとヒノキ、その犯人の顔を観察してみました。この二つは同じような状況で植えられているので、葉を見ないと区別は難しいのですが、この時期のスギは紅葉したような色になるので遠くから見てもよくわかります。
花粉を供出するスギの雄花は、雌花に比べると圧倒的に数多く、枝先に付いています。その花粉は風媒花のなかでも特に小さくて軽く、約30ミクロン( 1mmの約1/30 )、マッチ棒の頭くらいの大きさの一つの花に、約40万粒の花粉が入っているそうです。しかも風に乗って500mくらいの高さまで、距離は200kmくらい飛散するというので、ビル街の市街地でも降り注ぐことになります。
こちらはヒノキの雌花、葉の形が違いますが、仕組みは同じようなものです。ただスギに比べて約1か月後に花粉の飛散が始まるそうです。植物は本能的に他家受粉を目指すので、雌花に比べて雄花の数の多さが頷けます。昨年結実した球果がまだ枝に付いています。
たまたまスギとヒノキが並んでいる林がありました。右がスギ、左がヒノキです。どちらも幹の皮は屋根などの利用されてきましたが、区別は葉を見ないと難しいですね。
特にヒノキの樹皮は檜皮葺き(ひわだぶき)として、社寺仏閣の屋根などに今でも使われています。
ところでヒノキによく似たサワラ(椹)は、金閣寺や、偕楽園好文亭の屋根のこけら葺きに使われますが、よく似ているので見分け方が難しいと言われます。
いつか弘道館公園内の植生についての講習会で、その見分け方を聞いたのを思い出して写真で確かめてみました。葉の裏の白い模様がヒノキはYの字、サワラはXの字または蝶の形に似ているというのがはっきりとわかりました。造園業の方もこれで区別しているそうです。
そういえば、スギの雄花は少年時代にスギ鉄砲で遊びました。雄花を篠で作った筒に押し込み、後から細い篠の棒でもう一個押し込むと圧縮されてパン!という音がしてはじき出ます。今思うと雄花がまだ硬い秋の頃に遊んだのでしょうか。
しかし当時は花粉症の話を聞いたことはなかったような気がします。調べてみると最初に花粉症が報告されたのはなんと1962年!原因としては、日本人の体質の変化や大気汚染によるアレルギーの原因となる物質の増加、そして戦後のスギ植林事業…などが考えられるそうです。
これら文明の進歩が引き起こした原因は、今度の新型ウイルスなどにもあるのかもしれません。最近では花粉を出さないスギの品種も開発されたそうなので、人類の叡智で充分な対抗策を期待したいと思います。
しかしここ2,3年、花粉症の症状が軽くなったり、インフルエンザの流行が以前ほどではないのは、いたって初期的な対策である「マスク」の効用であるとされます。着用の義務化が撤廃されるようですが、今後しばらくは、すっかり慣れ切ったマスク生活が続くのではと思ってしまいます。
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