活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

カクレキリシタンと隠れキリシタン

2014-08-02 02:32:43 | 活版印刷のふるさと紀行

 面白い本を読みました。

 『カクレキリシタンの実像』、著者は長崎純心大学の宮崎賢太郎さん。私の購入動機は「カクレキリシタンは隠れてもいなければキリスト教徒でもなかった!」という本のキャッチ・コピーでした。

 思い出します。私はいままで「キリシタン版」研究の旅で隠れキリシタンの里と出会い、いくつものエピソードを聞いてきました。為政者のキリシタン弾圧と殉教、『千々石ミゲル』を書くきっかけの一つもそれだった気がします。

 とくに初めての旅で長崎大村空港から向かったのが天正少年使節の像、大村純忠の旧城三城城、その次が放虎原の殉教地でした。純忠のキリシタン時代が終わりを告げたとき、ここ放虎原で205人もの隠れキリシタンが処刑されたのです。モニュメントの白い石にこれから斬首される信者を中心に、ひたすら祈っている数名の姿が描かれていて心を打たれました。天草ロザリオ館で初めて耳にしたオラショの低い声はいまでも耳に残っています。

 それから取材のかたわら、五島、生月、崎津、大江、外海や天草など各地で隠れキリシタンの秘話、悲劇を見聞きしました。そういえば、遠藤周作さんは『沈黙』はじめ、たくさんの作品でカトリック信者からの「転び者」を追っておられます。

 キリシタン弾圧ー殉教ー隠れキリシタンーそして1865年大浦天主堂での「サンタマリアのお像はどこ」とフランス人神父プティジャンに隠れ信者の老婆が囁きかけた有名な「信者復活」まで、250年間一貫してイエスを崇め、信じつづけたのが隠れキリシタン、これが私の理解でした。私だけではなく日本人の多くの隠れキリシタン観のはずです。

 宮崎さんのお調べになったカクレキリシタンの実像、カタカナ書きの「カクレキリシタン」という書名の意味するところはあなたにも読んでいただくことにして、興味ぶかい著作でした。


 


 

 

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