今回はロバート・F・ヤングのS.F.短編集「ジョナサンと宇宙クジラ」です。
・・・宇宙クジラ!
宇宙空間を漂う巨大なクジラ。
その体内には、そこを「新地球」と信じて疑わない人達が住んでいる。
ヤングの筆にかかると、奇想天外な設定も、ユーモア溢れるロマンチックな物語へと変わっていきます。
空飛ぶフライパンにサンタクロース、魔法の窓に教師を売る店。S.F.という枠組みの中で語られる、このロマンチックすぎるほどロマンチックな愛のかたちが、作者の追い求めるテーマなのです。
表題作の他、どれも大好きな作品ばかりなのですが、今回はその中の「リトル・ドッグ・ゴーン」を御案内します。
テレシアターの俳優ヘイズは、酒に溺れ、自暴自棄な生活を送る毎日。そのせいで仕事を失った彼は、勢いに任せて辺境惑星行きの船に飛び乗ります。行き着いた星の酒場で彼が出会ったのは、その酒場でショーをしている女性モイラと、テレポート能力をもつ犬(?)バー・ラグ。
モイラの献身的な看護のお陰でアルコール依存症から立ち直ったヘイズは、バー・ラグを主人公に、モイラと三人で芝居をすることを思い付きます。恋人同士が抱き合おうとする瞬間、二人の間に必ずバー・ラグが実体化するという喜劇が、娯楽の少ない辺境では大当たり。しかし、ヘイズの心にはかつての華やかな生活が・・・
その芝居の評判がやがて中央にも届き、ヘイズは華やかな舞台地球へ。モイラは自分の気持ちを押し殺して、ヘイズを送り出し、辺境の地からバー・ラグと共に彼の舞台を見守ります。
初演の日、ヘイズと相手役の女性が抱き合うシーン。しばらくして、そこになんとバー・ラグが実体化します。しかし、地球までは六千万キロの距離。しかも真空の宇宙空間を通ってきた彼は変わり果てた姿に・・・
ヘイズは華やかな舞台を捨てて、すぐさまモイラのもとに駆けつけます。三人で渡った宇宙の旅こそ、彼の求めていたものだったのです。
最後はもちろんハッピーエンドに収まります。
そして、”三人”は再び宇宙の旅へ。
このバー・ラグがかわいいのなんのって、プロペラみたいに尻尾をぶんぶん振り回して、愛嬌たっぷりのこの生き物は、一読の価値アリです。
ひと時の憩いを望むあなたに、ぜひ。
ロバート・フランクリン・ヤング 著
伊藤 典夫 編・訳
ハヤカワ文庫
・・・宇宙クジラ!
宇宙空間を漂う巨大なクジラ。
その体内には、そこを「新地球」と信じて疑わない人達が住んでいる。
ヤングの筆にかかると、奇想天外な設定も、ユーモア溢れるロマンチックな物語へと変わっていきます。
空飛ぶフライパンにサンタクロース、魔法の窓に教師を売る店。S.F.という枠組みの中で語られる、このロマンチックすぎるほどロマンチックな愛のかたちが、作者の追い求めるテーマなのです。
表題作の他、どれも大好きな作品ばかりなのですが、今回はその中の「リトル・ドッグ・ゴーン」を御案内します。
テレシアターの俳優ヘイズは、酒に溺れ、自暴自棄な生活を送る毎日。そのせいで仕事を失った彼は、勢いに任せて辺境惑星行きの船に飛び乗ります。行き着いた星の酒場で彼が出会ったのは、その酒場でショーをしている女性モイラと、テレポート能力をもつ犬(?)バー・ラグ。
モイラの献身的な看護のお陰でアルコール依存症から立ち直ったヘイズは、バー・ラグを主人公に、モイラと三人で芝居をすることを思い付きます。恋人同士が抱き合おうとする瞬間、二人の間に必ずバー・ラグが実体化するという喜劇が、娯楽の少ない辺境では大当たり。しかし、ヘイズの心にはかつての華やかな生活が・・・
その芝居の評判がやがて中央にも届き、ヘイズは華やかな舞台地球へ。モイラは自分の気持ちを押し殺して、ヘイズを送り出し、辺境の地からバー・ラグと共に彼の舞台を見守ります。
初演の日、ヘイズと相手役の女性が抱き合うシーン。しばらくして、そこになんとバー・ラグが実体化します。しかし、地球までは六千万キロの距離。しかも真空の宇宙空間を通ってきた彼は変わり果てた姿に・・・
ヘイズは華やかな舞台を捨てて、すぐさまモイラのもとに駆けつけます。三人で渡った宇宙の旅こそ、彼の求めていたものだったのです。
最後はもちろんハッピーエンドに収まります。
そして、”三人”は再び宇宙の旅へ。
このバー・ラグがかわいいのなんのって、プロペラみたいに尻尾をぶんぶん振り回して、愛嬌たっぷりのこの生き物は、一読の価値アリです。
ひと時の憩いを望むあなたに、ぜひ。
ロバート・フランクリン・ヤング 著
伊藤 典夫 編・訳
ハヤカワ文庫