私的図書館

本好き人の365日

『水深五尋』

2009-07-08 14:28:00 | 本と日常
ロバート・ウェストールの

*(キラキラ)*『水深五尋』*(キラキラ)*(岩波書店)

を読みました。

訳は金原瑞人、野沢佳織。
表紙と挿絵をスタジオジブリの宮崎駿監督が書いてみえます。

舞台は第2次世界大戦中のイギリス。

その海岸近くの町に住む少年が、ドイツのUボートに密かに情報を送っているスパイを探し出そうと、友達と一緒に奮闘するのですが…

スパイが本当にいるのかいないのかは置いといて、町中の人を次から次へと疑う少年が、その人たちと触れ合うことで、戦時中の人々の心、成長する少年の心を描いています。

少年の恋も描かれていて、積極的な女の子に対して、とまどっている少年、という対比が、その年頃の少年少女の違いをよく表していて、ちょっと笑えます☆

乱暴な言葉使いの漁師たち。
権力を傘に着た警察署長。
売春宿を経営するマダム。
質屋のユダヤ人。
戦争未亡人。

日本兵も卑劣で卑怯な敵として少年のイメージの中に現れます。

誰でも少年少女の頃は、多少は大人のことを汚いとか嘘つきだとか思ったことがあるでしょう。

確かにその通りで、作品の中の大人たちも、けっして英雄でもなければ聖人でもありません。

ウェストールの作品には、そんな大人たちが、迷いながら苦悩しながら生きる姿がそのまま描かれていて、大人だからといって誰も「正解」なんて持っていないのだということがよくわかります。

ただ、ちょっとだけ少年たちより経験を積んでいるから、ほんのちょっとだけ慣れているだけ。

それとも、これは私は大人だからそう読めてしまうのでしょうか。

そんな大人たちと少年の物語。

読んでよかったと思える物語でした。