「魔法瓶」は魔法の瓶ではありません。
保温性のある容器のことで、現在は電気ポットの形で、広く世間に知られています。
同じく
「マジック・ペン」は魔法のペンではありません。
どんなものにでも書くことができ、しかも消えにくい筆記用具の一種です。
ただし、一部の商品をのぞいては…
さて今回は、イギリスが誇るファンタジーの女王、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの心躍る短編の数々が収録された一冊。
その名も『魔法! 魔法! 魔法!』という本をご紹介したいと思います☆
猫が語る、魔法使いの男の子と、お姫様の恋のお話♪
親が再婚して、兄妹になったエルグとエミリー。
それぞれにおばあちゃんは二人づつ。
ある時4人のおばあちゃんが一度にやってきて!?
とっても嫌なアンガス・フリント。
お父さんの友達だっていうけれど、いつまでも家に居座り、ぜんぜん出ていこうとしない。
旅行に出かけたコーラ姉さんの部屋を占領し、残された妹と弟たちに横暴の限りをつくす!
でもさすがに大の大人にかみつくわけにはいかない。
では、いったい誰がアンガス・フリントを追い出すことに成功するのか☆
SF、ホラー、ファンタジーに冒険物、作者の自伝的なエッセイと、そしてもちろん、魔法がいっぱい!!
18編の物語を詰め込んだ、とってもお得な一冊になっています♪
特に、作者が小さい頃の思い出をもとに書いた『ジョーンズって娘』というお話では、作者の性格が垣間見れて面白いです。
自分の妹が二人もいるのに、さらに次から次へと同級生の女の子たちがやってきて、妹やら弟やらを預かることになるジョーンズ(彼女は引越してきたばかりで同級生の頼みを断れなかったのです☆)
そのうちとうとう庭じゅうが小さな子どもたちであふれてしまいます。
そこで彼女はしかたなく、子ども達を連れて象を見に行くことにするのですが、どろんこになったり、行く手に川があったりと、子ども達の服はすっかり汚れてしまい…
ジョーンズは、他の作品『わたしが幽霊だった時』のあとがきで、疎開先でピーター・ラビットの作者であるヴィクトリア・ポターの家の前で騒いで怒られたことを書いています。
ピータラビットの作者との意外なつながりがとっても興味深いところですが、もしかすると、この頃のことかも、と読んでいて思いました。
ミス・ポターが怒りたくなるほど、ジョーンズたちは静かな村にひと騒動巻き起こします♪
彼女の作品の魅力は、もちろんそのストーリー、物語の奇抜さ、ファンタジー色の強さもありますが、なんといっても子ども達がとっても悪い子(笑)というところ☆
天使みたいな子どもなんて一人も出てきません!
みんなうるさくって、走りまわっていて、物を壊したり、すぐに汚したり☆
等身大の子ども達の描写がとっても楽しい♪
さすがは、3人のお子さんを育てたお母さん作家です!
その中でも特にお気に入りなのが、『二インチの勇者たち』と言うお話の主人公アン・スミス☆
おたふく風邪にかかってしまったアンはベットの上でふくれています。(おたふく風邪のせいもあるけど、機嫌も悪いのです♪)
ポテトも食べられない、何かしゃべろうと口を開けると痛いし、笑っても痛い。
熱もあるし、とにかく死ぬほど退屈!
アンはベットの上で自分の脚にかかったシーツの形を見ているうちに、それがだんだん丘や谷に見え始めます。
自分の体が小ちゃかったら、シーツの丘や谷や密林の中を探検するのに、そう、だいたい、背の高さは二インチくらい…
その時、アンの頭の中にエンナ・ヒッティムズが生まれました。
「彼女は〈左爪先山〉のふもとの農場で生まれた勇敢な少女だ。
日に焼けていて、健康で、もちろんおたふく風邪になんてかかっていない。」
身長は二インチくらい。
冒険と探検に憧れ、魔法の剣を持って冒険の旅に出る!!
アンは自分の空想を夢中になって絵に描きます。
マジックペンで、思いっきり!
エンナが二人の男女の旅人を助け出し、いよいよ3人の冒険が始まるかと思った時、ちょうどマジックペンが切れてしまってガッカリするアン。
ところが、アンがちょっと目を離したすきに、エンナたちが勝手に動き始めたからさあ大変!!
しかも、その舞台は、現実のアンのベットの上!!!
アンを巨人と思い込み、そのノドを切ろうとシーツの丘を登ってくる!
慌てて逃げ出すアン。
勇者たちはいきなり地形が変わって大慌て。
でも勇者たるもの、何でもやっつけないではいられない。
グラタンの皿をひっくり返し、アンの大切なセーターを切り刻み、レコードには大きな引っかき傷!!
大活躍の勇者たちに飛びかかろうとした、飼い猫のティビーを助け出し、台所に立てこもったアンは、必死で考えます。
どうして頭の中の勇者が出てきてしまったのだろう?
とにかくこのままじゃ家がメチャクチャにされてしまう…
そして、ここからアンの逆襲が始まるのです☆
子供の頃、山の形を見ては、その中に恐竜が眠っているのではないかと空想していました。
でも、実際に目の前に現われたら、プチッって簡単に踏み潰されていたかも知れません★
ちょっと残酷なようで、ユーモアにあふれ、勇気もあるけど失敗もある、そんなとっても共感し、楽しめる物語。
やっぱりダイアナ・ウィン・ジョーンズはすごい!
長編やシリーズ物も好きだけれど、この短編集もオススメです☆
それにしても、よくこう次から次へと思いつくものだなぁ~
これからマジックペンは買う時はご注意を。
もしかしたら、本物の「魔法(マジック)のペン」が紛れ込んでいるかも知れませんから☆
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 著
野口 絵美 訳
徳間書店
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