土曜日、東京へ出かけたがバスの中で新聞を読みながら時々外の景色をポーっと眺めていた。
この1週間で亡くなった友人の姿が、声がいつも付きまとっている。
そんな心持でいるときに新聞記事が目に止まった。
読み終わって、その記事だけ持ち帰った。
子供たちに人気の作家が各地の学校を訪問する読書推進プロジェクトが作られた。
言葉の力を考えさせられる授業ということで姜尚中さんの授業の内容が載っている。
政治学者姜尚中さんの授業のテーマは人とのつながり。
親にも言えないことを相談できる友人がいるか?
他人との関係を考える前に自分自身とのかかわりを考える必要がある。
自己内対話と言い、人間には自分を見つめるもう一人の自分がいる。
内なる自分がそれでいいのかと語りかけてくる。対話することで自己を省みるという。
自己内対話がないと他人と繋がるのが難しい。
たとえば携帯メール。反射的に返信のメールを出してしまうのが常識と思っている。
けれど着信と返信の間に自己内対話をさしはさむ余地がないとやり取りは手軽な物になり心に届かないものになるという。
逆に他者とのかかわりがないと自己内対話が続かなくなる。
最近続いている他人を無差別に殺傷する事件は他人とのかかわりを持たない人間で自分の中での対話が出来ないため、自分をコントロールできなくなってしまうそうである。
姜さんは悩み多き思春期を過ごした。
その時に読書を通じて自己内対話を深めることが出来たそうである。
個人差があるだろうが、自己内対話が常にできる時間を持ちたいしそのような訓練を続けていきたいと思う。
重い神経症だった夏目漱石はぎりぎりのところで自殺をしなかった。
彼は沢山の友人や弟子に囲まれていた。
友情が彼を癒し人との絆を断ち切らないことが大切であることを説いている。
思い悩んだ時に孤独な自分を見出し、時には死にたくなる時もある。
そのような時は自分を追い詰めず周りと話せる人を見出し、
自分の奥に居るもう一人の自分と話しその時その時の考えを見つけ出したい。
友人を亡くし傍にいた人間として、又これからも周囲とはかかわりを持ち続けて生きていかなければならない人間として
今の心境に姜さんの言葉はとても納得できる言葉であった。
新宿へバスが到着する時に、そっとその記事が載っているページを切り取ってバッグの中にしまったものである。