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2016.5.1 『中天狗』(1,317m)

 私にとって、長いトンネルのような4月が終わった。

 

土曜日の夕方終業後、いつものようにHirnmiを拾って富良野へ向かった。

ただ富良野までは行かず、道道三笠~富良野線の富芦トンネルを抜けて間もなく現れる「尻岸馬内林道」入り口付近で車中泊。

 土曜休みがない月を終えたことにホッとして、うまい酒を飲んだ。

 

『中天狗』には「山」も「岳」もついていない。

こんな山は道内にどれだけあるのだろうか?

調べるつもりもないが。

ちなみに『中天狗』から北に続く稜線をたどると、『笠森』(865m)という、これまた「山」も「岳」つかないピークがある。

そんな山々もあれば、名峰、秀峰揃いの夕張山地は、誠に魅力ある山域だ。

 

7時15分、尻岸馬内林道ゲートをスタート。

積雪期にこの林道から『中天狗』を目指すのは、今回が3度目。

終点まで6kmの林道歩きを経て、稜線への斜面に取り付く。

長い林道は思いの外融雪が進んでいない上、二日前の降雪が予想以上に多い。

歩を進めるほどに新たな積雪が増えてゆき、稜線から先の積雪量が不安になる。

私はこの時期になると、もうツボ足で登る。

 

9時5分、林道終点。ここから西への斜面に取り付いて稜線を目指すのだが、これがなかなかの急斜面だ。

そしてみるみる高度を稼ぎ、『中天狗』~『笠森』間の稜線上、「951m」ピークへ。

10時10分、稜線上「951m」ピーク。

ここから望む『中天狗』が、実に美しい。

今年も恒例の黄砂で、ずいぶん汚れた北海道の山々だが、この度の降雪で、すっかり雪化粧され、純白!

ここからは稜線上のアップダウンを繰り返して南に進む。

と、ここでHiromiのザックに装備されていたピッケルがないことに気付いた。

そう、「忘れ物、落とし物兄妹」の妹は、どこかにピッケルを落としてきたのである。

そんなことあり得るぅ~っ!?

二度も車外にストックを突き立てたまま帰ってしまう兄が兄なら、この日の重要な装備を簡単に落としてしまう妹だ。

「兄」って、みなさんご存知のこととは思いますが、「Toshi」のことですから。

ひとりで少し戻って探したものの見つからず、後を追ってきた。

その後どんどん雪が深くなる。

多いところでは膝上に達する。

サラサラな雪が膝上まででも辛いのに、湿って重い雪に一歩一歩足を取られるのは本当にきつい。

何度リタイアしようと思ったことか。

それが頂上直下の急登に入ると、傾斜もきつくなる。

新雪底部の古い雪面が氷化していてスリップの危険が生じたので、アイゼンを装着。

Hiromiはアイゼン装着後、そのままストックで登行する。

それにしても雪が深い。

ラッセルばかりでさっぱり進まない。

それでも一歩一歩、牛歩以下の歩みでも、歩を進めることを諦めなければ、いつかピークに立てる。

 

12時30分、頂上に立つ。

辛い登行だったが、そこにはその労苦をいっぺんに吹き飛ばす360度の絶景が広がっていた。

私はこのところのトレーニング不足、体重増で、もうヘロヘロ。

61歳の肉体は、ちょっと手を抜くと、すぐに体力、筋力が減退してしまうことを思い知らされた。

 

登りより下山に不安を抱くHiromiに配慮し、頂上には長居せず、下山を開始するも、やはり「苦手」なわけで、おっかなびっくり。

何のためにアイゼンを装着しているのかわからない状態だ。

しかし、登ったんだから、必ず下りられる。

滑落の危険が皆無となった稜線まで下って、ようやく遅い昼食とした。

 

昼食後は登ってきたトレースを忠実にたどって下山。

登路でHiromi落としたピッケルを回収しなければならない。

そのピッケルは、林道終点から少し上がったところで回収した。

それからまた6kmの林道を、ただただ淡々と歩いて、

15時55分、林道ゲート。

 新雪のおかげで、久しぶりにきつい山行だったが、美しい風景を堪能できた、癒しの山行でもあったなあ・・・

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