木涜古鎮にある榜眼府第は清代の思想家、馮桂芬(1809-1874)の個人邸宅です。
蘇州呉県出身の馮桂芬は、ここで晩年を過ごしました。
科挙の最終試験、殿試の合格者上位3名を上から順に、状元、榜眼、探花と称され、
馮桂芬は1840年の科挙試験に次席で合格したことから、
地元の人たちはこの邸宅を榜眼府第と呼んだそうです。
蘇州は科挙試験の首席合格者が多いことでも知られています。
ネットで調べてみると、試験が行われた1300年間の首席合格者596名のうち31名が蘇州人で、
清代の状元114人の中には、小さな田舎町だった蘇州出身者が26人もいるそうです。
頭脳明晰な馮桂芬にちなんでということなのでしょうか、
ここは、呉中区明徳教育館という教育施設にもなっています。
具体的にここで誰が何の勉強をする場所なのかは、
私の中国語レベルでは説明を読んでもよく分かりませんでした。
呉中区明徳教育館が開館したは2021年なので、結構最近のことです。
1990年代の榜眼府第は、かなり荒れ果てていたようです。
1998年から修復作業が始まり、2019年には江蘇省文物保護単位に指定されました。
邸宅の造りは近くにある古松園と同じで、清代に流行った前宅後園と呼ばれる様式になっています。
建物と建物の間にはこぢんまりした雰囲気の良い中庭があり、
レンガ彫りや木彫りの彫刻もあちこちに見ることができます。
でも、なんとなくなのですが、なぜだかあまりのんびりするような気分にならない感じがします。
人もそんなに多くないのにどうしてでしょう、学校にもなっているから?
池や築山のある最も大きな庭は敷地の最も奥側にあります。
さすがに奥の庭まで行くとか木陰に腰かけてくつろげそうです。
庭自体はそんなに手の込んだものではありませんが、
池には蓮がたくさんあったので、夏になると蓮の花が楽しめるのだと思います。
榜眼府第のある場所は、人通りの多い山塘街から少しだけ外れています。
案内板を見ないと見つけにくいかもしれません。
住宅や商店が並ぶ通りを過ぎて西安橋を渡ると静かな住宅街に入ります。
西安橋を渡る場合は、最後に細い路地を抜けた先にあります。
蘇州にある一般公開されている園林や旧居は、ほぼ全て行ったつもりになっていましたが、
ここのことを知ったのは最近のことですし、きっとまだまだ他にもあるのでしょう。
先日もバスの中のテレビで、最近どこかの旧居が一般公開されたようなニュースが流れていました。
世界遺産の園林も何度行っても飽きないですが、
榜眼府第のような小さな(といっても立派なお屋敷ですが)旧居や庭園も巡ってみたいと思っています。