新・本と映像の森 189 栁田邦男『「人生の答」の出し方』新潮文庫、2006年
339ページ、定価本体514円+、原書2004年新潮社
ノンフィクション作家・評論家。新潮文庫から出している何冊かの1冊。
人生に答を出したというより「人生に問題を出した人々の物語」と言った方がいいと思う。
たとえばALS(筋萎縮性側索硬化症)のため、49才で人工呼吸器をつけきりの状態となった西尾健也さん。
「それは他の誰でもない自分の物語の最終章をどう書くかということだ」(p21)
ハンセン病で23才で夭折(ようせつ)した作家北條民雄さん。
不発弾の爆発で両手・両目を失った藤野高明さん。
道祖神や石仏を撮り続けた長谷川聡子(としこ)さん。
佐渡でトキを守ろうとし続けた小林照幸(てるゆき)さん。
下町横丁の視座をもったルポライター児玉隆也さん。
フランクル『夜と霧』からの言葉を引いておく。
「人生から何をわれわれはまだ期待できるかが問題なのではなくて、むしろ人生が何をわれわれから期待してるかが問題なのである。」(p33)
著者は言う。「私の中に二つの異質な時間が流れていた」。それは「私」と主観的に結びついた「1人称の時間」と客観的な「3人称の時間」だ。
もう1つ、「2人称の時間」「あなたの生きた時間」がある。
この「1人称の時間」「2人称の時間」「3人称の時間」の「生と死」が絡み合って人生は進行し、あるいは中断する。
< 目次 >
人生への答
人が生きる時間
子どもを壊してきた半世紀
社会病理を見透す眼
癒し人は言葉が美しい
自分の作り方
以下は再録。
「2010年03月30日 05時06分23秒 | 本と映像の森
本と映像の森23 柳田邦男さん著『「人生の答」の出し方』新潮文庫、新潮社、平成18年11月1日発行、514円+消費税
「人生の答」とは何でしょうか。
そもそも答えとは、「人生の問い」がなければ成立しません。
○×式の「回答」ではないと思います。
最近はやりの、「○○検定」では抜け落ちてしまうもの、だと思います。
もっとアナログな、論理ですらないもの、それが「人生の問い」であり「人生の回答」であると思います。
人生ですから、当然「生と死」です。
正確に言うと「人生 始まりは誕生で 終わりは死」ですが。
たくさんの一人ひとりが「生と死」について、どう問うて、どう答えを探ったかを、ノンフィクション作家の柳田邦男さんが取材し考えた記録です。
たとえば、49才で神経難病のALSを発症した西尾健也さん。
あるいは、「生きがい療法」を実践し患者と富士登山やモンブランに登った医師・伊丹仁郎さん。
ユダヤ人強制収容所を生き延びたフランクルさんの言葉「人生から何を我々は期待できるかが問題なのではなくて、むしろ、人生が我々に何を期待しているかが問題なのである」(『夜と霧』)
たとえば写真家の星野道夫さん。
そして、医師の日野原重明さん。
柳田さんは「魂をゆさぶる言葉」のすばらしさを語っています。
私も言葉に命の響きを取り戻したいと思います。
そういう魂と、言葉を探して、もっと遠くへ行きたいなと思います。
生と死にかかわる医療関係者、介護関係者、お医者さんや、看護師さん、介護職員さん、あるいは医療組織関係者のみなさん、みんな必読の本だと思います。」