本と映像の森 252 小川一水著『ここほれONEーONE!』集英社スーパーダッシュ文庫、2001年10月30日第1刷発行、文庫版、221ページ、定価本体514円+消費税、浜松市立中央図書館蔵書
現代日本のSF小説です。小川一水さんは1975年生まれですから、今年で38才、まだ若いですね。以前に小川一水さんの『時砂の王』を紹介したつもりだったのすが、今検索したらひっかかってこないので、してないんですね。また後でします。
この「ここほれ、わんーわん!」は少し軽いタッチの、でも内容は重いSFです。雨宮智彦くん、お勧めです!
日本海に面する白穂県(しらほけん)の県庁所在地の井立市(いだてし)で物語は始まります。
物語の中で要平くんのお祖父さんの要蔵さんが暗唱していた伝承に「出羽白穂の国」(p91)という文章があるので、リアル地図でいうと山形県という感じでしょうか。
井立市の中心街の雑居ビルの1階にある小さな会社「山水ジオテクノ」社のドアを2人の高校生が叩くところから物語は始まります。
まん丸いTシャツにジーパンは渡拓丸(わたりたくまる)という機械オタクで、背の高い作務衣(さむえ)にわらじ履きは竹葉要平という地質オタク。
山水ジオテクノ社の「社長」と自己紹介する若い、どうみても10代の少女「山水備絵(さんすいそなえ)」と出合うことから、物語が火花をスパークさせます。
つまり、この3人とも10代ということで、どう見ても「青春小説」です。そして「恋愛小説」です。
要平が家に昔から伝わる謎の地点を描いた地図と、山水備絵たち「山水ジオテクノ」のメンバーが追い求める、謎の「鉄床石(かなとこいし)」とが一致してしまい、若い男子高校生2人と「山水ジオテクノ」の共同探索が始まります。
まだ謎解きには早いので、それは2巻に譲って,今は名言集です。
「大地は過去を隠します。しかし、消し去ることはないんですよ」(靜堀老人、p123)
「あなた(要平のこと)は本当に,地上に縛られていないんだ。普通の人間は、目に見える地上に世界のすべてがあると思っているのに。だったらこの意味もわかるよね」備絵は腰をかがめてささやいた。「土の塊は地球だけじゃない」(p134)
備絵と要平のいのちの危機を脱した後のふたりの会話。
「おれがいてもいなくても、たいして変わりないだろう?」(要平)。「そんなこと言うの?拒まなかったくせに」(備絵)。「なにを」と言いかけて、要平はピタリと口を閉じる。やや赤くなっている。
2巻に続きます。