AN現代針灸治療

ANとは「にただあつし(似田敦)」のイニシャルです。現代医学的知見に基づいた私流の針灸治療の方法を解説しています。

Th12/ L1とTh7/Th8  脊髄神経後枝の症状に対する背部一行刺針 ver.1.1

2024-12-02 | 腰背痛

1.メニュエ Maigné  症候群(=胸腰椎接合部症候群)  ※旧称はメイン症候群

1)病態

Maigné とは発見したフランス人研究者の名前で、これまでメインと表記されていたが、岡本雅典氏によるとフランスでの発音ではメニュエと発音するということを、現地のフランス人から指摘されたという。以後はメインではなくメニュエと称することにしたい。

メニュエ 症候群は胸腰椎移行部(Th12/L1棘突起間)の椎間関節症による後枝興奮症状のことをいう。 Maigné が提唱した。構造的に胸椎間は回旋の可動性があるが、腰椎間は屈曲伸展の可動性はあっても回旋可動性はない。上体を大きく回旋した場合、胸椎の各椎体は少しずつずれ、胸椎全体では大きく胸椎をひねることを可能にしている。しかしTh12椎体の回旋力は第1腰椎は回旋しないことで受け流すことができず、Th12/L1棘突起間には強い力学的ストレスが加わる。するとこのあたりの椎間関節近傍を走行する脊髄神経後枝が刺激され、脊髄神経後枝の神経支配である筋が緊張し、皮膚に痛みを感ずる。

この皮膚痛の領域は、①上殿部が中心だが、②側殿部、③鼠径部に痛みを起こす場合の3通りがありそれぞれ撮痛帯の出現する。中心となるのは①でTh11~L4脊髄神経後枝外側枝で、上殿皮神経の別称をもつ。
これら3方向の痛みは、どれもTh12/L1棘突傍の刺針で改善する場合が多い。
 
Maigné 症候群は国内ではマイナーだが、欧米で詳しく調べられている。PCで「Maigné syndrome」を検索していただきたい。撮痛との関係もしっかり記載されている。

 

2)川井貞文氏の症例報告

以前、代田文彦監修「鍼灸臨床生情報」医道の日本社1999.1.1発行 を読み返していたら、川井貞文氏(日産玉川病院東洋医学科)の症例報告が目にとまり、おもわず喝采を叫びたくなった。
上殿部痛に対し、Th12棘突起傍の灸頭針で改善した例を報告した。患者は胃が悪くなると、左上殿部痛が出るのだが、上殿部を治療するよりも、Th12棘突起傍の刺針が効果あると報告した。
これは典型的なメニュエ症候群だといえる。本患者の上殿部痛はTh12/L1後枝によるものだが、同時に小野寺殿部圧痛点でもある。

 小野寺殿部圧痛点と上部消化器疾患の関連機序は、小野寺直助が記載している。なお代田文誌は「鍼灸臨床ノート」の中で、「小野寺殿部圧痛点と脾兪圧痛は相関性がある」とする旨を記している。小野寺殿点と脾兪は、同じ高さの脊髄神経後枝なのでそういうことになるのだろう。上図の青枠内は、中側嘉志馬著、守一雄改訂「触診と圧診」金原出版、昭和53年7月20日発行(絶版)の中で発見した。ただし青枠外を筆者が推定して付け足した。

 

 

2.帯脈穴の圧痛の解釈

帯脈穴は臍の高さで側腹部中央にある。本穴は、その名称から帯下との関連を連想させるためか婦人科疾患時に使用されているようである。

前段で、Th12/L1脊髄神経後枝が上殿部痛をもたらすことを説明したが、背部の脊髄神経後枝は、どの高さでも神経根から斜外下方に規則的に走行し、皮膚を知覚支配している。
帯脈穴部の皮膚知覚も脊髄神経後枝支配になる。帯脈から斜上内方に撮痛帯をたどっていくと、Th7前後の棘突起に交差するであろう。Th7前後の後枝反応が帯脈に圧痛や撮痛をもたらしていることが想定される。このような見解から、筆者は数ヶ月前から帯脈と中部胸椎一行圧痛反応の相関性を調べたが、確かに関連があるとの印象をもった。
最近では仰臥位で左右帯脈の圧痛を調べることで胸椎椎間関節症の有無を予想するようになった。そして帯脈の圧痛は、Th7近辺の圧痛ある背部一行に刺針することで帯脈圧痛の変化を調べてる。帯脈の圧痛が直後に消えることはないが、一週間後宇の再診時に調べると、圧痛軽減していることが多いようだ。

 


針灸院でのマイナ保険証導入問題

2024-12-02 | 雑件

和6年12月1日夜、ネットでNHKニュースを開いたら、次のような見出しが目に飛び込んできた<しんきゅう院など施術所 マイナ保険証導入に戸惑いの声も 長野 2024年12月1日 20時54分>   以下は記事の要約。


12月2日から健康保険証の新規発行が停止され、針灸院でも、マイナ保険証を利用することが増えるが導入には困難も多く、戸惑いの声も聞かれる。

針灸院でも、保険で施術を行うところは、原則マイナ保険証などを利用した仕組みの導入が義務づけられるが、その導入は2割未満と進んでいない。
全国3万5000余りのあん摩マッサージ指圧師・針灸師の施設における導入は、令和6年10月17日時点で、16.6%にとどまっている。なお柔道整復師は全国4万7000余りの施設で54%。


当院でも昨日11月30日をもって、30年続けた保険施術を中止した。業務形態が零細で、71歳と古希を越えた現在、新たにPCを買い替え、マイナンバーカード読み取り装置を導入してネットにつなげるといった一連の取り組みは、億劫である。機械ものなので調子が悪くなることもあるだろう。これが病医院ならば電話一本でサービスマンが修理に駆けつけることだろうが、当院では「本日は保険施術中止」となってしまう。

 

厚生省は「施術者が全員70歳以上か、視覚に障害がある場合は、義務化の対象外とする」との通達を10月になって出したというが、通達が遅すぎる。患者への周知をはかるため当院ではすでに半年前から院内に案内板を表示している。マイナンバーカード義務化の対象外としても、患者が保険証を持参せずマイナンバーカードを持参した患者に保険施術を行うことはできないである。

 

話は変わるが、私も一人の患者として、以前から所持しているマイナンバーカードを保険証に紐づけしてもらうため、かかりつけの医院を訪問した。しかしカードリーダーにセットしても<期限れ>と表示された。私のカードは来年の11月に有効期限なので、期限切れにはなっていない。困っていると受付の方に「市役所に相談してみてください」といわれ、その日のうちに市役所のマイナンバーの窓口に行った。「5年ほど前に、市役所から書類が届かなかったか?」と質問され、そういえば昔、そうした封書が届いたが、いくつもの暗証番号を記入する欄があり、内容も理解でなかったので放置していた。それでもこれまで何の不自由もなかった。
「以前の暗証番号がわかりますか?」と問われるも9年のことでしかも暗証番号は5~6個あって記憶になかった。すると新たな暗証番号を登録しますといわれ、同一の暗証番号をPC画面に打ち込んだ。これでマイナンバーカードが現役状態となったという。有効期限はあと1年あり、その時は新たな顔写真を持参して、再度市役所で手続きが必要だともいわれた。
次回、病院に行った際、このマイナンバーカードを持参して、備え付けのカードリーダーにセットし、暗証番号を入力すれば保険証との紐つけが完了するらしい。