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ヘーゲル『哲学入門』 中級  第二段  自己意識  第三十七節  [自由に移行するための自己放棄]

2024年05月23日 | ヘーゲル『哲学入門』

ヘーゲル『哲学入門』 中級  第二段  自己意識  第三十七節  [自由に移行するための自己放棄]

§37

Diese Entäußerung der Einzelheit als Selbst ist das Moment(※1), wodurch das Selbstbewusstsein den Übergang dazu macht, all­gemeiner Wille (※2)zu sein, den Übergang zur positiven(※3) Freiheit.(※4)

第三十七節[自由に移行するための自己放棄]

自己としての個性を放棄することは、自己意識が普遍的な意志へと移行を成しとげるための、つまり積極的な自由へと移行するための契機である。

 

※1 
要因、契機(das Moment)
主人と従僕との関係において、従僕が主人に対する恐れから、自ら服従し自己の個性を放棄することで、従僕は服従と労働の中で自らの技能を磨いて自立性を高めていく。
「自己の個性の放棄」は従僕が自立していくための契機(要因)「das Moment」である。

※2
普遍的な意志(all­gemeiner Wille )
従僕は、服従と労働の中で自己中心の恣意や、個人的な欲望や意志をおさえて、普遍的な意志に移行する。普遍的な意志とは市民社会や国家などにおける共同体における意志である。

※3
積極的な自由(positiven Freiheit.)
ヘーゲルは自由を消極的(Negativ)と積極的(Positiv )の二側面で捉える。libertyとfreedom とのちがいと同じ。前者は、単なる束縛からの自由に過ぎないが、後者は、自己の意志をもって積極的に社会や国家にかかわっていくことの自由ともいえる。

※4
ヘーゲルの処女作『精神の現象学』の中で展開されている、ストア主義(Stoicism)から懐疑主義(Skepticism)、不幸な意識(Das unglückliche Bewußtsein)へ進みゆく道程の記述が、この『哲学入門』の第三十七節の「精神現象論」の説明ではその道程が完全に抜け落ちている。この過程で自己意識は行き詰まりと絶望をくり返しながら、理性的な意識へと克服の道を歩んでいく。

 

 


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