§48
第二の対象(§35参照)の無制約者(絶対者)を、世界を認識しようとする理性の試みに際して、理性はアンチノミーに陥る。
アンチノミーとは同じ対象についての二つの対立する命題の主張であり、しかも、その両者が等しく必然性を持って主張されなければならないことになる。
ここから、このような矛盾に陥る様々な規定を持った世界の内容というものは、それそのもの自体としてあるのではなくて(nicht an sich)、むしろ、単なる仮象(nur Erscheinung)にすぎないということになる。 b
その(カントの矛盾の)解消(の仕方)は、矛盾が生じるのは対象そのものから本来的に(an und für sich)くるものではなくて、むしろ認識する理性そのものから生じる、とすることによってである。c
矛盾の原因となるものが内容自身であること、すなわち自覚された(für sich)カテゴリーである、ということがここでは言われている。悟性的な規定(カテゴリー)を通じて理性的なものに作り出される矛盾が、本質的であり必然的なものであ るというこの思想は、近代哲学のもっとも重要で深い進歩の一つである。
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