玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*松明堂とたいまつ草

2011年07月18日 | 捨て猫の独り言

 駅前の書店が今年の5月31日に閉店した。その最後の日に私が散歩の途中に立ち寄り閉店のことを知ったのは全くの偶然だった。本揃えや陳列方法がとても刺激的で好感のもてる本屋さんだった。かつて職場に出入りする書店では1割引きで買えたから、この店で本を購入することはあまりなかった。地元の書店の売り上げに貢献できなかったことは今にして思えば残念なことである。閉店の理由や今後のことなどを知りたかったがこれまで誰にも聞かずにいた。ところが月2回発行される地域情報誌の最近の7月中旬号に閉店の記事が出た。そこでおおよそのことを知ることができた。

 見出しは「鷹の台駅前唯一の本屋さん 松明堂書店が閉店」である。開店20年後老朽化した店舗を地上2階地下1階に改築するのを機に、地下にコンクリート打ち放しの多目的ホールを設けた。本屋のオヤジが文化を始めた!と異色の広告でアピール。87年開設記念展には実父を引っ張り出して「松本清張が菊池寛を語る」講演会を開催した。これまで491回の多種多様な企画展を開催してきた。隣りの関根文具店は「活字離れなどもあり苦慮した末の決断だったのでは」と言う。店舗は維持してテナントを募集している。45年の歴史を閉じたわけである。歩いていける距離に書店が無くなった。退職した身にはいささか不便なことである。

 梅雨明けの庭に、たいまつ草が今を盛りと白く咲き誇っている。その隣りには、おいらん草だ。初めて見る花に嬉しくなり、これを株分けしてくれた人に電話した。「一年後に我が家の庭で無事に花開きました」と。その人は昨夏の八ヶ岳山荘でそれぞれの一葉をちぎりその葉にその草の名を書き添えて持ち帰らせてくれた。そのこまやかな気配りのおかげで、私はそれを見てただちに草花の名を呼ぶことができた。思い立って感謝の電話をするとあいにく先方は留守だった。「とくに用はありません。たいまつ草とおいらん草が咲きました。このことをお知らせしたくて電話しました」と留守電に入れた。2時間ぐらいして返事の電話が入った。「ハーブ系ですから香りやらなにやら長期間楽しめますよ。私どもは、まだしばらくは東京です。八が岳ではまだ咲いていないと思います」    この夏の松明堂とたいまつ草は全くの偶然にすぎない。しかし奇妙に私の記憶に残りそうである。

コメント (2)
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