玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

5枚の年賀状が届いた話

2012年10月07日 | ねったぼのつぶやき

 その日もいつものように利用者様達と高くなった天を仰ぎながら公園を散策していた。ペアを組んだ利用者様に合わせて、ユックリと草花を愛でたり世間話をしながら歩く。・・と、アラと呼びとめられたのは元・薬剤師さんだった。公園は駅の真裏にあり格好の通路として利用者も多い。彼女とは同じ駅を利用するのだが、住まいが駅を挟んで反対方向のため滅多に会わず久しぶりだった。

003 彼女はクリスチャンで人望も厚く誰にも等しく優しい人だ。夫君の学問のため2度にわたり滞独されたのだが、毎度同じ職場に復職なさった。いいわねと羨む私に「子供がいないから学校の方から派遣の対象にされるのよ」と謙遜して言った。数年後、その大学教授になった夫君を脳発作で一夜の内に失ったのだが、義兄の計らいで千葉のホームに入所なさった義母に心を砕き通っているらしい。心優しい彼女を慕う人は多く、「昨年だけでも親戚・縁者を含めて5人送ったわ。元気な者の役目よ」と肩をすくめて言った。

 彼女の人となりを知っている共通の知人夫妻の話になった。仕事を止めてボケ気味になるという良く聞く話である。困惑した奥様から電話が入ったそうだ。「近日中にお会いすることになっているそうですがどこででしょうか?」と。電話で話す機会があって「お会いしたいですねという挨拶が、会うことになった」に変質していたらしい。「年末になると、2~300枚の年賀状書きが大変だと嘆いてましたよね」と言った私に、「そう、今年私5枚も戴いたの!」と彼女は言い、その一言で私はことの事情を全て理解したのだった。

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