那覇空港に着陸する旅客機は、海面すれすれに飛行した後に空港に侵入する。最初にそれを経験したときは、まじかに見える海面を見ながら、低空をゆったりと飛行する機体が揚力を失ってそのまま不時着してしまうのではないかと恐れたものだ。しばらくして沖縄の空が米軍の管理下に置かれているためだと気付いた。
沖縄本島の米軍嘉手納基地では戦闘機がタッチアンドゴーを繰り返し住民は騒音に悩まされ続ける。日本の民間機はその許された狭い領域を遠慮がちに飛ばねばならない。沖縄とは比ぶべくもないが、横田基地のある首都上空も米軍に握られている。これを「国辱的異常事態」と呼んだ元外務事務次官がいた。
首都のこのような事態を改善しようとした東京都知事もいたが実現していない。理念的にはともかく、具体的な問題解決の道筋はいまだに見通せないままだ。横田基地に近いわが町でも米軍の貨物機が低い高度で飛行するのをよく見かける。横田空域とは23区の中野区より西側の神奈川、静岡、新潟にまたがる広大なものだ。
成田空港と羽田空港は国際と国内に住み分けるはずだったが、いつのまにか羽田にも海外から多く飛来するようになった。そこで羽田新ルートが開発されて3月29日から運用が始まるという。これに対し航空評論家で元日本航空機長の杉江弘氏は、横田空域の存在でジェットコースター並みの急降下着陸を強いられて、大事故が懸念されると国交省に警告を発している。