樋口一葉の「たけくらべ」、伊藤佐千夫の「野菊の墓」、川端康成「伊豆の踊子」の文庫本を借りてきた。これらは純愛物語として名高いのだが、これまで読んだことがなかった。この順に読むことにして、最初の「たけくらべ」で躓いた。
同じ明治時代の擬古文でも夏目漱石の作品より読みずらい。やさし気な、ひらがなの題名にも惑わされたようだ。文がいつ終わるとなく読点「、」だけで続き、最後の最後に句点「。」一つで終わるというような章が続く。般若心経を読むような感じである。
ところどころに*印のついた語句があり、そのつど後ろにある「注解」をめくる。辛抱して読むうちに少しずつ文体に慣れていった。それでも一字一句を読みつくす根気はなかった。だからであろう何人かによって「たけくらべの現代語訳」が出ている。
収穫は樋口一葉の人生を知ったことだった。貧困にあえいだ一葉は晩年の一年に「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」を発表し結核のため24歳で亡くなっている。これは「奇跡の一年間」と呼ばれているそうだ。