興味深い新聞連載がある。朝日の土曜の別刷りにある「フロントランナー」だ。2月24日の回は神戸学院大学教授の上脇博之(ひろし65歳)だった。政治とカネの問題を追及する第一人者だ。これまで100件以上は告発してきたと話す。
大学キャンパスで撮影された大写しのポートレートが印象的だ。長い廊下を背景にちょこんと椅子に座っている。まるで中学生の卒業写真のように、両手をきちんと膝に乗せ、トレードマークのバンダナの下にある眼鏡の奥の眼は三日月のように細い。かすかな微笑にはどこか少年の日の面影を宿している。
鹿児島県姶良郡隼人町の生まれ。電力会社の父は転勤族で引っ越しを重ねる。中学校から途中転校を避け、母方の祖母と2人暮らしをする。加治木高校を卒業し、3浪して入った関西大学では、勉強そっちのけで酒を飲みマージャンを打った。ここまでは私と重なることの多い生い立ちだが、そのあと私と異なり彼の持続する志は大きな実りを生み出す。
バンダナを愛用する人には、芸術家や蕎麦打ち名人や数学者の秋山仁など、個性的な人物が多い。上脇氏のバンダナは大学浪人の頃からで、法廷でも外さなかった。大河ドラマ「西郷どん」に「なこかいとぼかい なこよかひっとべ」とある。困難にあった時はあれこれ考えず、とにかく行動しろという意味だ。上脇氏は40代でひっ飛んだ。