俗語で kick the bucket は死ぬという意味らしい。死ぬことは森羅万象に溶け込むという静謐な印象をもつ私にとって、バケツを蹴飛ばすとはなんとも騒々しく思える。The Bucket List というアメリカ映画を見た。邦題は 「最高の人生の見つけ方」 という。大富豪をジヤック・ニコルソン、自動車修理工をモーガン・フリーマンが演じている。ともに1937年生まれで、監督は1947年生まれのロブ・ライナーである。
棺桶リストとは棺桶に入る前に体験したいものを書き出したリストのことである。余命6ヶ月の二人はそれを実現するために冒険に飛び出す。タージマハール、ピラミッド、ヒマラヤなどを訪れ、スカイダイビングやレーシングカーに挑戦する。資金力にまかせてそれらをつぎつぎにクリヤーしていく。それはそれで痛快であるのだが、それとは別に心から求めていたものがそれぞれ身近に存在していたのだった。
つい先日私の身近でもそれと似たことが起きていた。曾孫のアメリカ行きを見届けるため、はるばる鹿児島から東京まで出向いて来た私の父と母の場合がそうだ。この時を逃してはできないことを実現して満足しただろう。映画を見てから私はつぎのように思えるようになった。体が動くうちは大いに無理をして周囲をハラハラさせてもいいのだ。
前から一度は出かけようと考えていた。この機会に初めて競馬場に出かけた。私も棺桶リストの作成を始めたようだ。府中にある東京競馬場は意外に近い。梅雨の晴れ間の土曜日に一日中競馬場にいた。退屈させてくれなかった。改装されて清潔感に溢れていた。競馬場にピクニックに出かける家族連れも多い。緑が多く授乳室からレストランまである。場内をあちこち見て回った。そして改めて己の勝負弱さを思い知った。レースの方は12戦全敗である。ただし大富豪ではないので損失額は軽微であった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます