風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

山百合が虫食う捕食者真似ている 【季語:山百合】

2019年07月06日 | 俳句:夏 植物
山百合が大きな花を開いていました

その周りは鬱蒼とした林
山百合の咲く辺りだけ
スポットライトのような
強い陽射しが降りていました

よく見ると山百合が顔を向ける
枯れ枝の先には羽を休めるとんぼ

花が重すぎて
前傾姿勢の山百合は
そのとんぼに
食いかかろうとしているかのようでした

夢爆ぜた未練いつまで百日紅 【季語:百日紅】

2018年08月25日 | 俳句:夏 植物

歩いていたら薄い紅の
百日紅が咲いていました

夏の終わりの頃
ふと顔を撫ぜる風に
秋の気配を感じました

けれどその心地よい風も
ものうく感じられました

胸のなかで潰れた
一つの小さな夢
それが現実であることを
また胸に覚えて

何かが弾けたような
百日紅の花に
夢の残骸を見るようでした


どくだみの花ほっといる無人駅 【季語:どくだみ】

2018年07月07日 | 俳句:夏 植物
とある晴れた週末
電車に乗って遠くにでかけました

目的の駅で降りるとそこは
駅員さんもいない無人駅

通り過ぎる電車の数も少なく
僕を置いて電車が走り去ると
後は随分と静かになり
風の音が耳元によく聞こえてくるようでした

改札に向かって歩いて行くと
一本の柱の根元に
コンクリートの間から顔を出した
どくだみが白い花をつけていました

誰もいたずらする人もいないのでしょう
暢気な様子で風に吹かれています

綺麗な姿で咲くどくだみを眺めていたら
ほっとする気分を覚えて
足取りも軽くなったように感じていました

紫陽花も色を失う悪阻かな 【季語:紫陽花】

2018年06月09日 | 俳句:夏 植物
梅雨の雨を受けて
色を変える紫陽花
いつもの道の同じ場所に
今年も花をつけました

歩きながら綺麗だねと声をかける
身重の妻はまだ悪阻が治まらず
顔色もどこか冴えません

大丈夫といわれても
その様子がやはり気になってしまい
紫陽花の花も横目で眺めるばかり

妻の目には紫陽花も
色を失って見えるのだろうなと
可愛そうに思っていました

怒り来て若葉に会いて息をつき 【季語:若葉】

2018年05月12日 | 俳句:夏 植物
少しイライラとする出来事があり
頭に血が上ったまま道を歩いていました

さっきまでの出来事を何度も思い返しては
腹を立てたりしていたのですが

いつの間にか萌黄の葉をつけた
街路樹に気がつき見上げていたら
春風に吹かれる若葉の楽しさに
自分の怒りがつまらないものに思えてきて

自然と大きな息が一つでてきました
そうして鎮まった胸で
家までの道をまた歩き出しました

少年の憧れいずこ夏木立 【季語:夏木立】

2017年08月05日 | 俳句:夏 植物
陽射しの強い日でした
大きな木立が黒い影を作っていたので
その木陰に涼もうと逃げ込みました

汗を拭いながら
ホッと一息をついて眺めると
頭上には青いだけの空が広がっています

少年の頃の夏の日
こんな風に木陰から
青い空を眺めては
自分でも止めることのできない
胸の高鳴りを感じていました

その胸の高鳴りも
今では感じることもなく
少年の日の憧れだけが
青い空の向こうで燻っているようです

通り雨つつじに宿る雀かな 【季語:つつじ】

2017年05月20日 | 俳句:夏 植物
その日は朝から曇り空だったのですが
昼を過ぎるころから雨が降って来ました

傘を忘れて家を出た僕は
せめて雨の勢いが少し弱まるまで待とうと
お店の軒先に逃げ込んだのですが

目の前のコンモリと茂ったツツジには
何匹かの雀が逃げ込み
チュンチュンと賑やかです

人の雨宿りは退屈なものですが
雀の雨宿りは随分楽しそうだなと
うらやましく思っていました

苦しみの彼岸知らぬか曼珠沙華 【季語:曼珠沙華】

2016年09月17日 | 俳句:夏 植物
野原にひときわ目立つ赤い色がありました
何だろうと思い眺めると赤い曼珠沙華

その複雑な花の形が
祈りの手のように見えるのは自分だけでしょうか

その祈りの手が向けられた先に
自分の苦しみの終わる彼岸がないものかと
その赤い花に尋ねてみたい
気持ちでいました

ひまわりに何を学ぶかおさげの子 【季語:ひまわり】

2016年08月06日 | 俳句:夏 植物
僕の背丈よりも高く伸びたひまわりが
夏の強い陽射しを受けて
大輪の顔を一層明るませていました

その下にはおさげの小さな女の子が
ひまわりをまぶしそうに見上げていました
背伸びをしても届かない
ひまわりの背丈に驚いているようです

その姿は知識が豊富な老先生の言葉に
一生懸命に耳を傾けているようにも見えて

どこか微笑ましいこの一時が
ずっと続けばいいのになと思っていました

新築の庭に艶あり七変化 【季語:七変化】

2016年06月12日 | 俳句:夏 植物
ある日気がつくと
建築中だった家が完成していました
すでに人も住み始めているようです

綺麗な家だなと思いよく眺めてみると
塗りたての白い壁は真新しく
窓に飾られたカーテンもどこか初々しくみえます
すべてがまだ淡い夢の中にあるようです

そんな中で庭に植えられた紫陽花だけが
鮮やかな色合いで存在感を示していました

まるでまだ知られていない新しい家を
通る人に教える標のようでした