子供が青い空の下で青い風船を手に歩いていました
風船も春の暖かな風に揺られて楽しそうです
そんな風船の様子が気に入ったからでしょうか
あるいは青空が自分のアクセサリーにしようと
風に命じたからでしょうか
子供が手の力を緩めた一瞬の隙をみて
少し強い風が風船をからめとって空に解き放ちました
僕の重たい心も一緒にと
風に頼んだのですが
僕の心は置き去りにされました
色彩の乏しい冬の大地を
覆うように伸びる若草は
目に鮮やかで心も浮き立ちます
踏んだらフワフワと感じられるような
若く柔らかい色合い
勢いにまかせたままに大きく伸びて
楽しさが抑えられない様子です
花壇にはチューリップやパンジーが咲き
嬉しそうに春の陽射しを受けとっていました
どこもかしこも
萌えいずるものたちで賑やかな春先です
(Haiku)
Newly sprouted grass,
Walked over, yet it rises,
Over and over.
春の公園に遊び
歩きつかれて芝の上に休むと
青く茂った芝は柔らな布団のように僕の体を沈めて
目をつむる僕は春風の中に抱かれるように
ひとときを眠っていました
それは眠ったことさえ
わからないような軽い眠りでした
(Haiku)
Spring wind enfolds me,
On verdant lawn, dreams whisper,
Together we rest.
長閑な春の日
ベンチに座り本を読んでいたら
眠気に誘われました
何度もあくびをして
見上げた空は涙に潤み
ぼんやりかすんだで
一層、柔らかい色合いに見えました
本を置いて
見飽きない穏やかな色合いの空を
涙もぬぐわずに眺めていました
(Haiku)
Yawning, tears well up,
Moistening the springtime sky,
Hues of gentle blue.
毎日、電車から眺める川があります
冬の間はどこか重たく流れていたのですが
春がきざすとともに
流れが勢いを増したように感じられます
春を待ちわびていた川が
鼓動を高鳴らせて
それに合わせて流れも速くなったよう
川の高鳴りにあわせて
水面には暖かな風が誘われ集います
立春を迎えた陽射しは
冬の束縛から少し解き放たれたよう
肌の上に明るく穏やかに感じられました
その温かさを体も感じて
重たい衣服から早く開放されたいと
少し汗ばんでいました
(Haiku)
Gentle zephyr’s touch,
Wrapped in warm sunlight’s embrace,
Spring’s joy awakens.
庭先の小さな池の氷も
すっかりと薄くなり
その氷をまばゆい陽射しが
叩いて遊んでいました
打たれるたびに
眩しさを散らす薄氷
その力に耐えきれなくなったのか
僕が軽く触れただけで
割れてしまいました