風のささやき 俳句のblog

訪問ありがとうございます
オリジナルの俳句を中心にご紹介しています
詩や短歌も掲載しています

寒風が海打ち鳴らす凄まじく 【季語:寒風】

2021年01月30日 | 俳句:冬 天文
以前、日本海がすぐ近くにまで来ている
ホテルに泊まりました

その日は風が随分と強く
一日中風が海の水面を叩いていたのですが

その音が激しく
ドーンドーンという物で
固いものが海めがけて
投げ込まれているようでした

そうした音を聞きなれていない僕は
海面が鳴るたびに
気になりそちらを見てしまうぐらいでした

夜もその音は続き
夜中に何度か目を覚ました僕は
激しい音のする暗い海を
窓辺から眺めていました

夜に 【詩】

2021年01月28日 | 

「夜に」

僕はもう 倒れてもいいですか と
時々 神様に向って聞いてみる
人の寝静まった 夜更け

もう僕の 脆さ
素直な 呟き
隠さなくてもいい 時間

精一杯の 強がりで
僕は僕の体 支えていますと
いつ いかなるときにか
糸の切れた マリオネットのように
力を 無くしてしまいますと

僕は 素直な弱さ
子供のような 泣き言を
そっと 夜の空にささやいて
そっと 耳を澄ましている

僕の心が こんなにも寂しくて
こんなにも 痛みやすい体質ならば
何故 僕はこうして ここに
生を与え 続けられているのですか

時折は まだ疑いたくなる
誰か見えない人の 悪戯 出来心
悪夢のある黒い雲が 月を隠してしまうと
一層に 疑いも増して

僕はまた 涙に濡れていてもいいですか
涙に 懐柔されたまま
折れそうな 頑なな心を 濡らして

その涙の轍 やがて乾く頃には
僕は 信じていてもいいですか
僕はきっと 頑張り続けなくてもいい
ここに あることだけで
受け入れられて いるのだと


荷造りを終えた頃から実感し寂しく見送る運ばれ行く荷 【短歌】

2021年01月27日 | 短歌
新しい事務所に移転した時のこと

移転が決まってからも慌しく
引越しの実感があまり湧かなかったのですが

荷造りをはじめ
古い書類などを捨て始めた頃から
だんだんと引越しの実感が出てきました

そうして荷物が運び出された日
しばらく事務所の中で過ごしていたのですが
ああほんとうにこの場所からお別れなんだなと思うと
少し寂しくなってきました

新しい事務所の方が
家からも近く便利になるのですが
しばらく仕事をしていた場所なので
知らず知らずと愛着も湧いていたのでしょう

気持ちを入れ替えて
新たな気持ちで頑張ろうとは思いましたが

霙れるや村落棚田白き海 【季語:霙】

2021年01月23日 | 俳句:冬 天文
冬の日本海沿いを走る電車に乗っていました
空はどんよりと曇り
時々霙や雹も落ちて来ました

窓の外には寒々しい風景が広がっています
海沿いの小さな村落は
背を小さくしながら寒さを一生懸命に
こらえているようです

山間の棚田は真っ白な雪を敷き詰め
静けさをたたえるばかりです

そうして霙をいくらでも飲み込んで行く海は
激しく波打ち白く見えます

その風景に吸い込まれて
心が寒々とする感じを覚えて
僕は思わず目を閉じて
その風景から自分を遮断していました

僕の業に 【詩】

2021年01月21日 | 

「僕の業に」

僕は 欲張り過ぎたのだろうか
光るものをたくさん ためこもうとする
悪戯な カラスよりも

蓋を開ければ いつからか がらくたな思い考えで
心は 一杯になってしまった

ためこんだ思いは 思いごとに
泣き言を繰り返し 騒がしい

屁理屈集めた 考えは
烏合の 学徒の 禅問答

僕はもう どれが要らないもので
どれが 大切なものなのか
その 見極めさえもつかずに

欲張りの 僕の業
そのなせるわざと 攻められるのならば
それは甘んじて 受け止めるしかないのだけれど

僕なりの理屈で 僕は僕なりに
真面目にやってきた そのつもりだけれど
それが悪かったのだと 言われれば
それを 甘んじて
黙って耳を 傾けるしかないのだけれど

僕は 欲張りすぎたのだろうか
その結果が 冬の夕暮れ
一人 放っておかれる
疲れきった この後姿なんて

せめて誰かが 石を持ち
お前の業だと 僕を撃てば
それなりに すっきりもできるだろうに

頭から流す 赤い血で
両手を染めて いつまでも
涙を流すことも できるだろうに

僕は 放っておかれている
冬の夕日に 一人
影さえも 僕に従うことを嫌がり
誰からも そうして僕自身からも
やり直す生もなく 余力すら無く 諦めきって

これが 業の報いだとしたら
それは それであまりにも むごい仕打ちだと
吐き出す言葉は 自分に戻る
天へ向かって 吐いた唾

もう僕は 金輪際
心の 騒がしさには
無関心になる 能天気な人の波に
せめてもは 揉まれるようにして


僕のこと忘れぬ傷を君の胸残したかった別れ行く日は 【短歌】

2021年01月20日 | 短歌
大切に思っていた人との別れ際は
いつでもつらく悲しいものです

自分も相手も
お互いのことを少しずつ
忘れていってしまうのかと思うと
一緒に過ごした時間を否定してしまうようで
未練が残ります

せめて自分のことを忘れないでいて欲しい
そのためには僕のことを
忘れられないような傷跡を
相手の胸の内に残したいと
身勝手なことを思ったりもしますが

そんな術は知らずに
ただ静かに力なく手を振るばかりです

冬岬フジツボに似た村過ぎて 【季語:冬岬】

2021年01月16日 | 俳句:冬 地理
以前、日本海沿いを走る電車に乗っていた時のこと
その日は随分と風が強く
時折間近に見えた海は激しく波打ち
白く見えていました

電車も強風のために徐行運転をし
車窓の風景はゆっくりと流れていきます

その海の近くには小さな家々が
ふじつぼのようにひしめき合っていました

昔からこの場所にあって
こんな激しい風や寒さから身を守るように
皆で肩を寄せ合い暮らしてきたのでしょう

その生活を勝手に思い描いていたら
それがとても愛しいものに思えて
胸が熱くなるのを感じていました

その村を過ぎると今度は寒々しい冬の岬
その上ではカモメたちが
あてもなく舞っていました

雪の駅で 【詩】

2021年01月14日 | 

「雪の駅で」

あなたの横顔に
雪は静かに降った
遠い街の街灯にも
そのおすそ分けが舞った

思慮深いその横顔に惹かれ
触りに来る雪
僕がそばにありたいと
思うことが不思議ではない
その証明

二人の間に割り込む
雪の意地悪の一つ一つは
あなたを隔てようとする
戸惑いに似ている

汚れた僕の手で
あなたに触れれば
雪の結晶のような
あなたが壊れて
しまわないかと

雪のくれた幕間
あなたの横顔を見る
その静けさを破り
話しかけてくるあなた
白い息を吐き
いつの間にか
色を失った唇も愛しい

突然 向かい合う戸惑い
愛しさに止めた息を
走りこんだ電車に救われて
それを合図に言葉を口にした
電車が舞い上げる
雪の向こうのあなたに
平静さを装いながら

胸の内を隠すように
雪は降っている


冬の地に触れる子の手の温もりが蠢動誘う春目覚めよと 【短歌】

2021年01月13日 | 短歌
子供と一緒に外に遊びに行った時のこと

体にエネルギーがありあまり
走り回らないと気がすまないので
寒いなと思いながら
お付き合いすることにしました

最初は寒かったのですが
子供と一緒になって
走ったりしているうちに
体が温まり外にいることも
苦にならなくなりました

やがて子供の一人が
しゃがんで大地に手をつけました
何の遊びのつもりかは
分からなかったのですが

その姿がまるで
大地を暖めているように見えて
春の目覚めを誘っている姿に思えました

靴跡を比べ見るなり雪の街 【季語:雪】

2021年01月09日 | 俳句:冬 天文
その日は朝から雪が降っていました
さほど積もってはいなかったのですが
あたり一面を真っ白にするに
十分な積雪でした

いつものように道を歩いていたのですが
車道はさすがに車が通り
アスファルトが見えていたのですが
歩道はほぼ真っ白で
色々な靴底の跡が残っていました

それに気づき眺めていると
色々な靴跡があるものです

特にこうした雪の降る土地柄だからでしょう
防寒対策のしっかりとした
滑りにくそうな靴跡がいくつも残っていました

自分の靴は普通の皮靴
しかも履き古していたので靴底もだいぶ擦り減り
雪の上にはしっかりとした靴跡を
残せないような代物です

転ばないようにしなければと
それからは注意をして歩いて行きました