風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

夜の蝉塗り込め闇の濃き事よ 【季語:蝉】

2024年08月10日 | 俳句:夏 動物

お気に入りの温泉に出かけました

宿から少し歩いたところに露天風呂もあるので
12時過ぎにそこに出かけました
湯船に浸かっていた人は2、3人
それも直ぐに出て行き
自分一人が残りました

高原にある温泉なので
肌に当たる風は涼しく
灯りも少ないので夜の闇も濃厚です
肌に触れる闇もどこかしっとりとした
質感を持っているようでした

蝉も鳴いていたのですが
闇の中に押し込められたような声

どこかこの世から
切り離された場所にいるような
錯覚を覚えていました


つく法師独り読経するごとし 【季語:つく法師】

2023年08月26日 | 俳句:夏 動物

自転車で公園を走っていました

ちょうど木々が生い茂る坂道を
通り抜けようとしたら
唐突な感じの蝉の声

家の周りではすっかりと蝉の声も途絶えていて
独りだけ地上に出る時季を
間違えてしまったように聞こえました

独りでなく蝉は
どこか真面目にお経を唱えているようにも聞こえて

自転車で走りながら
遠く聞こえなくなるまで
その声を耳で追っていました


自転車やひき逃げさけし蝉骸 【季語:蝉】

2023年08月19日 | 俳句:夏 動物

自転車に乗って
街路樹の横を走っていたら
仰向けの蝉の亡骸に
何体も会いました

その度に驚いてブレーキを踏んで
亡骸を避けて走ったのですが
その数が多いので
途中からはゆっくりと
慎重にペダルを漕ぎました

日中はうるさく感じられる
蝉の声も段々と少なくなり
やがて聞こえなくなると
それはそれで寂しいものがあります


初蝉や捕獲者どもの集いかな 【季語:蝉】

2023年07月29日 | 俳句:夏 動物

蝉が鳴き始めました
その声を聞くと
早速、子供たちが網と虫かごをもって
木の間をうろうろとするようになりました

なかなか姿が見つけられないようで
親も一緒になって探しています

自分も子供の頃には
蝉を探してまわることが夏休みの日課になっていて
時代が変わっても
変わらないものもあるなと思っていました


ドア開ける蝉鳴く圧に気圧されて 【季語:蝉】

2023年07月22日 | 俳句:夏 動物

朝出かけようとドアを開けると
何かの音が響いています

その音の正体がわからずに
工事かなと思って外に出て目を凝らしたのですが
工事などは何も行われておらず
音の正体は蝉の声でした

この時期に蝉が
こんなに大きな声で鳴いているイメージが
僕の中になかったので
少し混乱していました

住んでいるマンションの前が
子供たちも遊べる憩いの場になっていて
木も沢山植えられていて
そこに止まって鳴いていた蝉でした

一斉に蝉が羽化したのでしょうか
2~3日はそうして鳴いていた蝉たちでしたが
程なくその声も小さくなりました

この後、第二弾、第三弾があるものなのか
ちょっと楽しみです


先導す夏茜いてペダル漕ぐ 【季語:夏茜】

2022年09月24日 | 俳句:夏 動物
自転車で走っていると
赤とんぼの群れに出会いました

その中の一匹が
僕の自転車で行く方に飛んでいき
まるで僕のことを先導してくれているようでした

スピードを落として
その赤とんぼの後を少しの間ついて行ったのですが

急に道のない方に飛んでいき
取り残された僕はまた
自分のペースで自転車を走らせました

染み入れの願い響かせ夕の蝉 【季語:蝉】

2022年09月10日 | 俳句:夏 動物
夕方になっても
蝉が熱心に鳴いていました

自分の声がいつまでも鳴り響くようにと
そんな必死さを感じる声でした

蝉はそんなことを
思うことはないでしょうから
僕の思い入れなのですが

僕は何を世の中に染み入れさせたくて
あくせくしているのかしらと
改めて自分の行いを振り返っていました

トンネルを抜ける頃かな蝉時雨 【季語:蝉時雨】

2022年08月06日 | 俳句:夏 動物
電車で座ってウトウトしていました

やがて車窓を流れる音が変わり
暗くなったような気がしたので
少し目が覚めました

トンネルの中に入ったようです
そんなに長いトンネルではなかったようで
その状態は長く続かずに

やがて蝉の声が電車の向かう方向から
聞こえ、近づいて来るようです

急に目の前が明るくなると同時に
沢山の蝉の声が耳に届きました

蚊の声や夜の微雨にも紛れたり 【季語:蚊】

2022年06月25日 | 俳句:夏 動物
夜、パソコンの前に座っていたら
いつの間にか蚊に足を刺されていました
痒みがあったので、初めて
蚊がいることに気が付きました

普段、蚊がいれば気が付くのですが
その夜は小雨が降っていたので
その音に蚊の羽音も紛れ込んだのでしょうか

あるいは小雨にかき消させるほどの羽音の
蚊だったのでしょうか
その割には随分と痒みも強かったのですが

雨降りや飛び出すでない蝸牛 【季語:蝸牛】

2021年06月05日 | 俳句:夏 動物
雨が降りだすと
まだ生まれたばかりのような
小さなカタツムリがたくさん
野原から道に這い出してきます

足もとをしっかりと見ていないと
ほんとうに気がつかない小ささ
これで生きているのかと疑わしいほどなのですが
良く見ると確かに動いています

当然のことながら
踏まれてしまったカタツムリも
何匹もいて無残なのですが

その屍を気にすることもなく
後から後から小さなカタツムリが
雨に誘われて出てきます

もう飛び出すんじゃないよと
小さく声をかけるのですが
僕の声は赤信号程の効果はなく

小さなカタツムリたちは
道路に向かって進んでいきました