風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

手作りの万華鏡から宙(そら)のぞく君のありたい錦に届け【短歌】

2025年02月11日 | 短歌

子供がお手製の万華鏡を
褒められて帰ってきました

厚紙で三角の筒状の躯体を作り
その先には一口ゼリーの
透明な容器を取り付けています

容器を何種類か用意し
様々な模様を描いて
それを取り替えると模様が変わる仕組みです

こうした工作が得意な次男
我が家では異質な存在で
誰の血を引いたのだろうと思います

次男に急かされて
覗いてみた万華鏡は
確かになかなかの出来栄え

万華鏡から眺める光溢れた世界は
きっと次男に見えている世界

これからどんな
光の模様に浴そうとするのか
楽しみにしています


ポケットの手までも寒い家路かな急いた足さえ枯らせと木枯し【短歌】

2025年02月04日 | 短歌

とても寒い日
首筋を冷たい木枯しにさらされ
ポケットに入れた手も冷たく
早く家に着きたいと
頭にはその思いだけでした

けれど家までの道のりはまだ遠く
あせる気持ちに追いつけない
足がもどかしく感じられます

暗闇が足をとらえ
冷たい風が枯らそうとするようで
すっかりと心細くなりました


抱いた胸ミルクの残り香 濃厚で バイバイ告げる気持ちくじける【短歌】

2025年01月28日 | 短歌

子供たちと離れ
一人で東京に戻る
電車の時刻が間もなくでした

週末の二日間
一緒に過ごした小さな子供たちは
日ごとに違った表情を見せて

もう少し一緒に過ごしたかったと
別れる寂しさが胸に広がりました

その小さく柔らかな体を
胸に抱いた後には
ミルクの香りが残り

お腹を満たして
眠ったままの二人の子供たちに
さよならを告げる手が
とても重く感じられました


青く澄む涙のたまり独り咲く青い薔薇だ純なあなたは【短歌】

2025年01月14日 | 短歌

優しすぎて一人で苦しむ人
苦しみを自らに引き受けてしまう人

人に見られないように
さめざめと涙を流して
そのたまりに身を潜め咲く
気高い青い薔薇のようです

苦しむ必要のない人が
苦しむ世は理不尽に満ちていると
感じられるのですが

止められない歩みのなかで
その花に慰めが注ぎ
更に気高く花開きますようにと願います

 

(Tanka)
In a limpid azure tear’s hold,
A lone blue rose blooms lofty,
Pure and true you are,
In solitude, you blossom,
Regal, gentle spirit.


寂しさに濡れるあなたの胸一杯 優しい陽射しの花束あげたい【短歌】

2025年01月07日 | 短歌

あなたが一人 寂しくないようにと
いつもあなたのことを思います

一人の夜はとても長く感じられ
重い闇がのしかかって

あなたが苦しいときにも
何もできないことのもどかしさ

せめて暗い闇を内から照らす
優しい陽射しの花束を
思い描き贈ります

あなたは決して一人ではなくて
沢山の人の温かさに包まれていること
胸一杯に感じて欲しくて


年越しに母の習いのお雑煮をこしらえ舌の忘れ得ぬ滋味【短歌】

2024年12月31日 | 短歌

年末は一人だったので食生活も適当でした
何かを作る気もしなかったので
昼はインスタントラーメン
夜はハムやチーズ、パンなどを肴に
お酒を飲むだらけた生活

年越しそばにも魅力を感じず
最低限の物を買ったのですが
雑煮を作りたくなって
その材料も買いました
食べる人もいないのにと
思わず苦笑いをしながら

大晦日の夜には母が
正月に食べる雑煮を作っていたので
その習わしに従いました

その雑煮ですが
出来上がったところで
鍋に腕を引っかけて
全て台所の床にぶちまけました

その瞬間は頭が真っ白になり
何が起こったのか分からない状態

雑煮を作った自分への
怒りが沸々と湧き上がってきました


忘れ去る楽ふえたけど年かさね失くしてもいる大切なこと【短歌】

2024年12月24日 | 短歌

年を重ねた分だけ
自分との折り合いをつけることが
上手くなっていくようです

一つには嫌なことを上手に忘れること
そうして忘れてしまったことが
どれぐらいあるでしょう

そこには本当は忘れてはいけない
大切なこともあったはずなのですが
それすらも思い出せません

いまでは忘れてしまったものたちの感触が
胸に湧き起こることもなくて
その感触をなぞろうとする筆も
先に進むことはありません


繰り返す悪夢が心を踏み荒らす寝ても覚めてまざまざと見る【短歌】

2024年12月17日 | 短歌

嫌な夢を見て目が覚めました
ゆっくりと休んだ気分になれず
不快な重さが頭に残りました

二度寝しようにも眠れずに
肝心の悪夢の中身も覚えてはいません

けれど嫌なことは
目を覚ましてもあります
身の回りにもテレビの画面からも
信じられない話が届いたりします

寝ても覚めても悪い夢が続き
どこに心を休めれば良いのか
煩わずにはいられません


秘密基地いつから襤褸の雨ざらし君の胸だけ安心して寝る【短歌】

2024年12月10日 | 短歌

子供たちが家の中で
布団やらテーブルを組み合わせて
秘密基地を作ります
何が楽しいのだろうと思うのですが

その秘密基地に入りながら
テレビを眺めたりするのが楽しいようです

確かに自分も子供の頃は
押し入れに隠れて秘密基地だと言ってみたり
その自分だけの隠れ家の中で
本を読んだりと楽しんでいました

そんな自分の逃げ込む秘密基地を
いつからか僕は失ってしまったのでしょう
逃げ込んだとしても雨ざらしのボロボロの物
心休まる物ではとてもありません

せめて大切な人の横で安心したいと
誰かを探してしまうのかも知れませんね