風のささやき 俳句のblog

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青空を見上げるごとく君の目ものぞきこんでて飽きることない

2019年01月30日 | 短歌
子供たちが「アウー」とか「エウー」とか
喃語(なんご)を話し始めました

あまりにもお喋りなので
ずっとつきあっているときりがないのですが
時間があればその会話につきあっています

目を覗き込んで話をすると
嬉しがるのでそうしているのですが
一瞬ごとに目の表情がかわり
まるできれいな青空を見ているように
飽きがきません
不思議なものです

暗闇で

2019年01月27日 | 
「暗闇で」

誰かが どこかで泣いている声が聞こえたと
夜の静かな風が 僕に告げにくる
どんな思いが 胸の中から溢れて
涙に変わったのだろう

けれどそんな出来事は 日常茶飯事なんだと
夜の風は 僕の耳元にうそぶき
面を伏せた 僕の横顔を
決まり悪そうに 眺めながら
小さな部屋の窓から 急ぎ足で逃げて行く

暗闇に一人は 冷たくて寂しい
涙に濡れているのは とりとめもなく苦しい
誰にも知られない涙は やるかたない と
夜風が伝えた言葉に 動揺を続ける僕は

夜の暗闇の中に 少し長い間
目を覚まし過ぎて いるのかもしれない
いつの間にか 人の心の痛みや不安とかに
過敏に 成りすぎているから

僕は無力だ 僕は嘆くことしかしらない
僕は嘆きを 力に変える術を知らない
僕はすべてを 見て見ぬ振りをする
そうして そんな自分に開き直ってさえいる

夜のほとりで
こうして 時々は思い悩む
日々を重ねることが せめてもの償いと

僕は思い描いてみる
夜風が伝えた 涙の消えていく先について
それは きっと 一つの大きな海のように
人々の涙が 流れ着き 一つになる場所だと

その海は すべての悲しみの訳を語る
優しき面影の人の 両の手のひらの窪みにあって
淡い太陽に 青い流砂が波立つようだと
風はその水面に 静けさの墓標を立てて吹き・・・・・

僕はまた 無力の思いに苛まれるだけ
夜風よ何故 悪戯に 僕の窓辺に
悲しい知らせを口に含んで 立ち寄ったのか

誰かがどこかで泣いている その悲しみを
優しく受け止めてくれる面影を
僕はまた思い 憧れている

パパという子も眠りおり寒の月 【季語:寒の月】

2019年01月26日 | 俳句:冬 天文
ここのところ子供が
パパと言う言葉を覚えて
自分に呼びかけてきます

朝、眠っているときに
パパと声をかけられて目覚めると
子供の顔が目の前にあったりします

とある日
夜遅くなり家に戻ると
眠っていたその子が目を覚まし
楽しくなってしまったのでしょうか
遊び回り始めました

仕方がないので
夜遅い食事の途中だったのですが
皆と一緒に布団に入りました

ほどなくその子も眠り
また食事をしようと戻ると
カーテンの合間から月の光

寒々しい空に
丸い冬の月がかかっていました

お食い初めごはんの粒を口につけ笑った顔がそのままにあれ

2019年01月23日 | 短歌
この前
子供たちの
お食い初めのお祝いをやってもらいました

お婆ちゃんから順番に
子供たちの口に食材を運んだのですが
僕の担当食材はちらし寿司

ご飯の部分を箸にとって
子供に食べさせる真似をしたのですが
ご飯が一粒口についてしまい
何がおかしいのか子供は笑っています

そんな笑顔のままに
スクスクと育ってくれればいいなと
思っていました

ママのママ

2019年01月20日 | 
「ママのママ」

ママの腕の中に甘えているお前
今しがた泣いていた涙の跡が
しっかりと頬っぺたに残っている

誰にもはばかることもなく涙を流せることが
どんなに贅沢なことなのかは
今のお前には知る術もないだろうけど

お前の指差す写真の上には
ママのママが笑っている
「あれはママのママ
 僕のママの写真だよ」と
お前に教えても
お前はキョトンとするばかり

ほんとうは誰よりも
マシュマロのように柔らかくていい匂いのするお前を
ギユッと抱きしめたかったママのママ

それすら叶わない遠いところで
きっとお前が大きくなる姿を
見守ってくれているはず

そうしてそのママのママ
僕のお婆ちゃんも
ついこの前 遠くへ行ってしまったんだよ
寒い寒い雪の降る日
たくさんの優しい思い出だけを僕の中に残して

お前のママのママのママ
以前一度だけお前も会ったことがあるだろう
写真の中でどれほど嬉しそうに
お前を抱いていたか

もうママの腕の中にも飽きて
一人遊び始めるお前
追いかければ付いてくるなと
僕の手を振りほどくお前には

お前のママの
そのママのママの
そうしてそのママの愛情さえも注がれていること
きっと忘れないでいて欲しい

それがどんな素敵な芽を出すのかは
今は分かりはしないけれど

やがてお前も
たった一人の誰かのママになって
腕の中の温もりを
その子供に伝えて行くんだ・・・・・

加湿器や子の咳止めろ冬旱 【季語:冬旱】

2019年01月19日 | 俳句:冬 天文
子供の咳がここしばらく止まりません
風邪をひいているのもあるのですが

一日暖房をつけている部屋が
どうしても乾燥気味になり
それも一つの原因のようです

仕方がないので
物置に眠っていた
小さな加湿器を取り出してきて
それを利用しています

乾燥した部屋で
一日中湯気を立てている加湿器

それよりも乾燥の度合いが激しいのでしょうか
子供の咳はなかなかとまらず
性能の悪い加湿器を
ちょっとうらめしげに思っていました

蜜柑成る明るき木の下手を合わせ恵み落ちるを待ちたく思いて

2019年01月16日 | 短歌
蜜柑の成った木を見かけました
そのオレンジの色合いに
親近感を覚えた陽射しが
集まっているようで
木の周りは明るく見えます

普段は何気なく口にする蜜柑ですが
こうして木になっている姿を見ると
ありがたい恵みなんだと思えてきます

謙虚にその恵みが落ちてくるのを
手のひらを合わせて待っていたい
そんな気分を覚えていました

ポンペイの遺跡にて

2019年01月14日 | 
明日あなたの微笑が
突然にいなくなったとしたら
この空の下の風景は
どんな風に変わってしまうだろう

いつものように潜り抜けていた扉の取っ手を
もう握りしめることもできない
昨日までの暮らしがすべて
夢のように消し飛んでしまうとしたら
どれ程までに
在り来たりだった昨日までを
悲しく思い煩うことだろう

たった一瞬で
生活を変えてしまう力は
一体何のための悪戯なのだろう
あるいは悪戯と思うのは
運命弄ばれる人の思いあがり

中空に開いたままの部屋には
青空が無慈悲に侵食している
いつかそこにあった生活の香りの
一切を否定するかのように

天を指す柱は
支えるべき重さも持たずに
長い年月をうつろなままに立ち尽くす

広い浴場は雨水をためるばかり
劇場の舞台には芸の欠片も転がってはいない

僕は急に思い出す
さっき通り過ぎて来た街の
青空の下の白い洗濯物を
洗剤と潮風の香りと
窓際にそれを広げ
太陽に向けた皺の多い誰かの母の温もりを

僕は人の匂いを身近に感じたくなって
あなたの肩をそっと抱き寄せていた

見たいなと言った子の街今日の雪 【季語:雪】

2019年01月12日 | 俳句:冬 天文
正月
親戚の小さな女の子が遊びに来た際
テレビで雪が降っているのを見かけて
いいな私も雪が見たいなと
つぶやいていました

年末に秋田に行っていた僕は
きっとあの雪を見せたら
喜ぶのだろうなと思いつつも
それを言うと絶対行きたいと言って
きかなくなろうだろうからと黙っていました

そうして降った先日の雪
僕は空を見上げながら
その子が雪の中で喜んでいる顔を
思い描いていました

雪の原一つ首出す墓石はまだ癒されぬ魂の標か

2019年01月09日 | 短歌
新幹線で秋田へ向っていました
目が疲れていたので
文字を目にすることもなく
窓の外を流れて行く風景を
ぼんやりと眺めていました

とある場所で
白い雪原が続いていたのですが
そこに一つ
黒い墓石が顔を出していました

すべてのものが白い雪の下で
静かに眠っているのに

その墓の下には癒されぬ魂があるのだと
告げているようで
勝手な想像で痛ましい気分になっていました