風のささやき 俳句のblog

訪問ありがとうございます
オリジナルの俳句を中心にご紹介しています
詩や短歌も掲載しています

おみくじを引く気にもなり花盛り 【季語:花盛り】

2019年03月30日 | 俳句:春 植物
桜がそろそろ見ごろだということで
お昼の時間に近くの神社に出かけました

階段を上ってたどりつくと
桜はちょうど見ごろを迎えていました

天気もよかったので
僕の他にもたくさんの人が
出向いて桜を愛でていました

満開の桜を見ると僕の心も
どこか浮き浮きとして
今ならば大吉を引き当てられる気もして
おみくじに挑戦するかという
気分になっていました

春風に襟元を引っ張られて 【詩】

2019年03月28日 | 
「春風に襟元を引っ張られて」

春風に僕は
シャツの襟元を引っ張られて歩いている
必要以上に誇らしげに大きく胸元は膨らんで
地面と水平にネクタイは靡いて

春風が僕の
透明な羽を靴底に生やした
それでこんなにも交互に動かす速い足が
疲れも知らずに進んで行くんだ

けれどそんな春風の勢いだけで
世の中を渡っていけるほど
甘くは無いと僕は知っているから

思いがけずに飲まされる苦湯に
焼けただれた舌を持つ
疑心暗鬼の僕は
表情を晴れ晴れとしきれないでいるんだ

それに膨らんだ僕の胸の内は空虚だ
透明な水素で膨らんだ
あの空を行く赤や青の風船ほどにも中身がなくて
どこでつぶれてしまうのかさえ分からない

張り裂けてしまえば飛び出してくるのは
かき集めてきた幾つかの寂しさと
それに纏わる幾粒かの乾いた涙

だから春風よ
お前が手を離してしまった隙に
僕は糸の切れた操り人形のように倒れてしまいそうだから

いつしかその手を離すのであれば
春風よ そんなに
僕の襟元を引っ張るのはやめてくれないか
強がる僕の強がり以上に見せるのは

にわか雨白きこぶしに潜むのを我見逃さず花びら揺する 【短歌】

2019年03月27日 | 短歌
明るい空から雨が降ってきました
にわか雨です

買物に出かけようと
家を出た時に降ってきたので
家に戻りしばらく雨が止むを待つことにしました

雨上がりで明るくなった空の下
買物に出ると
とある家の庭で
白いこぶしの花が先ほどの雨に
濡れていました

僕がその花に触れ揺すると
雨が地面に零れ落ちます

こぶしに潜んで
地面に落ちないよう頑張っていた
雨のしずくなのでしょう

僕は悪戯心をだして
幾つかの花を揺らしました

その度に隠れていた
雨のしずくが堪えきれずに
地面に落ちていきました

言の葉の軽はずむこと初春かな 【季語:初春】

2019年03月23日 | 俳句:春 時候
ここのところの陽射しが明るいせいか
気持ちもつられて軽やかに感じられます

そんな春先の気持ちの軽さには
まだ冬に閉ざされて重くなった口が
ついてはいかないようです

友人と話をしていても
軽やかな気分でいるせいか
ついついたくさんの言葉が口をつくのですが
冬に鈍った僕の口先はどこかちぐはぐ

時には自分の言おうとしていたこととは随分と異なる
調子はずれの軽口を
叩いてしまうこともあります

それはそれで皆の笑いを誘い
楽しいので許されると思える春初めです

パズル 【詩】

2019年03月21日 | 
「パズル」

もう何回目のパズルを
君は組み立てていることだろう
すっかりと目の中に焼きついたピースの数々
君の目にはもう組み上がった時の絵柄が
はっきりと見えているのだろうね
何の迷いもない手の動きの早さが
それを伝えているから

僕にも昔は
確かに見えていたのだけれど
僕の胸の中の数々のピース
一つの絵柄に組み立てられること

僕はその絵柄を早く完成させたいと
息を切らせて急いでいたっけ
ちょうど今の君のように脇目もふらずに

けれど今では僕の中には
見たこともないピースが散らばって
それがどんな絵柄の一部なのかさえも
想像がつかないでいるから
僕はそのピースを手に
重なり合わない辺を重ね合わせているだけ

途方に暮れながら
それがいつから
どんな風に紛れたのか
僕にはとんと分からない
何の関係もないピースの数々

僕の生にこんなたくさんの
ピースが配られようとはついぞ知らずに
僕はもう半ば諦め顔でいる
思い描いた絵柄を組み上げること

ただ悪戯に増えていく
ピースは胸の中に撒き散らかされるだけ
誰かがもってきてくれる
最後のパズルの一片が
すべてを完成させてくれるような
幸せな夢は夜な夜な
見ることもあるけれど

君が完成させた何回目かのパズルの絵柄
僕の生もそんなパズルのように
思うがままに簡単に
組み上げることができるのだと
確かに思っていたんだよ

千切られたタンポポ三本捧げてる子供の見てる神に触れたし 【短歌】

2019年03月20日 | 短歌
朝歩いていると
乱暴に手折られたタンポポが三本
ベンチの上に置かれていました

きっと子供が遊んでいた跡なのでしょうが
それでも綺麗に並べられたタンポポは
何かへの捧げ物のようで
どんな神様に子供は祈っていたのだろうと
そんなことを考えました

きっとその神は素朴で
優しい表情をしているのでしょう
大人の自分が感じることができなくなった
子供の目に映る神様に
触れてみたいなと思っていました

春めきて雨晴れ上がり道は銀 【季語:春めく】

2019年03月16日 | 俳句:春 時候
その日は朝から雨が降っていたのですが
僕が家を出た頃には傘もいらず
やがては明るみ始めた雲間から
太陽の陽射しが差し込んで来ました

水溜りを避けながら歩いていた僕の
目に飛び込んできたのは
陽射しの加減で銀色に光りだした一本の道

その先には穏やかな春が待っているように思えて
目を細めながら僕は
その銀色の道を眺めていました

霧の中の人 【詩】

2019年03月14日 | 
「霧の中の人」

笑いあっていたのに
横をむいてしまえばもう
僕はあなたのことを思ってはいない
僕は見ず知らずの人の髪を触る癖に
気をとられたりしている

あなたに呼びかけられて
僕はあなたの方を向く
いつからあなたはそこにいたのだろうと
僕はいぶかしく思いながら
気持ちのこもらない相槌を打っている

きっと僕らは同じ言葉で通じあってはいない
さも分かり合えたように過ごすけれど
もう分かれてしまえばあなたは
霧の中の人だ
僕らを結びつけるものは何も無くて

白い霧に隠されて
あなたの顔は思い出せない
その声も目の色も
きっと僕に向かってあげられている手も

僕の言葉もあなたの耳には透明な言葉
必死になって呼びかけても
あなたの耳には届くことはなくて

だから僕は冷たく無関心になるだけ
美しい誤解の上に眠り続けるあなたに
小さな失望を重ね続けながら

あなたへの優しき思いは
舌の上に乾かないままあるのに
僕はその言葉を伝える術を知らずに
今日も霧の中のあなたへ口ごもっている

子供まね風がシーソー押そうとす 僕と遊ぼう押して手伝う 【短歌】

2019年03月13日 | 短歌

さっきまで子供が遊んでいたシーソーも
静かに人待ち顔

近寄るとシーソーを
動かそうとするように
風が集まっています

子供たちの楽しげ様子を
風は羨ましく思ったのでしょうか

けれどその透明な手では
シーソーを動かす力は無くて

僕が片側を押して
風と遊びました


来る日の希望が支え枝の雪 【季語:雪】

2019年03月09日 | 俳句:冬 天文
冬の秋田に遊びに行きました
仙台からバスで向かったのですが
随分と雪も降り積もり
あたり一面が真っ白でした

丸裸の木々の枝にも
白い雪が積もり
今にも折れるのではとばかりに撓んでいます

そんな雪の重さを支えるのは
きっと枝の強さ以上に
裏切ることなくめぐる春への思い

そんなことを思って見たら
雪を支える枝には
力が満ち溢れているようにさえ見えました