風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

2の次はあやふやな子も食らう柿 【季語:柿】

2021年10月30日 | 俳句:秋 植物
子どもたちが数字を覚えて
それをきかせてくれます

確実に1と2は分かっている様子なのですが
その先はあやふや

一緒に数えると10までは
それなりに言えるのですが
意味は分かっていないようです

そんな数字の知識よりも
目の前のおいしい食べ物の方が
子どもにとっては重大な関心ごとのようで

両手に柿を持って食べている子供を
苦笑いしながら眺めていました

苦しみの秋に 【詩】

2021年10月28日 | 

「苦しみの秋に」

苦しみから逃れる術を知らない心を持って
これからも生を続けなければいけないことを
また感じている今年の秋の風は
一際に澄んで僕の胸をしめつけるから
生を続けている自分の健気さが少し哀れにも思えてきて
僕は自分の手をじっと見つめてみる
この歩みの果てにどこまで
僕の生は届くことができるのだろうか
その深さを測りかねてすくむ足を
進めさせるものもまた
立ち止まることの怖さに耐えかねてのこと
若き日の痛みもいつしか消えるものと思っていた
空に失われていく白い雲を真似て
けれど生の迷いと苦しみは深まるばかりで
暗澹たる思いに胸を塞がれている毎日に
精一杯の強がりの声さえくじかれて弱く
目に映るものの上には雨のように灰が降り積もり
景色はわびしく色を失うから
僕を慰めに来る秋の陽射しも弱々しく
肌の上に弾けて消えて行く
生に弄ばれているかのように
苦しみの周りを彷徨している僕の歩みは
遅々として進まないけれど
せめては明るんで見える方に歩いて行かんことを
僕自身が生を見捨てない限り
僕が生に見捨てられることはないのだと
心が確かに信じていられる間は
苦しみの固い結び目を一つ一つほぐしながら
喉の奥から零れ出る嗚咽を言の葉に換えて


金木犀香り虚ろに漂える秋は事無く今年も移ろう 【短歌】

2021年10月27日 | 短歌
いつも歩く道では
金木犀の花も散ってしまい
その残り香も
もう微かに記憶の中に
漂うばかりです

秋は何事もなく
過ぎていきます

何もないことはいいことではあるのですが
訪れるものが少なくなって
心もどこか寂しがっています

若かりし頃のどこか
ワクワクとした毎日と比べて
静か過ぎる日々の胸の内を
秋が寂しく覗き込みます

黄の矛で空突き上げる銀杏かな 【季語:銀杏黄葉】

2021年10月23日 | 俳句:秋 植物
天気の良い秋の午後でした

大きな道沿いを歩いていたら
街路樹の銀杏の木々が
黄色に色づいていました

時間があったのでゆっくりと
その木々の色合いを
楽しみながら歩いていたのですが

あまり背の高くはない銀杏の先はとんがって
まるで黄色い矛(ほこ)の様です

それが何本も地上から生えて
空を突き上げているようで

急に血気盛んな木々が
空に反抗を企てようとしているように見えて
刺々しく感じられてきました

ある日 【詩】

2021年10月21日 | 

「ある日」

今日一つの思いが
僕に引き裂かれて逝った
遠い秋の空の下
いやだとばかりを繰り返す
心の風景達に
僕は何度も告げていた
力無い言葉で
別れの言葉を
何のはなむけも
もたせられずに。

多くの後悔だけが
僕の心を虜にしていたが
後悔することには
後悔していなかった。
(そうして
  これからもずっと)

あきらめてもあきらめても
残って行く気持ちを
強く信じながら
美しい思いで
やがて僕が満たされるように
今日一日が終わる
夕暮れのなか
涙ににじむ瞳で
何かに熱く祈りたい気がした


走る顔ゆがませ健気さ隠さない運動会に胸熱くして 【短歌】

2021年10月20日 | 短歌
保育園での運動会

我が家の子供たちも
二種目ほどに登場したのですが
友達と一緒の競技もうまくこなし
こんなこともできるようになったんだと
感心して見ていました

子供は何事にも一生懸命なのか
競技をしている顔が真剣そのもの
顔をゆがませたりもするのですが
それもとても好感が持てます

やがてすべての子供たちが
競技に登場するたびに
頑張れと声援が上がっていました

遊ぶ子の笑顔も静か秋日和 【季語:秋日和】

2021年10月16日 | 俳句:秋 天文
晴れた秋の日でした
吹いて来る風も心地よく
いつまでも外を歩いていたいと
そんなことさえ思わせます

道の向こうからは
自転車に乗った二人の子供が
僕の脇を通り過ぎて行きます

その子供たちの笑顔は
いつもとは違いとても静かで

きっと秋の陽射しに手を置かれて
優しくなってしまったのでしょう
その証拠に僕の周りのすべても
静かに押し黙っていました

コスモス 【詩】

2021年10月14日 | 

「コスモス」

まるで言葉が分かるようだ
話の終わりには
そんなに大きく相槌をうつ

  きっと風に消える言葉
  聞き流しているだけなのだろうな

一人の僕の相手をしてくれる
君がとても心に温かいよ

  秋風が吹き込もうと
  心の隙を狙っている

沢山の話し相手
色とりどりに群れる
君は
端正なコスモス


金木犀子の鼻先に匂い問う甘いとニヤリ美味しいと聞く 【短歌】

2021年10月13日 | 短歌
家の近くを子供を連れて散歩しました

歩いて行くと
金木犀の花を発見したので
良い匂いだよと
子供を抱き上げて
花の近くにまで顔を近づけました

「どう」と尋ねると
甘いとニヤリ
間をおかず「美味しい?」という
質問が続きました

お菓子好きの子供なので
甘いは美味しいが刷り込まれているのでしょうか
思わず苦笑いしてしまいました

雨降りも二つ三つと金木犀 【季語:金木犀】

2021年10月09日 | 俳句:秋 植物
その日は朝から雨が降っていました
傘を差しながら出かけたのですが
冷たく感じられる雨に
心も沈みがちになります

そんな心を華やかにしてくれる金木犀
雨の中でもその甘い匂いははっきりと伝わり
どこにいるのかを教えてくれます

花が咲いていない時は
気にも止めていないのですが
匂いの先を眼でおっていると

二つ三つと見つかっていき
随分とあるものだなと驚かされます

一年に少しの間のこの匂いを
きっとみんなも愛してのことだなと思いました