風のささやき 俳句のblog

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一息の暖にも耐えぬ雪淡し 【季語:雪】

2017年12月30日 | 俳句:冬 天文
この前、東京にも初雪が降りました。
昼間の間中にちらちらと降ったのですが
夜にはすっかりと消えて
冷たい風だけが残りました。
どこか力のなかった初雪は
空が地上の冷たさを計ろうと
試みに降らせたものでしょうか

吹きかける一息の温もりにも
融けてしまう淡さには
まだ時期尚早と
空が雪を降り止ませたようにも思えました

残る実は雪の重さに耐えにけり 【季語:雪】

2017年12月23日 | 俳句:冬 天文
雪が降っているというのに
柿の実が枝に残ったままでした

しばらく雪が降り続いていて
柿の実は白い帽子を被ったように
真っ白な雪を頭に戴いていました

雪はさらさらとしていて
きっと真綿のように
軽いものだとは思うのですが

それでもあれだけ積もったら
重いだろうにと

落ちそうで落ちない柿の実を
雪落ちる中で見上げていました

踏切の警笛溶け行く冬の空 【季語:冬の空】

2017年12月16日 | 俳句:春 時候
電車の訪れを告げる警笛の音を聞きながら
閉ざされた踏み切りの前に僕はいました

寒い朝のこと
吐く息も白く
けたたましいのは警笛の音ばかり

時間をもて余し僕は空を眺めたのですが
冬の空は警笛を溶かし込んで静かなままです

やがてたくさんの人を乗せた通勤電車が
通り過ぎて行きました

その後も少し名残惜しそうに
警笛は鳴っていたのですが
その余韻を聞く耳も持たず
僕は急ぎ足で歩き去りました

仏壇の炎に智慧あり冬の朝 【季語:冬の朝】

2017年12月09日 | 俳句:冬 時候

寒い冬の朝
起きたばかりの家は
いつの間にか忍び込んだ外気の寒さ

早速ストーブをともし
部屋を暖め
仏壇の蝋燭にも炎を点し
線香を手向けました

それからお茶を飲もうと
薬缶を火にかけました

消し忘れた仏壇の蝋燭
その朝は炎が意味深い言葉を
ささやいているように見えて
その奥に潜む智慧を見たいと
しばらく炎に向かい合いました