刈り取りの終わった稲に
芽が顔を出していました
数日をおいて
その穭田(ひつじた)を訪れたら
芽が随分と伸びていました
役目を終えた稲には
手をかけてくれる人はもう
誰もいないのですが
それでも伸びる芽に
力強さを感じました
そんなものを珍しく
眺めていたのは自分ひとり
僕の他には夕日だけが
うち捨てられたような穭田に
寂れた赤い色を寄せていました
刈り取りの終わった稲に
芽が顔を出していました
数日をおいて
その穭田(ひつじた)を訪れたら
芽が随分と伸びていました
役目を終えた稲には
手をかけてくれる人はもう
誰もいないのですが
それでも伸びる芽に
力強さを感じました
そんなものを珍しく
眺めていたのは自分ひとり
僕の他には夕日だけが
うち捨てられたような穭田に
寂れた赤い色を寄せていました
「砂上に」
足元から 砂を
奪いさる波の群れ
僕を一本の棒に見立てて
棒倒しで遊んでいるみたいだ
(波は棒を倒したくて一生懸命だ)
不意に平行感覚を無くし
足元がおぼつかなくなる
よろめく足は 新しい波の標的
(さっきまで頭上にいた鴎が
斜めに飛んでいる)
僕は負けたのだ
波が白い泡をゴボゴボと吐き
無邪気に笑っている
(悪気はきっとないけれど)
その屈託のなさ 悪気のなさはたちが悪い
怒るに怒れなくて
いつからかこんなにも
不安におびえる弱い心を抱いている
(それだけの痛い思いを重ねたからね)
青い空に湧き上がる入道雲も
飾り物のようでよそよそしい
この風景に僕は
もっともっとよそよそしい
僕が立っていられる場所は
どこにあるのだろう
足元はいつでも砂のようにもろい
すべての足元は崩れてしまうのに
立っていられることは幻想
けれど確かに何かの上に
僕は立っているのだが
歯医者に行く途中
新築中の家の横を歩きました
以前は土台まで出来ていたのですが
もう家の骨組みも仕上がっていました
澄み渡る秋の日
作業をするとんかちの音も
空に高く響き
作業が順調に進んでいることを
伝えてくれます
家の完成を待つ主も
期待しながら待っているのでしょう
歯医者では今日は
どんな治療を受けるのだろうと
ちょっと憂鬱な気分でいたのですが
そのトンカチの楽しげな音に
少し気分が和らぎました