風のささやき 俳句のblog

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雪は子供たちのために 【詩】

2021年12月30日 | 

「雪は子供たちのために」

初めて雪に触れた子供たちが
歯をむきだしに笑った
冷たかった雪の驚き
小さな指の跡さえうつす
雪があまりにも脆かったから

一人はおずおずと手を伸ばし
一人は最初から雪をつかんで
いずれの手からも零れた白い雪

雪は子供たちのために降り積もる
一面を遊び場にかえて
転んでもいいように
白いクッションを敷いた

雪は子供たちのために空を満たす
白い羽のように軽く舞い
どの子へも分け隔てなく
冷たい恩恵を届けてくれる

子供たちはそうして
友達を思い出すのだ
雪合戦をする
雪だるまをつくる
足跡をつけて
雪の上を走り回る

大人たちは その頃
炬燵に温まり
降る雪にうんざりと心を閉ざす
雪の音は老人の
繰り返す呟きのように
退屈に憂鬱に聞こえてくるから

雪は子供たちのために
夜通し降り続いた
雪降る静けさに
子供たちは耳を澄ました
忍び込む冷たさに
布団を肩までかけなおして

初めて雪に触れた子供たちの頬に
うれしさが赤々と灯った
雪にすっかりと魅せられて

確かに子供たちを喜ばせるために
雪は地上へ舞い降りる


月明かり唯一便りに家々へサンタは空に大忙しか 【短歌】

2021年12月29日 | 短歌
クリスマスイブの日
子供たちのプレゼントを夜中にそっと
枕元におきました

まだまだ本心から
サンタさんを信じて
お願いをしている姿を見ると
可愛く思えます

そんな子供たちには
空を忙しくかけまわる
サンタさんの姿も見えるのでしょうか

月明かりの下で
それぞれの家を回るサンタさんを
いつまで信じていられるのかなと
そっと頭を撫でました

冬至なり葉は足元にカサリかな 【季語:冬至】

2021年12月25日 | 俳句:冬 時候
冬至の日
スーパーでは柚子風呂用に
柚子が目立つところに並んでいました

季節を感じられていいなと
手に取り眺めたのですが
どうせ子供たちと入るお風呂ですので
ゆっくりと柚子の香りを
楽しめそうにはなく諦めました

この時期
街路樹も丸裸のものが多く
枯葉も乾いてカサカサとしています

時々自分の足に踏まれる
不注意な枯葉がいるのですが
木から離れて大分たつのでしょう
乾いた音をして壊れてしまいます
こうして少しずつ
枯葉は姿を消していくのでしょう

枯葉のカサカサという音を聞いたら
お湯の温もりが恋しくなり
またお風呂のことを思っていました

雪の降った週末に 【詩】

2021年12月23日 | 短歌

「雪の降った週末に」

ちょっと 可愛げの無い表情の
ニンジンの唇の 雪だるまが
少し離れて 僕らを
怪訝そうに 眺めている
誰だろう こんな雪の日に
わざわざ やってくるなんて と

 ○

顔に触れた 子供の手の冷たさ
僕の頬に そのまま
その手の跡が 赤く残りそうだ

 ○

干し柿に 選ばれなかった柿の実は
枝にぶらさがり 一年の終わり
晒しものにされ
ますます雪に 赤らんで行く

 ○

雪囲いが 間に合わなかったと
笑って話す 隣人
寒いですねと 言葉を交わした後には
黙々と 体を使った作業が続く

 ○

ちらり と 眺める
屋根の上の 雪の厚み
まだまだ 雪下ろしまでには
時間が ありそうだと
ほっ と している

 ○

静けさの中を 歩いてみれば
雪が 隠し忘れた 大根の葉っぱ

 ○

陽射しが覗いたのに 舞い降りる雪
まだ プレリュードだよと
僕の髪に 吹聴している

 ○

威勢よく 温風吹き出す
石油 ストーブ
ちらり ちらりと 
燃えている炎 見え隠れする
頑張ってくれ お前だけが頼りだ

 ○

子供の体が 温かい
寝かしつける 振りをして
ぎゅっと暖を とっている

 ○

布団の中に 入っても寒い
肩の辺りで 冷たい獣
凍った息を 吐いている みたいだ


毎日の空の色合い違うこと感じて生きる我でありたい 【短歌】

2021年12月22日 | 短歌
代わり映えのしない毎日を
積み重ねているうちに
一年が終ってしまいます

その瞬間毎には
それなりに
真面目に過ごしているつもりなのですが
一年の終わりには
毎年後悔の念も湧いてきます

思い出したように眺める空は
その度ごとに色合いが違います

そんな空が自分の上に広がり
二度と無い色合いで
自分を迎えてくれること

それを感じ取りながら
毎日の中にも少しでも
新しい発見ができること

そんな毎日を
くる年には過ごせたらと思ってみます

冬日さす墓地の御霊のなお燃えて 【季語:冬日】

2021年12月18日 | 俳句:冬 時候
朝電車に乗っていたら
車窓から墓地が見えました

自分の目線の上にある
小高い丘のようになった場所に
作られた墓地でした

その墓地全体が冬の朝の陽射しを受けて
燃え立つように見えていました

普段は静けさを感じるばかりの墓地ですが
紅に彩られたその場所では
眠っていた命が呼び起こされて
動き始めようとしているかのように見え
とても不思議な光景に感じられました

僕は後ろに遠ざかってゆく
生気を帯びた墓地を目で追っていました

冬の日に 【詩】

2021年12月16日 | 

「冬の日に」

冬の日の午後の
ベンチの上に
そこだけが切り放された
空間のような
暖かな日溜まりができていて、
僕はその中に体を温め
葉を落とし尽くした木立の
きめの荒い肌を眺めていた。

執拗に続く
苦しみに煩う者には
死は一つの優しい慰めに思われるから
柔らかな光りを浴びながらこのまま
何も思わずに僕が
朽ち果てて行くことができるのならば
何も騒がない静けさのほとりに
安らかな気持ちで
眠り続けられるのならば、
けれどもその時に
僕の苦しんだ生は
誰にも知られず何処へ
ゆくのだろうか
赤い血潮を流しながら
空の一番深い所まで
昇ってゆくのだろうか。

生きている者達は彼らの時間の中で
死を迎えた人々を忘れ果ててゆくから
彼らが語り得るのは
彼らの記憶に残る
死者たちの面影だけだとしたら
生きている時に感じていた痛みなど
何処にもなかったのだろうと
だから
悲しむ思いは堪え忍ばれて
死を迎えればいいんだ
愛そうとするものを
損なってしまうような
罪深い心と伴に・・・・・


朽ち果てた枯葉の毛布暖かし今しばらくは寝よ虫よ地よ 【短歌】

2021年12月15日 | 短歌

子供がどこからか
朽ち果てた枯葉を持ってきました
もしかするとその下には
眠っていた虫がいたかも知れず
急に布団を剥ぎ取られたように
驚いていたかも知れません

春はまだまだ遠く
暖かな枯葉の布団の中でぬくぬくと
虫も大地も眠ればいいと
勝手なことを思っていました


底冷えす子に額つけ温かし 【季語:底冷え】

2021年12月11日 | 俳句:冬 時候
休日となった昨日は
随分と寒い一日でした

各地で今シーズン一番の
冷え込みになったとのこと

日中
外に買い物にでかけたのですが
帰ってくると手足も冷たくなっていました

子供たちと一緒に
昼寝をする時にもなかなか体が温まらずに
布団に入りながら子供を抱き寄せ
その横顔に額を当てて暖を取っていました

真夜中に 【詩】

2021年12月09日 | 

「真夜中に」

真夜中に 一人だけ全力で
湯気を立てている 加湿器のある部屋
僕の傍らに 眠っている子供の
何ともや 静かな吐息

その頬に触れてみれば 迷惑そうにする
その小さな脳裏には もう
たわいのない夢 浮かんだりもするのだろうか

その夢には 僕が
出てくるような 場面が
あるのだろうか あるのならば
それを 覗いてみたい気がしている

いつからか 守られた者から
守る者へと 立場を変えて
そのことに まだ
戸惑っている 僕の傍ら
確かに 横たわっている子供の
小さな 紅葉のような手

そこに 握られるべき未来を僕は
繋ぐことが できるのだろうか
僕の知るものは たくさんの迷い
それ故に 薄汚れてしまった
自信と 誇りとで

僕は もう一度
揺るぎの無いものを 胸に
取り戻すための 試みに
この身を 投じなければ
きっと いけない

確かに 疑うことなく 僕らを信じて
傍らに 静かに眠る
その子供を 守る者として

僕に 似ているところのある
その顔を 眺めながら
小さな手に 節ばった僕の人差し指を
そっと 握らせていた