風のささやき 俳句のblog

訪問ありがとうございます
オリジナルの俳句を中心にご紹介しています
詩や短歌も掲載しています

つる草をつまみのばして初夏の風 【季語:初夏の風】

2014年05月24日 | 俳句:夏 時候
いつも通る道で
柵にまとわりついているつる草が
気づかぬうちにとても長く伸びていました
柔らかな緑の新しい葉をいくつもつけて

それは、初夏の風が草の先を軽くつまんで
あっという間に引き伸ばした
そんな印象を与えるほどの成長ぶりでした

十字架の目にひりついて夏始 【季語:夏始】

2014年05月21日 | 俳句:夏 時候

とある朝の駅
電車を待つ列に並んだら
目に光るものが届きました

何だろうと顔を向けると
教会の屋根の十字架が
夏の陽射しを集めています

普段は見落としている十字架が
夏の光に力を与えられて明るみ

目をつぶっても
瞼の裏に焼き付いて
暗闇の中に赤々と点っていました


蟻仰山歩きにくくて大地かな 【季語:蟻】

2014年05月17日 | 俳句:夏 動物
とある団地の道を歩いていました
なにげなく次の一歩を進めようと
足を踏みおろそうとしたとき
足元には蟻が何匹も動いていて
一瞬足の下ろし場所に困ってしまいました

気づいてみるとあたりには
働き者の蟻が動き回っていました
しばらくそんな小さな蟻を
踏まないようにと爪先立ちで歩いていました

満月を撫でる愉快や若柳 【季語:若柳】

2014年05月10日 | 俳句:春 植物
夜一人で道を歩いていると
柔らかい若葉を一杯につけた柳の枝が
空に浮かぶ丸い月の面を
何度も何度も飽きることなく
撫ぜるような仕草を繰り返していました

それは柳の若葉が春から与えられた
月を輝かせるための楽しい仕事のようで
僕もしばらくその愉快な仕草を
暖かな春の雰囲気につつまれながら
眺めていました

ペダルふみ木々くぐる頃風光る 【季語:風光る】

2014年05月03日 | 俳句:春 天文
この前
若葉に茂る道を走る自転車を
印象深く眺めていました
それが緑のトンネルの中を
軽やかに走り抜けていく
不思議な乗り物のように見えたからです

どこか音も静かなその自転車には
きっと光る風が荷台に乗って
一生懸命に背中を押していたのだと
そんなふうにも思われました