風のささやき 俳句のblog

訪問ありがとうございます
オリジナルの俳句を中心にご紹介しています
詩や短歌も掲載しています

いつの間に、傷んだ記憶、微笑みに 包める人に、時は黄昏

2022年08月30日 | 短歌
その時には心を捉えて離さなかった痛みも
いつの間にか、そんなこともあったなと
微笑みさえももって見ることができたり

時間は優しい包帯のようでもありますね
ぐるぐると固く巻いていたはずの結び目も
時とともに解け、眺めると傷は
もう跡形もなかったりして

けれどそう思えるのも
きっと十分な年を経てからのこと
時として、人生が黄昏を迎えてからの
ことかも知れません

残暑かな日陰を好む人の群れ 【季語:残暑】

2022年08月27日 | 俳句:秋 時候
まだまだ昼間の陽射しは暑くて
普通に歩いているだけで
汗が出てきます

特にマスクをしているせいか
口の周りに汗がわいてきて
不愉快になり、息苦しさも覚えます
ついつい、日陰の通りを選んで歩きます

その陽射しを疎ましく思っているのは
僕だけではないようで
交差点では、ビルの日陰で待つ人たち

まだまだ日傘を持った人も
沢山みかけます

草原のひととき 【詩】

2022年08月25日 | 
「草原のひととき」

しっとりとした大気から
しぼり取る新鮮な露に顔を洗い
目覚めたての蕾を開く
ニッコウキスゲの黄色から

立ち上がるあなたの白い腕を
山影から顔を覗かせたばかりの
夏の陽射しの長い指がつかむ

草原の風も動き始めて
あなたの髪と朝日とを紡ぐ
まるで金色の贅沢な糸紡ぎ

山あいの街は
昨日の疲れを残したままだ
重たい眠りから
目覚める気配さえない

心に音を立てる
草原をゆく風
あなたへの愛しさ
それはとても心地よく

胸一杯の朝の風に
膨らんで僕は
愛しさもそのままに
大きく膨らんでいく

花に囲まれて
僕を見るあなた
朝の光と風にじゃれつかれ
無邪気に笑う顔には

こぼれ落ちる陽射し全てを
花びらにかえて
降らせたかった

天にある野原から
籠一杯に天使が
あなたを祝福するために
摘んだ光りの花びらを

空を流れる雲はいくつも
手に届きそうな高さを
千切れ千切れに
姿をかえながら

言葉なくて僕は
ただまつげをさわる
朝日と風とに目を細めている

あなたへの愛おしさで一杯で
けれど 愛おしさに
透き通れないことも感じて

失って、一部だと知る、真っ直ぐに 歩けないほど、君の面影 【短歌】

2022年08月23日 | 短歌
いつも自分の近くにいてくれることが
当たり前だと思っている人が
いなくなった時のダメージは想像以上に大きくて
自分の体の一部分だったのだなと
改めてその大きさを実感させられたりもします

その人の面影を思い浮かべると
足元も覚束なくなるようで
自分の体のバランスが崩れてしまったように感じます

月光が銀ちりばめし夏の波 【季語:夏の波】

2022年08月20日 | 俳句:夏 地理
先日、詩を書いていて
波音をイメージしたくて
動画を眺めていました

南国の方の海でしょうか
夕映えの海がやがて夜の海に変わり
月明かりが穏やかな波を照らしていました

昔、月の下で
海に入っていたときの風景が浮かんできました
月明かりがこんなにも明るいのかと
少し驚いたのですが

波は月光をのせて輝くようでした

レクイエム 【詩】

2022年08月18日 | 

「レクイエム」

あなたは
どのあたりの風ですか
木の高いところ
街を流れる川の面
蝶のいる花壇

生きた証を残したくて
あくせくとする生から
解き放たれて
知り合いの風と
懐かしく話をする
ほっとして

風鈴を何度も鳴らし
風は 吹きすぎ
楽しんでいるよとの
合図だったのかも知れない


油蝉、逝って仰向け、空も見ず 生は夢に似、僕らも幻? 【短歌】

2022年08月16日 | 短歌
道にはアブラゼミが
仰向けになって落ちていました

もう足に力が入らないようで
きっと自由に羽ばたいていた空も
見えないのでしょうね

あっという間の蝉の生ですが
僕らの生もそんなに違わないものなのではと
思ったりもします

自分自身の存在が
秋風に怪しく感じられます

水浴びて犬も滴に夏の浜 【季語:夏の浜】

2022年08月13日 | 俳句:夏 地理
毛並みの綺麗な大型の犬が
飼い主と一緒に
波打ち際を歩いていました

暑かったのでしょうか
その犬は恐る恐るでしたが
海に入り体をつけました

少しは涼しくなったのでしょうか

やがて海から上がると
濡れた毛から
滴を垂らしながらまた
散歩を続けました

夏の陽射しが容赦なく照り付けて
人も犬も波打ち際が
恋しく思えるようです

海 【詩】

2022年08月11日 | 
「海」

二枚貝のように舌をのばし
波は軽やかに僕のつま先を舐める
視線の先の海岸線には
押し寄せる 夕日を乗せた波
(岩場のすきま満ちる波は寂しく)

心地よい潮風は耳に
波は海の鼓動を運び
僕ははるかなる心臓と
一つになって脈打っている

砂浜に貝をひろう小さな姉妹
もろくも砂の城は崩れ去り
さらさらとした白い砂浜に帰る
(そんなに小さな巻き貝では
 耳にあててもきっと
 潮騒は聞こえてはこない)

釣り人は細い糸を垂らし
恐る恐る 海の懐に探りを入れる
幸運にも反り返る
魚の手応えを引き上げて

夕日が 溶け込んでいく海が
無尽蔵に 運んでくるものを
拒まずに
例えば打ち上げられた
海草 やしの実 ビールの空き缶
浜辺に光るガラスの破片
(あれは僕の心の刺)

それすらも飲み込み
波は時間をかけて
ゆっくりと小さく削り
おきあみのように
魚の上に投げ降らす
(魚はやがて食卓に並ぶ)

すべては揺りかえす波に
飲み込まれて行くものとして
ふきならす法螺貝の
音色のような雲は
かすかに遠く
夕焼けの空にけぶっている

もう僕は帰るだろう
流木を拾い「僕とは」と
砂の上にささやかな抵抗の
傷跡を残して

あてもなく飛ぶかもめの
不安げな鳴き声を
自分のものにして
僕の帰る所
輝く星も語りかけない
寂しい一人寝のねぐらに

広がった道なり通る人も増え風も大河の趣に吹く 【短歌】

2022年08月09日 | 短歌
会社の近くでしばらく工事をやっていたのですが
それがようやく完成しました

新しい高いビルが建ち
道も拡張されて見通しも良くなりました

お昼時にその道を歩いたのですが
以前の道に比べると
人の通りも多くなったように思えました

そうして、風も道幅に合わせるかのように
威勢よく吹いて
まるで大きな川の流れの中を
歩いているような錯覚を覚えました

日差しが強かったので
顔を撫でて行く風は余計に気分よく感じられました