風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

ドブ川も晴れ晴れしくあり犬フグリ 【季語:犬ふぐり】

2021年02月27日 | 俳句:春 植物
電車に乗る駅の途中に通る川
排水を集めて町の中を
あまり綺麗とはいえない色合いで
流れていきます

臭いがひどいといったことはないので
そこまでは汚れてはいないのでしょうが
ドブ川という言葉を思い浮かべてしまいます

そんな川でも
春になると陽射しにあふれ
晴れ晴れとした様子に見えます

周りには緑も萌えていて
立ち止まって上から眺めると
犬フグリが群れて咲き
川を一層きらびやかに
仕立てていました

牛 【詩】

2021年02月25日 | 

「牛」

一人で
干し草の山に体を投げ出して
夢を見ていた
僕はその中に深く沈んで
涙を流したまま
死んでしまおうと思っていた
泥にまみれた牛が
尻尾でうるさそうに
蝿を追いながら
僕の近くをのっそりのっそりと通り
そうして懐かしそうな目つきで
僕のほうを眺めていた
その牛の足下には
小さな花が咲いていた


枯れ木見て羨ましくなるさっぱりと出直し萌黄に芽吹きたいから 【短歌】

2021年02月24日 | 短歌
そろそろ一斉に芽吹きそうな
枯れ木を眺めながら
羨ましく思える時があります

一年毎にその葉を落としつくして
また新しい春に新しく芽吹くことのできる
その繰り返しがうらやましいからです

自分も今までのすべてを
一度落としつくして
また新しくやり直し
芽吹くことができたら
どんなにかいいだろうと思います

そんなことは叶わないと
知っているのですが
年を重ねて行くと
その思いは強くなるものがあります

うららけし何故今日に逝く人のあり 【季語:うらら】

2021年02月20日 | 俳句:春 時候
久しぶりに暖かさを感じる日
春を肌で実感できました

そんな心地よさを感じながら歩いていると
それとは知らず葬儀場の前を横切りました

今日も葬儀が行われるのでしょう
在りし日の故人の名前が書いてありました

こんなにうららかな日を楽しまずに
あの世へ旅立つなんてと
抗えない死の力を思わされました

思えば80年生きたとて
迎えられる春はたったの80回

そう考えると
人の生は短いものだなと感じられ
この春を十分に生きなければと
思わされました

かまどうま 【詩】

2021年02月18日 | 

「かまどうま」

かまどうまという
海老のような
いやに背筋の曲がった虫がいる
田舎の古い台所などにいて
寒い夜にはぎすぎすとした
何か分からぬ言葉で会話をしている
それでいて特に不平もこぼさず
静かに暮らして死んでゆく


虫歯疼くように君に会いたくて落ち着き失くしてる春浅し 【短歌】

2021年02月17日 | 短歌
心の奥底で虫歯が痛むように
消えない疼きが僕を苦しめていました

その人の顔が思い出されて
そうして何故か無性に会いたくなり
いてもたってもいられません

我ながら自分の落ち着きの無さが
可笑しくなりながらも
その疼きを止める術を知らず

急に立ってみたり
座ったりを繰り返していた
浅い春の日のことでした

春遅し布団の暖に子をくべる 【季語:春遅し】

2021年02月13日 | 俳句:春 時候
仙台で雪がちらついた日
なかなか春という感慨はもてず

家の中にいてもどこか底冷えがして
暖房をつけるのですが
つい何枚も服を着こんでしまいます

もともと眠ることが好きな自分
ますます布団の中が恋しくなり
時間があれば
その中でごろごろとします

時折は遊びまわる子供たちを
無理やりその布団の中に連れ込み
暖をとってみたりします

もちろん嫌がって泣き出す子供たち
もう少し口がきけたなら
きっと悪口を言われているだろうなと思います

引越しや床拭く毎に思い湧き離れる部屋にありがとうを言う 【短歌】

2021年02月10日 | 短歌
以前、引越しをした時のこと荷物が片付いた部屋を掃除しました
普段あまり掃除をしないせいもあるのですが
あちらこちらが埃だらけ
今まで怠けていた謝罪もこめて
丁寧に掃除をしました

床を雑巾がけしていたら
子供の食べ残しの跡がまだ残っていて
離乳食を食べていたころのことを思い出しました

壁に目をやると壁にも
離乳食をなすりつけた跡

短い間だったのですが
この部屋で子供を育ててもらったのだなと思うと
誰にとは無しにありがとうと呟いていました

陽の中で思い巡らす迷い雪 【季語:雪】

2021年02月06日 | 俳句:冬 天文
その日はカーテンの裾から
太陽の日差しがこぼれていました

傘はいらないなと思い外に出ると
何やら虫のように白いものが
空にフワフワと浮いていました

良く見るとそれは雪でした
お天気雨の雨が雪となった状態です

いずれにしろ傘は必要はなさそうでしたので
そのまま外へ出て
空からの雪を眺めながら歩いたのですが

陽の中を落ちてくる雪は
その明るさに戸惑いを感じ
考え事をするかのように
風に舞って横に滑ったり
上に戻ったりと
なかなか地上には届きません

時折は僕の肩に落ちる
害の少ない雪を乗っけたまま
僕はいつもの道を急ぎました