風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

傷口 【詩】

2021年09月30日 | 

「傷口」

笹の葉の縁で指の先を切った
鋭い切っ先の痛み
真一文字に滲む赤い血

そんな痛みを
人の言葉に感じてしまう
僕の心は見えない傷で一杯だ
傷は傷の上に傷を重ね

癒える時間を知らず
肌に爽やかな
秋の入り口の風にさえしみて

押し殺した呻きは
毎日のもの

僕が卑屈そうに笑うだろう
それは大抵がやせ我慢の目くらましで
人の世に僕がある限りの
僕の仕来りだ

いつの間にか身についてしまった
卑屈な渡世術
僕が身を守るための保身術

傷口に強く捻じ込んでくる言葉に
切り付けられながら
それを感じまいと鈍感を装いながら
僕はそれでも生きている

僕に押し殺された
たくさんの痛みが
夜な夜な膨れ上がって
僕が破裂しそうになることを
誰にも気づかれないままに

 ○

そうして僕はそれ以上に
言葉を発するのだ
自分を切りつける言葉以上の言葉を
いつの間にか相手の喉元に向けて

僕は自分の言葉の行き先を知らない
いつからか僕の言葉が凶器に変わって
人の胸にナイフのように
刺さっているとしたならば

僕は怖い

だから僕は言葉を押し殺して行くんだ
じっと黙っている僕は木偶の坊に見えるだろう
けれど凶器を振り回す狂者よりは
木偶の坊がよっぽどにましだと

無理に飲み込んだ言葉が
僕の胸にうず高く積みあがり
僕を押しつぶして行くんだ

 ○

ばら撒かれたガラスの破片のような
チクチクとする言葉に囲まれている僕が
途方に暮れてしまっていること
おかしなことだろうか


カメラでは記憶しきれぬ君の生取りこぼされた笑顔を惜しむ 【短歌】

2021年09月29日 | 短歌
子供の小さな頃の写真を
とっておきたいと
機会があれば
スマホのカメラを向けるのですが
せわしなく動き回ったり
わざと顔を隠してみたり
なかなかいい写真が取れません

そうかと思うと
スマホをしまった瞬間に
面白いことをして
満面の笑顔を見せたり

その間の悪さに
しまったと思うこともあります

すべての瞬間を残しておくことはできなので
仕方がないことなのですが
時折は取りこぼされた笑顔が惜しくなります

寝た子供秋のけはいとおぶりけり【季語:秋のけはい】

2021年09月25日 | 俳句:秋 時候

子供たちを
デパートの屋上の
プレイランドに連れて行きました

大人から見ると
他愛の無い乗り物や
ゲームが置いてあるだけなのですが
子供には魅力的に映るようで
しつこく行きたいとせがまれていました

幸い天気もよく出かけたのですが
色々な遊具があり目移りをするようで
あちらこちらを物色しては
走り回っていました

そのまま外で昼食をとり
家路へとついたのですが
疲れた子供は熟睡し
秋の気配と一緒におぶりました

(Haiku)
Child asleep on back-
Autumn's breath, a double weight,
Peaceful evening shared.


ブランコ 【詩】

2021年09月23日 | 

「ブランコ」

 秋の風を切って
 ブランコが揺れる

小さな女の子が地面を
思い切りけると
その分だけブランコは
地面から遠くへと離陸する

 その離陸
 あと少しのところで
 繋ぎとめている錆びのある鎖
 張り切ってミシミシと音を立て

地面から自由に飛翔する体
女の子の気持ちが高ぶり
混じりけのない楽しさに
笑いがこぼれる口元

 ブランコはただ黙って
 女の子の足もとを支えている
 規則正しい円の動きをなぞりながら

目まぐるしくて落ちつかない
周りの風景の変化も
女の子には楽しいのだろう

 枯葉が急ぎ
 落ちては集まる
 万が一でも女の子が
 地面に落ちても
 痛くは無いよう
 
落ちては上り
上っては落ちる
終わりの無い運動の中で

女の子は学んでいるのかも知れない
これから何度でも訪れる
人の生のふり幅
そのめまぐるしい変化
時としては苦しさに満ちた

それでも足元を支え続けてくれる
確かな何かの存在を

 やがては夕暮れ
 友達と手をつなぎ
 帰って行く女の子

その確かな存在は
その友達かも知れない
あるいは家に待っているお母さん
今 空にある月
昇らせた何かかも知れない


首長いキリンは空に近いけど足もとの花君たちのものだ 【短歌】

2021年09月22日 | 短歌
子供たちと動物園に行った時のこと
象は何故か大きくて怖いらしいのですが

キリンは可愛いらしく
しばらくその前で高い木の葉を
食べる様子を眺めていました

その夜のこと
そんなキリンを題材に
夜のお話をしました

キリンは首が長くて
空がとても近くに見えていいね

けれど君たち(子供たち)には
キリンさんには見えにくい
足もとの花が良く見えていいねと
そんな内容のいい加減な話だったのですが

一人の子供からは「面白い」との
おほめの言葉をもらいました

もっと自分の想像力を働かせて
子どもにうまく伝わる話を
考えることができたらいいなと思います

茶請けには庭に咲きおる曼珠沙華 【季語:曼殊沙華】

2021年09月18日 | 俳句:秋 植物
この時分
真っ赤な曼珠沙華が
ところどころで咲いています

何回見てもあの形は不思議です
ついつい目を惹かれてしまいます

この前もとある家にでかけて
お茶をいただいたのですが
庭先に咲いていた曼珠沙華に目が行き
それを眺めながらお茶を飲んでいました

お茶請けにお菓子を出していただいたのですが
それを口にすることはなく

曼珠沙華を目で楽しみながら
茶請けの代わりにしていました

九月 【詩】

2021年09月16日 | 

「九月」

僕らの夏が飛び去ってゆく
時間という羽を伸ばして
僕らにはそんな羽ばたきを
止めるすべもなく
ただ一人一人
夏の終わりの海の
遠い空に
去ってゆく風景達を
見送っていた
僕らの足下をひたす
灰色の波を
単調に感じ始めながら


髪切りて生き続けるとすこの胸や憂い失せずは白雲のごとし 【短歌】

2021年09月15日 | 短歌
久しぶりに髪を切りにでかけました
引き続き世の中に
あらんとするための身支度です

少しは気分が変わるかなと思っていたのですが
相も変わらず取り留めのない憂いが
胸に浮かんでは消えて行きます

まるで空に浮かぶ白い雲のように
どこからか湧いてくる憂いは
人の定めなのでしょうか

今日もまた溜息をつきながらも
頑張ろうと一人つぶやいてみます

片足に風しみないか壁の虫 【季語:虫】

2021年09月11日 | 俳句:秋 動物
玄関の横の白い壁に
緑色のものが張り付いていました

何かと思って眺めると
可愛らしい虫でした
それも片足が取れています

僕の家はマンションの10階
どうしてこんな場所に片足の状態で
へばりついていたのでしょう

その失われた足には
風がしみたりはしないのかと
しばらく動かない虫の様子を
眺めていました