風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

待つ風に身は縮むなり寒の闇 【季語:寒の闇】

2022年01月29日 | 俳句:冬 時候

年も明けてから陽射しが
少しずつ強くなってきていることを
肌で感じられるようになってきましたが

まだまだ風は冷たく
朝夕はコートのボタンもしっかりと止めて
俯き加減に道を歩いています

その夜も一日の仕事を終えて表に出ると
待ち構えていたように風が襲いかかり
身震いを感じるような冷たさに
まだ冬であることを実感しました


影 【詩】

2022年01月27日 | 

「影」

# 1

地面の底から湧く
不吉な染みの様に
人々の背中にはりつき
離れない

雑踏の中では 逃げ場をなくし
影と影とが入り乱れ
人の形をなくし 奇妙な姿となって

手や足を 何本もはやし
もはや誰とも分からない首を
沢山 並べて
寂しい昆虫の 触手のように
落ち着きなく 揺れている


# 2

影は入り乱れかき回される脳に
浮かぶ考えはいつも船酔い
思い定まらず気分が悪くて

それは影から影へひろがり
都会の重い気分となって
寝苦しい悪夢へ変わる

起きた時の自分は
表情のない黒い影のようだった

僕は乗っ取られる予感でいる
何も感じないままに
黒い影に心を奪われて


うなずけぬ暮らしにしたり顔をして日々に打ち消す胸の軋みよ 【短歌】

2022年01月26日 | 俳句:春 時候

毎日の暮らしの中では
心からうなづけないことも多く
けれど、分かったような顔をする僕がいます

そんなうなづけないことは
消化不良を起こしたまま胸の中できしむのですが
したり顔をしようと
その軋みには耳をふさいでしまいます

やがて、そんな軋みが耳に届かなくなるときに
僕は一人前になるのかなと
自虐的なことを考えたりします


雪の朝赤き車の誇らしげ 【季語:雪】

2022年01月22日 | 俳句:冬 天文

朝から雪がちらついた日のこと

その日は歯医者の予約を入れていたので
セーターやらをたくさん着こんで
家を出ました

ドアの外に出ると
外気が肌に少し痛く感じられます

とある交差点で立ち止まると
雪で白くなった景色の中
目の前を一台の赤い車が横切りました

急に飛び込んできた
雪と鮮やかなコントラストをなすその色は
眠気を覚ますような新鮮な感じで

その車自身も
今日の主役は自分だと言うように
誇らしげに雪を押しのけ横切っていきました


あなたへ【詩】

2022年01月20日 | 

「あなたへ」

# 1

僕の詩を
あなたの胸の片隅に飾らせてください
吐露することのできない胸の内深く
せめぎあう世界に身をさらしては
傷つき取り出してくる言葉から
僕の魂を感じとって
あなたの胸の中に
抱きすくめてください


# 2

悲しみにとらわれてあなたが
一人もの思いに沈む日には僕の詩を
あなたの 静かな伴侶にしてください
(僕の魂のかなでる調べを
 そこに刻みつけようと思うのです)
あなたの胸の祭壇に
貧しい言葉ですが一心に
熱い祈りを捧げていたいのです

 

# 3

星も瞬かない夜の底
誰にも知られない痛みに
狂おしく悶える
そんな孤独な魂にこそ
詩は震えます

昼間は
騒がしい人たちに踏まれ
足跡だらけになっていた言葉が
月の光の静けさに洗われ
生命を新しく取り戻す時に
あなたへと流れ
あなたへ触れようとする調べを
あなたの心で噛み砕い下さい


擦り切れて心はぼろに穴も開くけれど誰をも照らす朝の陽 【短歌】

2022年01月19日 | 短歌

毎日を過ごしているうちに
少しずつ使い古される心は
どこかボロきれのように汚れ
穴さえも開いています

けれどそんな心さえも励ますように
朝の陽射しが
新しい一日の訪れを教えてくれます
きっと誰にでも同じ眩しさで

それが目覚めたくもない心には
時として残酷に
思えるときもあるのですが


時止める術を見せてや夜半の雪 【季語:雪】

2022年01月15日 | 俳句:冬 天文

雪の降る秋田で過ごした時のこと

ほぼ毎日雪が降り
あたり一面が銀色の雪景色
子供たちは大喜びでしたが
外に出ると直ぐに寒いと言って
家の中に入って来ました

都会の子供だなと
ちょっとそのひ弱さが
心配になりました

もっとも風が強く雪と混ざると
大人の自分でも逃げたくなったので
仕方がないのでしょうが

その夜のことでした
寒さに目覚めトイレにでかける途中
窓の外を眺めると
オレンジの街灯の下に
静かに降り積もる雪

その風景は昔から続き
これからもずっと同じであるようで
まるで時間が止まっているように見えました


僕はここにいるよ【詩】

2022年01月13日 | 

「僕はここにいるよ」

# 気づいて

僕はここにいるよ
君に気づいてもらおうと
君の力になるために

僕はここにいるよ
それに気づいてくれたなら
君はきっと一人ではないから

# 花

僕はここにいるよ
君の足元で 静かに風に揺られているよ
君に見てもらおうと 真っ白な花を咲かせたんだ

# 風

僕はここにいるよ
難しい顔をした君の 入り組んだ気持ちを解きほぐそうと
君の髪の毛に触り そよそよと揺らしているんだ

# 星

僕はここにいるよ
眠れないでいる 君のため息が耳から離れず
空の奥から君の部屋を 瞬き覗いているんだ

# 鳥

僕はここにいるよ
君の目が晴れ晴れとする 青い空に注がれるように
鳴きながら 空の奥へと羽ばたいていくんだ

# 蜜柑

僕はここにいるよ
君の手に温もりを残したくて 陽射しを一杯に浴びて
太陽のような こんな色に染まったんだ

# 玉蜀黍

僕はここにいるよ
君が僕の背の高さ 追い越そうと希望を持つように
真っすぐに 高く高く伸びて行くんだ

# 雨

僕はここにいるよ
物思いに沈む 君の耳を楽しませようと
君の家の屋根や窓を 七色の音階で叩いているんだ

# 虹

僕はここにいるよ
この世界が 綺麗な色で満たされていること
君に見せたくて 雨上がりの空を駆けていくんだ


一心にペダル回してあかね空惜しくも夕日かなり速くて 【短歌】

2022年01月12日 | 短歌

落ちていく夕日に
追いつこうとするように
子供たちが一生懸命に
ペダルを踏んで追いかけていました

西日さえも遊び相手にして
真剣になれる
子供たちの一心さが
とてもうらやましく思えました

僕も子供の頃に
追いつけない夕日に向かって
自転車を走らせた
土手の上の風景を思い出しました


人込みに香水を嗅ぐ初仕事 【季語:初仕事】

2022年01月08日 | 俳句:冬 人事

初仕事の日
少し重い気分で電車に乗りました

だらけきった寝正月
頭もまだしゃっきりとせず
眠気が頭の真ん中に居座るようでした

目的の駅で
たくさんの人と一緒に
電車を降りて歩き始めると
とても甘い香りが鼻につきました
香水の香りです

急に漂ってきた甘さは
気付け薬としては十分でした
億劫に思える日々の生活に
また戻るのだと実感しました