お昼どき
食事をとるために外に出たのですが
雲のない空にまぶしい太陽が居座り
強い日差しは肌を刺すよう
準備のいい人はもう
日傘をさしていました
すっかりと茂った木陰
白い夏服の女性は
強い日差しを避けようと
木陰から木陰へと移動していました
涼しげな白い服が木陰には映え
一服の涼しさを感じました
(Haiku)
From shade to shade, white,
Dress flits through towering trees—
Dodging summer's glare.
お昼どき
食事をとるために外に出たのですが
雲のない空にまぶしい太陽が居座り
強い日差しは肌を刺すよう
準備のいい人はもう
日傘をさしていました
すっかりと茂った木陰
白い夏服の女性は
強い日差しを避けようと
木陰から木陰へと移動していました
涼しげな白い服が木陰には映え
一服の涼しさを感じました
(Haiku)
From shade to shade, white,
Dress flits through towering trees—
Dodging summer's glare.
「もう僕は何も」
もう僕は 何も耳にしたくはなかった
新しいこと 何一つ知りたくはなかった
その度ごとに体の芯から
ドギマギとしてしまうから
僕の心臓が新しい出来事に
どれだけ青白く波打って
恐怖に震えるのか
まるで陸に捨てられた小魚の
最後の痙攣のようにピクピクとして
僕は緑の翡翠に閉じ込められた
小さな泡粒のように
いつまでも目覚めることの無い
カンブリア紀の夢まどろんでいたかった
僕をそこから呼び起こすのは誰
どうしてそんな暴力で僕を苦しめるの
僕の奥歯がきりきりと軋むのは
万力のような力が
僕の顔を押しつぶそうとするから
僕は林檎ではない
僕が真っ赤になって押しつぶされたとして
搾り出されるのは断末魔の絶叫と
真っ赤な血しぶきだけだ
したり顔をして僕を諭そうとする
青白い肌をしたものが確かにうなずく
気味の悪い歯並びの
白い馬のような口が笑っている
血走った玉子の黄身のような目が
僕の恐怖を見透かすようにすり寄ってくる
僕はもう繰り返す
昼と夜との鬩ぎ合いの合間
僕を静かには放っておかない
周りのすべてに
すっかりとすり減らされてしまい
細り行く神経に小さな出来事の一つ一つさえ
ますます過敏に感じとっている
熱の下がった上の子供ですが 外に出ることは差し控えて しばらく家に閉じこもった生活が続きました もともと外で遊ぶのが好きな子供たち 家での遊びは限定されており ただでさえ体力を持て余して ソファーからジャンプを始めました 止めろと怒るのですが 余計に調子付いて 交互にソファーから飛び降りてきます 下には布団も敷いてあるのですが それでもうるさいので ジャンプを座って受け止めていたのですが それにも限界があり 最後は半分脅して 止めさせました 恐ろしい落下部隊です
インフルエンザの注射を打ちに行き 大泣きだった下の子供 体にウイルスを入れて 免疫をつけるというのは 体の不思議な メカニズムだなと思ってしまいます 体のみならず 人は生きて行くうえでは 否が応でも 少しの毒は必要ということでしょうか 泣いている子供が 注射を怖がっているというよりも 無理やりウイルスを入れられることに 抵抗をして泣いているようで 毒を必要とする 人の生の入り口に立つ子を 切なく思い見ていました
「夜の目」
夜は幾千もの
目を持っている
その沢山の目の前では
心の深みまで晒される
暗がりは裸でいる恥ずかしさ
隠してくれる
素直になればいいと
見通す夜の目
不安や後悔に混ざって
砂金のように輝く
愛してくれた人の面影
出て来る言葉は素直で
膨らんでいく
今さらながらのありがとう
人を大切に思うこと
心を砕くこと
それは誰かの心に
いつの間に忍び込んでいる
僕も誰かの砂金になって
誰かの心に
沈み込むことがあるのかしら
いつの日にか
誰かを愛しく思って
胸が波打つ
闇も波打ち
沢山の目はやがて
温かな毛布のように
僕を包んでいた
目を閉じて 静かにしていると 胸の内から草笛のような か細い音色が聞こえてくる時があります まるで不安一杯の少年が すすり泣いているような そんな悲しげな音色で僕を呼ぶもの それはいつしか僕が置き忘れてきた 思いや気持ちでしょうか 生きることに精一杯になると 思わず忘れてしまう 胸の中の音色に 時折は耳を傾けなければと思います
友人と山間の酒蔵を訪ねました
広い中庭で
日本酒を買って試飲ができるので
それが目的です
沢山の人で賑わっていたのですが
タイミング良く席が空いて座れました
早速、小さな盃とお酒
それから簡単なおつまみを買って
酒を酌み交わしました
頭の上には若葉が茂り
程よい眩しさの木陰
近くには大きな川が流れ
涼しい風が吹きます
カヌーの練習もしています
手にした盃の面には
若葉の柔らかな緑が映えて
若々しい味わいを添えてくれるよう
ひといきで飲み干すと
初夏の賑わいが
口一杯に広がるようでした
(Haiku)
Empty my sakazuki,
Green leaves reflected within,
Taste of early summer.