風のささやき 俳句のblog

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赤子抱き膨らみきった冬着かな 【季語:冬着】

2016年11月26日 | 俳句:冬 人事
僕の目の前を
少し年をとられた女性が歩いていました
ゆっくりとしたその歩調に
僕はさっさと横を通り過ぎようとしたのですが

その女性の白い冬着が
胸のところで随分と膨らんでいます

何だろうと思い
思わず覗き込むと
そこには小さな赤ん坊の姿

きっと寒くないようにと
冬着の中に収めていたのでしょう
その心地よさに赤ん坊は少し眠気眼をしていました

その女性の歩みが
ゆっくりだったわけを了解していた
冬の午後でした

冬めきて喉の痛みに起きる朝 【季語:冬めきて】

2016年11月19日 | 俳句:春 時候
その日の朝は喉の奥が痛い不快感を感じて
いつもよりも早い時間に目が覚めました

布団の中でどこか寒気を感じ
風邪でも引いたのかなと
頭を触って熱がないかも確認してみました

特に異常もないようなので
いつものように準備を整え外に出ると
暖かい日が続いた昨日までとはうって違って
風が肌にひりひりとするようです

これでは風邪気味にもなるなと一人納得し
今日の夜からは厚めの布団を出そうと
思っていました

多分なり恵みの銀杏黄金の葉 【季語:銀杏】

2016年11月12日 | 俳句:秋 植物
街路樹の銀杏が見事な色に染まっていました

それが冬の柔らかな
午後の陽射しを受けて黄金色に輝き
風が吹くたびにキラキラとして見えました

暖かな小春日和
僕はその下を歩いていたのですが
街路樹は黄金色の葉を雨のように降らせます

何の躊躇も無く惜しげもなく
それは冬の午後に銀杏が与えてくれた恵み
何もしていない僕に
何故こんな風に銀杏は良くしてくれるのだろうと
思わず問いかけている僕がいました

秋風に散るとき探る一葉ずつ 【季語:秋風】

2016年11月05日 | 俳句:春 時候
電車から窓の外を見ていたら
街路樹が随分と
赤く色づいているのが見えました

もう少しするとすべての
葉は落ち尽くしてしまうのでしょう
その寂しい景色を思い浮かべたら
気がめいる感じを覚えました

しかしよく見ると
街路樹の葉もすべてが同じように赤く
色づいているわけではありません

一葉一葉ごとに微妙に色合いを変えています
きっと風や陽射しの
当たる位置によって異なるのでしょう

それがまるで
自分の散り行く時を知り
葉の色でそれを表しているように思えて

落ち葉さえも散るときは一人と
寂しい思いが身にしみました