子供と電車に乗って
車窓を眺めていました
すると墓地の横になにやら
綺麗な色合いが見えて
最初は紅葉かと思ったのですが
よくる見ると熟れた柿でした
誰が植えたのかは分からないのですが
なんとなく、故人への手向けに
柿を植えたのではと勝手な想像をして
その人の優しい気持ちを思ったりしていました
子供はそんな風景には関心も寄せず
年を重ねる毎に、見えてくる風景もありますね
子供と電車に乗って
車窓を眺めていました
すると墓地の横になにやら
綺麗な色合いが見えて
最初は紅葉かと思ったのですが
よくる見ると熟れた柿でした
誰が植えたのかは分からないのですが
なんとなく、故人への手向けに
柿を植えたのではと勝手な想像をして
その人の優しい気持ちを思ったりしていました
子供はそんな風景には関心も寄せず
年を重ねる毎に、見えてくる風景もありますね
会社帰りのこと
天気予報が見事に当たり
強い雨が降っていました
折りたたみの置き傘を開いたのですが
雨脚は予想以上に強く
駅まで歩くとズボンがびっしょりと濡れそうです
けれど予報では一時的な雨ではないので
仕方が無く雨の中を歩きだしました
すると鼻には予想をしていなかった
金木犀の微かな香り
こんな雨の中でも香るのだと
その香りの強さに少し驚くとともに
きっとこの雨で散ってもう
これが最後の香りだと
僕に伝えるために匂って来たのだと
そう確信めいたものを感じていました
夜の街灯のない暗い道を歩いていました
曇り空だったので月明かりもなく
光がわずかな場所では視覚は随分と役にたたない物ですね
僕は何となく不気味な感じを覚えながら歩を進めました
するとそこに金木犀の甘い香りが漂ってきました
その香りがどこから流れてくるのかが
まるで一筋の道をたどるようにわかります
視覚が頼りなくなる場所では
嗅覚がこんなに頼りになるのかと
ちょっと驚いたほどだったのですが
香りを辿っていくと
確かにオレンジの花を咲かせた
金木犀に辿り着くことができました
それは暗闇で迷っている僕を
導くために香りを届けてくれたようでした
銀杏の街路樹が続く道を
子供と一緒に歩きました
空が淡い青色に澄んで
それを背景にして黄色い落葉が
風が吹くたびに空を舞います
美しい一枚の絵画を見ているようで
心が静かになります
沢山の人が歩いていたのですが
その姿もまるで背景の一つのように言葉もなくて
僕は一つ呼吸を吸って
胸の内が鎮まることを覚えました
すっと自分の中から何もなくなって
ただ秋の余韻に呼応するような僕でした
今年は、金木犀の香りを楽しむ機会が
あまり多くなかった気がします
ときおり、金木犀の甘い香りに出会うと
その度に不思議と
心も柔らく感じられて
大切な人をふんわりと包む金木犀の香り
その幸せがいつまでも続くようにと
その香りに会うと思います