溜まっていた洗い物を
ようやく干し終わりました
洗い物の重さに
物干し竿が
少しゆがんでいたぐらいです
昼間の間に取り込もうと思っていたのですが
風が冷たいせいか
なかなか乾きません
天気予報を見たら
雨が降ることもなさそうなので
乾くまでそのままにしておこうと思いました
夕方
鮮やかな夕日が空を染めました
ベランダの洗い物もその色に染まり
まるで燃え立っているように見え
僕は夕日が落ちて行くまで
空を眺めていました
「熱病」
寒々しい静かな夜だ
死にかけた虫のように
心が激しく痙攣をはじめる
慢性的な病気のように
またやってくる予告もなく
頭が朦朧とする
裸電球が目に点滅する
しどろもどろの制御できない恨み言が
口からこぼれる
ただでさえあやふやな
自分の境界が
先端から焦げ始めてきな臭い
どうしようもなく
苦い草の汁のような不安が
心に沁み込んでくる
せめて鼓動だけは守る
不規則な音の上に手を重ね
海老のような体で布団に潜り込む
誰にも見られてはいけない
聞こえる救急車のサイレンは
卒倒する僕を連れて行こうと
家のまわりをぐるぐると
走っているのに違いない
茹でたての卵のように
熱を帯びた頭だ
生きていることの熱病
赤く焼けた十字の塊が胸に熱を放ち続ける
息苦しい呼吸を止めてしまうまで
僕はうなされ続ける
「冬の公園で」
落葉は色とりどりで冬の公園
丁寧に編んだペルシャ絨毯でも
この風合いは出せない
もったいなくて足の踏み場に困る横を
駆け足の子供が追い越してゆく
惜しげない雨のような落葉
冷たい風に舞い上がり
やがて地面に居場所を見つけて
模様は変わり続ける
ニスのような陽射しだけが
変わらずにその面を照らす
落葉はまるで
冷たい大地を温めようとする
たくさんの子供の手にも見える
可愛らしい健気な手はいつまで
ここにいることを許されている
人知れぬどこかの山であれば
腐葉土となり落葉は
豊かに山をするのに
無用なゴミとなり
街では袋に詰められ燃やされる
隙間だらけの梢を
冬の冴えた空が埋める
過ぎた月日にポッカリと
開通したトンネルを風が抜ける
まだ残る葉はフルフルと
小刻みに揺れている
それに合わせるように
僕もささやかな後悔に震える
落葉よりももう乾ききっているのに
さっき僕を追い越した子供は
拾い上げた落葉を
お母さんに自慢している
きっと一番きれいな色の落葉
探しだしたのだろう
子供の手に讃えられて
嬉しそうな様子の落葉
その心をそっと色づけ豊かにする
落葉の足場から僕は歩きだす
心を飾った印象派のような
落葉と子供との絵画を
落とさないように そっと