風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

洗い物燃えているのか冬茜 【季語:冬茜】

2019年11月30日 | 俳句:冬 天文
洗濯機を二回ほど回し
溜まっていた洗い物を
ようやく干し終わりました

洗い物の重さに
物干し竿が
少しゆがんでいたぐらいです

昼間の間に取り込もうと思っていたのですが
風が冷たいせいか
なかなか乾きません

天気予報を見たら
雨が降ることもなさそうなので
乾くまでそのままにしておこうと思いました

夕方
鮮やかな夕日が空を染めました
ベランダの洗い物もその色に染まり
まるで燃え立っているように見え
僕は夕日が落ちて行くまで
空を眺めていました

熱病 【詩】

2019年11月28日 | 

「熱病」

寒々しい静かな夜だ
死にかけた虫のように
心が激しく痙攣をはじめる
慢性的な病気のように
またやってくる予告もなく

頭が朦朧とする
裸電球が目に点滅する
しどろもどろの制御できない恨み言が
口からこぼれる
ただでさえあやふやな
自分の境界が
先端から焦げ始めてきな臭い

どうしようもなく
苦い草の汁のような不安が
心に沁み込んでくる
せめて鼓動だけは守る
不規則な音の上に手を重ね
海老のような体で布団に潜り込む
誰にも見られてはいけない

聞こえる救急車のサイレンは
卒倒する僕を連れて行こうと
家のまわりをぐるぐると
走っているのに違いない

茹でたての卵のように
熱を帯びた頭だ
生きていることの熱病
赤く焼けた十字の塊が胸に熱を放ち続ける
息苦しい呼吸を止めてしまうまで
僕はうなされ続ける


風吹いて転がる紅葉に好奇の目注ぐ子供に智恵また漲る 【短歌】

2019年11月27日 | 短歌
週末
お腹の風邪をひいた子供たちを
病院に連れて行こうと

二人を乳母車に乗せて出かけました
吐いたり下痢をしたりしていたものの
幸いにも二人の病状は
たいしたことも無いとのみたて
安心して病院を出ました

その日は天気が良く
二人とも家に閉じ込められて
退屈していたので
散歩をして帰ることにしました

しばらく乳母車を押していると
一人の子供が足元に目線を送っています

何かと思ったら
風に吹かれた紅葉が
転がって行くところでした

そんなものにまで目を向けるなんて
子供の好奇心は面白いものだなと思っていました

きっとそんな好奇心が
智恵を増やして行くんですね

初氷くしゃみする毎鼻だす子 【季語:初氷】

2019年11月23日 | 俳句:冬 地理
仙台に住んでいた時のこと
その年の初めての氷を観測したそうですが
例年よりも一日遅れということで
例年並みの寒さであったのでしょう

その前の週は東京に出かける機会があったのですが
夜に帰って来ると仙台の風は
随分と冷たく感じられました

そんな寒さを小さな体に感じている子供たち
まだ風邪の後遺症が残っているようで
くしゃみをすると鼻水を出しています

放っておくとそのまま遊ぼうとするので
鼻を拭いてやるのですが
最初は怒って抵抗していたものの
だんだんと慣れて
最後はなすがままにされていました

冬の公園で 【詩】

2019年11月21日 | 

「冬の公園で」

落葉は色とりどりで冬の公園
丁寧に編んだペルシャ絨毯でも
この風合いは出せない
もったいなくて足の踏み場に困る横を
駆け足の子供が追い越してゆく

惜しげない雨のような落葉
冷たい風に舞い上がり
やがて地面に居場所を見つけて
模様は変わり続ける
ニスのような陽射しだけが
変わらずにその面を照らす

落葉はまるで
冷たい大地を温めようとする
たくさんの子供の手にも見える
可愛らしい健気な手はいつまで
ここにいることを許されている

人知れぬどこかの山であれば
腐葉土となり落葉は
豊かに山をするのに
無用なゴミとなり
街では袋に詰められ燃やされる

隙間だらけの梢を
冬の冴えた空が埋める
過ぎた月日にポッカリと
開通したトンネルを風が抜ける

まだ残る葉はフルフルと
小刻みに揺れている
それに合わせるように
僕もささやかな後悔に震える
落葉よりももう乾ききっているのに

さっき僕を追い越した子供は
拾い上げた落葉を
お母さんに自慢している

きっと一番きれいな色の落葉
探しだしたのだろう
子供の手に讃えられて
嬉しそうな様子の落葉
その心をそっと色づけ豊かにする

落葉の足場から僕は歩きだす
心を飾った印象派のような
落葉と子供との絵画を
落とさないように そっと


交差点旋風にまかれる銀杏の葉去るべき場所を逡巡している 【短歌】

2019年11月20日 | 短歌
赤信号で交差点に立ち止まりました

信号の変わり目
車の一瞬止まった交差点には
旋風がたちました

そこに巻き込まれている
黄色の銀杏の葉っぱたち

色の無い旋風が
一瞬姿を現しました

その旋風は
どこに去ればいいのか迷っている
銀杏の葉っぱたちの逡巡のようです

青信号に変わり僕は
まだ迷ったままの
銀杏を尻目に
道を急ぎました

えさ漁る雀が鳴らす朽葉かな 【季語:朽葉】

2019年11月16日 | 俳句:冬 植物
通りを歩いていたら
団地の花壇のそばから
ごそごそと落ち葉の鳴る音がしました

何だろうと思いよく見ていたら
何羽もの雀が落ち葉を動かしならが
地面を忙しそうについばんでいます

葉の影に隠れた餌を探しているようです
寒さに備えて少しでもお腹を
満たしておこうといったところでしょうか

まわりの物音が静かなだけに
その朽葉の鳴る音だけが印象に残り
冬を感じさせました

もっとも
落ち葉をどかしながら餌を啄ばむ作業を
雀たちは少し楽しんでいるようにも見えたのですが

僕はここにいるよ 【詩】

2019年11月14日 | 
「僕はここにいるよ」

僕はここにいるよ
君の足元で 静かに風に揺られているよ
君に見てもらおうと 真っ白な花を開いているんだ

僕はここにいるよ
難しい顔をした君の 入り組んだ気持ちを解きほぐそうと
君の髪の毛を そよそよと揺らしているんだ

僕はここにいるよ
眠れないでいる 君のため息が心配で
君の部屋を空の奥から きらきらと覗いているんだ

僕はここにいるよ
君の目が気持ちいい 青い空に注がれるように
鳴きながら 遠くへ飛んでいくんだ

僕はここにいるよ
君の手に温もりを 残したいから
こんな太陽のような 色一杯に染まっているんだ

僕はここにいるよ
君が僕の背の高さに追いつこうと 楽しい希望を持てるように
身じろぎもせず 高く高く伸びて行くんだ

僕はここにいるよ
物思いに沈む 君の耳を楽しませようと
君の家の屋根を 七色の音階で叩いているんだ

僕はここにいるよ
この世界が たくさんの色で満たされていること
君に伝えたくて 雨上がりの空を駆けていくんだ

僕はここにいるよ
君に気づいてもらおうと
君の力になるために

僕はここにいるよ
それに気づいてくれたなら
君はきっと一人ではないから

晩秋の河原に立てる蚊柱は世迷い人の群れるがごとし 【短歌】

2019年11月13日 | 短歌
子供を連れて河原を散歩したのですが
ところどころで
この季節には珍しく思える
蚊柱が立っていました

細い一本道だったので
手を振って蚊柱を散らすように
歩いていったのですが

散らされた蚊は
元気もなく空に漂い
息絶え絶えの様子

まるで行く場所をなくし
仕方なくそこにたむろしているようで

地に落ちて行くことを待つだけの
寂しい集団に見えて

乱暴なことをして悪かったなと
後ろを振り返って見ていました

子の頬の赤らみ告げる冬初め 【季語:冬初め】

2019年11月09日 | 俳句:冬 時候
寒さのせいでしょう
散歩から帰ってきた子供の頬が
真っ赤になっていました

今まではこんなに
赤くなることは無かったのですが
まるで赤い林檎のよう

ちょうど風邪をひいていたので
垂れたままの鼻が
古い記憶の中の田舎の子供のようです

そういえば暦の上では立冬で
もう冬が来ていたのだなと
あらためて実感させられました

まずは子供のモチモチとした
感触の良い頬っぺたを
冬が触りに来たのかなと
そんなことを思っていました