通勤途中のことです
靴の紐が解けていることに気が付きました
踏んで転んでしまそうだったので
結び直そうと思ったのですが
ちょっと先には花盛りの桜の木が一本あり
そこまで行ってからにしようと
足元に注意して歩きました
そうして桜の花の下まで行くと
根元の方で紐を結び直しながら
頭の上の桜を眺めていました
通勤途中のことです
靴の紐が解けていることに気が付きました
踏んで転んでしまそうだったので
結び直そうと思ったのですが
ちょっと先には花盛りの桜の木が一本あり
そこまで行ってからにしようと
足元に注意して歩きました
そうして桜の花の下まで行くと
根元の方で紐を結び直しながら
頭の上の桜を眺めていました
「うたた寝」
お腹いっぱいの夕食で
いつの間にか
炬燵でうたた寝の子供
風邪をひかないだろうか
起こそうかとも迷ったが
あまりにも気持ち良さそうだ
髪を撫でても動かない
少し微笑んでさえいる
こんな幸せな眠りは
これから何回あるのだろう
見ている方も幸せになる
そのまま起こさずにいた
年度替わりということもあり
今まで一緒だった人たちに
お別れを言うような機会があります
忙しさに送別会なども開けずに
別れをゆっくりと惜しむこともできません
それではお元気でと伝える唇は
寂しさに何処か冷たく感じられたりします
まだ炬燵がリビングの真ん中で
存在感を示しています
自分はあまり炬燵に依存しないで生きていけるのですが
家族の皆は炬燵の虜
そこで寝ている姿を見かけることも良くあります
週末にも子供たちが炬燵の中で
テレビを見ているうちに
眠ってしまったようです
ただ、そろそろ暑く感じるのでしょう
半分足を出して
お腹に布団をかける要領で寝ていました
そろそろ炬燵も主役の座を降りて
入れ替えですね
「ナイフ」
読みかけの本を、あなたは枕元に置いた
手元だけが明るい小さな蛍光灯が
あなたの顔を照らしていた
間近で僕は、その横顔を見ていた
上を向いて、あなたは何を考えていたのだろう
少し眠くなって、睡魔の腕で布団に
引き込まれていたのかも知れない
あなたの心に浮かぶもの、その心の映える仕草
表情も、言葉も、愛しく思えている
あなたが、眠ってしまった後の部屋は
冬の夜の静けさに満ちていた
その静けさが僕の中に入り込んで
僕の心を冷たく軋ませる
あなたの枕元、開かれ置かれた
本を僕は閉じる
栞代わりの落葉を挟んで
蛍光灯を消した、一瞬で闇に満たされる部屋に
僕はまた、闇の断片であることを思い出し
闇に取り込まれている
喉元にまた、鋭利なナイフの
冷たい刃先の殺気を感じ、身震いをする
ひと押しすれば、いつでも亡き者になる
もしかするとそれは、自分の意志でも
いつでも足元は、闇に脅かされていることを、
僕の指定席などどこにもなくて
繋ぎとめてくれる人たちの絆に
結ばれているだけだ
時として、それはからまり、重たい鎖のように
断ち切ってしまいたくも、なるけれど
体も冷えてきた
あなたの横に
あなたの寝息を感じられる距離に
そっと自分を動かして
おやすみ
あなたは読書の好きな人だ
沢山の人の思いを心に読み取って
ますます、心を柔らかにして
おやすみ
僕はいつまでも頼りにならずに
あなたを縁に眠る
お花見は人を誘うのに良い材料ですね
桜の咲く前から
一緒にお花見をしたいなと思った人を
誘う言い回しを考えて
結局、どうもしっくりとせずに
やがて花も散ってしまい
誘えなかった記憶があります
素直に桜を見たい気持ちを
伝えれば良かったのでしょうが
そこに格好のつく言い訳を盛り込みたくて
今年は誰を誘って花見に行こうか
毎年桜が咲くたびに
新しい思い出が重ねられていきます
その日は朝から晴れていたのですが
随分と風が強くて
時々唸るような音も聞こえて
誰かが叩くように窓もなりました
夜も風は強く吹いていて
ベランダに出ると
自分の体がその風に包まれてよろけるようで
空を見上げると星までもが
どこか定まらずに揺れているようでした
春の風なので強さ以外は
心地は良いのですが
「檻」
自分から鉄格子を閉めて、僕は檻に閉じこもった
半分やけくそに、腕に力を入れた勢いで
鉄のぶつかる鈍い音がした、口の中に沸き立つ血の味がした
心の鉄格子も閉じて、錠前を締めた
黴臭く湿ったコンクリートの灰色の壁
小さな明かり窓の鉄格子、小さな一つの雲でさえ
入りきらない、そこで暮らすことを、僕は受け入れて
手垢のついた読み古しの本と、毎日の悔いと
悔い改まらない心は文句で、理不尽な仕組み
憎い人たちの顔、落ち着かない気分
眠り足りない目覚めと、追われる夢とを繰り返して
こんな処からは早く逃れたいと、けれど逃れた先の
生活を思い描けない、生活を送る自信もない
だから慣れきった、牢獄の中で、文句と一緒に時間、費やすのだ
誰かに手を引かれて、ここまで連れて来られた気がしていたけれど
違う、自分で進んで囚われの身になったのだ
鍵もこの手に、握りしめているのに、出ることもしない
一歩外に歩き出す、決心さえできないこと
薄々と感じてはいるけれど、だから余計に人のせいにしている
この牢獄を出たのなら、肌に当たる風は
季節の色合いごとに、心地よいものだろうか
心の不服以外の、例えば木々の葉擦れの音や
浜辺に打ち寄せる波の音、鳥の鳴く声、虫の鳴く声
誰かの僕に、笑いかける声も聞こえるだろうか
それでもここから、一歩も踏み出す力が湧かない
足が退化して、動かないように感じられて
僕を閉じ込めた者に対する呪いの言葉、吐き出して憂さを晴らす
ことが大好きな、僕なのだ
空に赤い風船が上って行きました
その風船が飛んできた方を見ると
兄弟げんかをしている小さな男の子たち
どちからが手を放してしまったのでしょうね
それをお母さんが宥めています
そう言えば、自分の子供が小さい時にも
同じようなことがありました
一人が風船をもらい
もう一人がそれが欲しくて手をのばして
小競り合いをしている内に
風船が空に逃げて行ってしまうというお決まり
そこからは誰が悪いとの罵り合いです
その様子がくだらなすぎて
笑いをこらえながら宥めていたのですが
今日のように風の強い日には
春の風のせいにしていたかなと
自分が親になったような気持ちで
喧嘩をする兄弟を眺めていました
授業が早く終わり
帰ってくる日があるとの話を
三男がしていました
卒業式の予行演習のようで
5年生と6年生のみが参加
それ以外の学年は授業も早く終わるようです
もうそんな時期なのだなと
改めて暦を眺めました
だんだんと卒業式に臨む袴姿なども
見かける時季ですね
日差しも日毎に強くなるように感じられて
卒業を祝福するかのようです