風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

ここにいては 【詩】

2022年09月29日 | 

「ここにいては」

ここにいてはいけない
どこかへと辿り着かなければならない

赤い夕陽に焦げる背中
薄い三日月が目に刺さる
いつでも乱暴に背中を押す手
丘の上に甲虫の体は弾けて飛んだ
齧られ続けて悲鳴をあげる心

ここにいることが許されていない
すぐに立ち去るように命ぜられている

肌に感じる沢山の視線
心に隠し持つ鋭利な刃物で
誰かが傷つけようと脅かす
警戒心で早くなる鼓動を
悟られないように道の端を歩く
追いかけてきて肩をぶつける人の数

いつでも何かに追い立てられている
いつでも落ち着いてはいられない

夢の中でも覗き込む沢山の目
声にならない一人のうめきに目覚める
麻酔が切れたような鈍痛に
脂汗を滲ませる暗闇

ぎこちない笑顔をポケットに携える
不意に誰かに会えば被れるように

静かな時を知らない心
美しいものの上には留まれない
誰かのどんな品のいい笑顔も
凍り付かせてしまう
自信だけはあって

だからますます
追い立てられる
繰り返す毎日に
擦り切れそうに回る
熱を持った心が叫ぶ

僕はここにいてはいけない
どこかへと辿り着かなければならない
ここではないどこか
どこか分からないどこかへと
僕はここにいてはいけない


何も無い部屋に夕映え秋の声寝そべる僕こそ虚ろな入れ物 【短歌】

2022年09月27日 | 短歌
布団だけを敷いた
がらんとした部屋に横たわっていました

窓を開けていたのですが
虫の声も聞こえて来て心地よい風も吹いてきました
天井を色の薄い夕映えが染めて
空っぽな部屋は寂しく感じられます

そうしてそこに横たわる僕も
長い歳月を重ねてきた割には
何も残っておらず
部屋のように空虚そのもの

自分の中身の無さを改めて感じ
身動きもできずにいました

先導す夏茜いてペダル漕ぐ 【季語:夏茜】

2022年09月24日 | 俳句:夏 動物
自転車で走っていると
赤とんぼの群れに出会いました

その中の一匹が
僕の自転車で行く方に飛んでいき
まるで僕のことを先導してくれているようでした

スピードを落として
その赤とんぼの後を少しの間ついて行ったのですが

急に道のない方に飛んでいき
取り残された僕はまた
自分のペースで自転車を走らせました

また笑ったら 【詩】

2022年09月22日 | 

「また笑ったら」

それは一時の通り雨
 傘がなかったから
  無防備に濡れてしまうように
   自然と一頻り
    泣いてしまったらどうだろう

それから
 晴れ間から
  太陽がのぞくように
   可愛い顔をして
    また笑ったら

我慢強いあなたを知っている
 全てをだから受け止めてしまう
  悲しみは耐えられるものだと

とても柔らかなあなたの心
 どんな痛いものさえ
  受け止めてしまおうとする

例えば あなたを苦しめる
 人の思い 心ない言葉
  人を責めないことの代わり
   自分を貫くその責め苦

あなたは今も一人隠れて
 涙を流しているのかしら
  受け止められないものが
   受け止めなくていいものが
    あっても良いことを知って欲しくて

雨が降りしきる日には
 その雨に濡れること
  それを仕方がないこととして
   濡れてしまえばいい
    涙は雨が隠してくれるから

大地を濡らす雨
 その恵みに大地は芽吹く
  陽ざしの匂いは再び地平を満たし
   爽やかな風も吹いてくる

そうしたら
 あなたはまた
 その可愛い顔で
  心の底から笑えるから

その時まで僕が
 側にいることも感じさせない位に
  透明な傘となって
   降る雨を受け止めて
    いられれば良いのだが

優しく抱きしめれば
 止められる涙であれば
  その肩をいつまでも
   抱き続けているのに

きっとあなたは一人ではなくて
 誰かがあなたの横にいて
  落ちてきそうな空さえも
   手を伸ばし支えてくれるから
    (願わくはそれが僕であることを)

あなたは
 その可愛い顔で
  今度はずっと
   笑っていればいい


灯台が照らす合間の暗い海闇に隠れる智慧拾いたい 【短歌】

2022年09月20日 | 短歌
本を読んだり、人の話を聞くたびに
自分の知らないことばかりだなと思います

そうして少しは勉強をしてみるのですが
自分の身にはなかなかつかず
その知識の話をしても
どこか浅はかで
言葉も浮ついてしまいます

きっと自分の思いの至らぬところには
もっと大切な智慧も潜んでいて
そこを拾いたいと思うのですが

自分の考えの及ぶ範囲が限定されていて
我ながらがっかりとするばかりです

釣り人の自慢話や夏の海 【季語:夏の海】

2022年09月17日 | 俳句:夏 地理
自転車で海沿いを走っていると
堤防から釣りをしている人たちを沢山見かけます

以前、ちょうど大きなイカを釣り上げた人がいて
そのイカを手に釣果を通りがかりの人に自慢していました

僕が自転車で横を通ると
目があって
どうだいという感じの表情

確かに大きなイカだったので
僕も声をかけて話を聞いてみたい
誘惑にかられました

赤とんぼ 【詩】

2022年09月15日 | 

「赤とんぼ」

澄んだ秋の空を
心地良く泳ぐ鰯雲

その海原で迷走する
たくさんの赤とんぼ

透明な翅で空を叩く
一生懸命が枝のような体を
宙に支える

広い海に溺れて
どこに泳ぎつけば
いいのかも分からずに

その翅をひととき休ませた
向日葵は首を落とし
トウモロコシは倒れた
穂を白くススキも
秋の風に小刻みに揺れる

空に置き去りに
舞い続ける術しかしらず
いつになれば翅は
休むことを知る

やがては空に
いのち燃え立つ赤とんぼ
薪のようにくべられて
夕日に炎を点して

そのいのちは秋の頬紅
木々を景色を
赤く色づけるに十分で


知っている? 言葉、刃物だ、めった刺す 痛み引かない、身悶え、分かるか? 【短歌】

2022年09月13日 | 短歌
子供たちの言葉が乱暴です

特に上の子供たちの三男に対する言葉はきつくて
よくからかわれて三男が泣いているので
上の二人を注意します

言葉も立派な暴力で人を傷つけるというのですが
まったく意に関せずです

いつか分かる時がくるのでしょうか

乱暴な言葉が男の子としては
男らしくて格好が良いと思っている節もあり
ちょっと誇らしげに汚い言葉を使ったりします
三男もそんな言葉を覚えて粋がっています

聞いていて嫌な気分になるので
止めろというのですが
なかなか、荒々しい言葉が止まない毎日に
こちらの言葉まで荒くなっています

染み入れの願い響かせ夕の蝉 【季語:蝉】

2022年09月10日 | 俳句:夏 動物
夕方になっても
蝉が熱心に鳴いていました

自分の声がいつまでも鳴り響くようにと
そんな必死さを感じる声でした

蝉はそんなことを
思うことはないでしょうから
僕の思い入れなのですが

僕は何を世の中に染み入れさせたくて
あくせくしているのかしらと
改めて自分の行いを振り返っていました