風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

陽の漏れぬ欅の影も夏の色 【季語:夏の色】

2020年05月30日 | 俳句:夏 天文
その日は暑い一日でした
陽射しが随分と強く感じられ
その下を歩いていたら
汗が額に浮かんできました

しばらく歩いて行くと
大きな欅(けやき)があり
その木陰に休むことができました

葉が生い茂り重なり
その欅の下では
木漏れ日も落ちて来ることはなかったのですが
そんな欅の影も夏めいていて

影なのにどこか明るく
感じられていました

若葉と夕日と 【詩】

2020年05月28日 | 
「若葉と夕日と」

淡い夕日と銀杏の若葉が戯れている
まるで揺りかごの中の赤ん坊の
微笑みのような無邪気さで
微風もきっと楽しくなって
透明な足で若葉を軽くキックしている

僕の顔も夕映えに赤く色塗られている
通り過ごして行く車も
猛獣の険しさを無くし
鋼の体を柔らかな肉体に変えてしまった

今日の終わりの空に
帰り行く鳥の群れの目指す茜雲
さっきまで人と話をしていた緊張を
吐き出すようにほっと一息をついて
僕も肩の力を抜いてみる

ヒラヒラと楽しい若葉はまだ僕の上にあり
僕はあなたが見せてくれた
エコー写真を思い出している
あなたの体に芽吹いたばかりの
ほんとうに小さな二つの生命

こんな銀杏の若葉のように
僕が夕日を浴びている刹那からも
着実に育まれようとする生命の
素直さと楽しさ

ヒラヒラと
僕の頭の上で夕日と遊んでいる若葉
その一葉一葉と
気づかれないところで大きくなる生命と
同じ健やかな時を過ごしているんだ

僕は不思議な思いに捕らわれて
夕映えの奥に潜んでいる
見えない何かに向って
静かな祈りで満たされていたくなる

あふれ出る涙も心の糧として頑張る君はいつしか剛力【短歌】

2020年05月27日 | 短歌

笑顔の子供を見ていると
このまま苦もなく楽しく
大きくなってくれたら
どんなにいいだろうと
思ってしまいます

そんなに物事は上手くゆくわけはなく
これから様々な苦労を経験するのでしょうが
それを乗り越えるための智慧を
少しでもあげたいなと思います

艱難汝を玉にすとは
よく耳にする言葉で
その通りなのですが

できれば自分の周りにいる人が
痛んでいる姿は見たくないのも本音

みんなが何がしかの
痛みを抱えながら頑張っている姿は
哀しくも励まされもします


日も暮れて寄り添うものあり葱坊主 【季語:葱坊主】

2020年05月23日 | 俳句:夏 植物
夕焼けが優しく空を染めはじめた
道を一人で歩いていました

どことなく風も涼しく感じられて
夜の香りを含んでいました

道を歩いて行くと小さな畑があり
幾つかの野菜が植えられていました

その内の一つには
頭に玉のような花をつけた葱の一群
育ちすぎたのか随分と大きくなっています

そのシルエットが日暮れの寂しさを
寄り添い分かち合おうとするもののようで

一人で歩いていた僕は
家の灯りが恋しく思えました

小さな窓 【詩】

2020年05月21日 | 
「小さな窓」

駅舎の高いところに見つけた小さな窓
真っ暗な夜を貼り付けた煤けた木枠
はられている蜘蛛の巣さえも
古ぼけて変色している

あの窓はいつからそこにあったのだろう
今まで気がつくこともなかった
そうして未だに気づかない人もいる
きっと普段は開かれることもない窓

誰が何の悪戯で
そこにはめ込んだのだろう
駅舎の一部でありながら
窓としての役割を奪われている
高いところにある古びた窓

羽根のある鳥や昆虫だけが
たどり着けるその高い場所
朝には目覚めた鳩が
忙しそうに電車に乗り込む僕らを
不思議そうに覗くのだろうか

仕切られた空間をつなぎ
あの窓は季節ごとの風
送り出すことを夢見ている
その風が朝の人の目を覚まし
夜の人の思いを安らかにする

灰色の壁の一部となり
鍵をしっかりと閉められて
役割を静かに諦めている窓
その顔は寂しそうに
蛍光灯の灯りに濡れて

僕は窓から心配そうに覗いた
満月と目を合わせている
人知れない高いところで
諦め耐えている窓に
心締め付けられている

夜遅くはしゃいでいた子は怒られて涙にまみれ乳房に眠る 【短歌】

2020年05月20日 | 短歌
その日は
随分と長く昼寝をしたせいか
暗くしてもなかなか子供たちが眠りませんでした

真っ暗な中を歩きまわったり
ハイテンションで笑っていたりします

注意されても止めず
むしろ余計に騒ぐ状態で
最後には大きな声で怒られて
二人とも泣きだしました

布団の中で授乳されながら眠る二人
やがて静かになったその顔は
涙に濡れていました

匂う子を剥いて浴びせるシャワーかな 【季語:シャワー】

2020年05月16日 | 俳句:夏 人事
陽射しがそれなりに強く
走り回る子供たちは
汗だくになります

公園で心ゆくまで遊ばせて家に戻ると
汗の匂いがします

それでも不思議なもので
子供の汗はあまり臭いという感じがしないので
不快ということはないのですが

砂場で遊んで砂まみれでもあり
顔もどこか薄汚いので
服を剥いでシャワーを浴びせました

頭からシャワーを浴びせかけて
風呂場からあげると
さっぱりとして気持ちが良かったのか
しばらくは裸で家の中を走り
服を着せようとすると逃げ回っていました

列車に乗って 【詩】

2020年05月14日 | 
「列車に乗って」

先ほどから降り始めた雨は少し冷たく
明かりのともる高層ビルを濡らしている
滲んでいく広告のネオン
まだ働く人のいる部屋の灯
信号の色も溶け合ってしまい
横断歩道の人々も静かに列をなす

濡れた電車の車窓から
青白い自分の顔と
街の灯りを眺めている僕は
疲れた今日の出来事を忘れてしまおうと
自分の体の重さを感じながら
深く座席に身を沈めている

その雨の冷たさから逃れるように
発車のベルの終わり待たず滑り出す列車
僕の体が一瞬重みをまして
背骨が少しきしみを上げる

一秒毎に加速する列車の速度
摩擦熱に上がるレールの悲鳴
風は砕かれ塊となって
暗闇の中に飲み込まれて行く
やがてトンネルを抜ける頃には
雨も振り切られ夜空には
青い月がかかるほどの速度で

僕はこのまま何処へ連れて行かれるのだろう
さっきまで僕をとらえていた雨の街の記憶も遠く
電車の上の時間は疲れとる重苦しい眠りに費やされて
想像を超えるほどの遠い何処かへの不安に
僕は首筋の寒さを覚える

やがて列車の速度をいさめるようなブレーキが
僕の背骨を軽くきしませ
とある駅で列車は化石のように静かになる

降り立つたくさんの乗客
ありきたりの会話
僕の見慣れた場所
君と続けている暮らし
僕は少しだけほっとして
僕の歩調で家路へと歩みを始める

犬と目が合うほど電車がゆっくりと進む青田の皆こざっぱり 【短歌】

2020年05月13日 | 短歌
とある温泉に行こうと
本数の少ない2両編成の電車に乗って出かけました

電車は時間をゆっくりとかけて
進んで行きます

その余りのゆっくりさに
散歩に来ていたのでしょうか

僕は道端にいた白い犬と目が合い
数秒ほど見つめあったりしていました

電車はゆっくりと
まだ苗が植えられたばかりの田んぼの中を
進んで行きました

どの田んぼも張られた水が
空の青さを映し

まだ雑草も生えていないその姿は
みんな小ざっぱりとして見えました

水風船噛み割り濡らす夏衣 【季語:盛夏】

2020年05月09日 | 俳句:夏 時候

風船に興味のある子供たちのために
水風船を買いました

比較的小さな風船で
水を中に入れて膨らませます

早速家で作って手渡すと
何を思ったかいきなり噛み付き
あっさりと割ってしまいました

仕方が無いのでもう一個作って渡すと
学習能力も無く
これまた割ってしまいました

噛んでいる時の
キュッキュツという
感触が楽しいのでしょうか
それともそんな遊びだと
楽しんでいるのでしょうか
何回作っても同じ結果です

当然のことながら服はびしょ濡れ
夏の暑い時分にしか
できない遊びでした