風のささやき 俳句のblog

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夢爆ぜた未練いつまで百日紅 【季語:百日紅】

2018年08月25日 | 俳句:夏 植物

歩いていたら薄い紅の
百日紅が咲いていました

夏の終わりの頃
ふと顔を撫ぜる風に
秋の気配を感じました

けれどその心地よい風も
ものうく感じられました

胸のなかで潰れた
一つの小さな夢
それが現実であることを
また胸に覚えて

何かが弾けたような
百日紅の花に
夢の残骸を見るようでした


命尽く時を知ってか夜の蝉 【季語:夜の蝉】

2018年08月18日 | 俳句:夏 動物
夜もだいぶ遅い時間でした
そろそろ眠ろうかと台所に行き
水を一杯飲み干した時
窓の外から蝉の声が聞こえました

こんな夜更けに蝉の鳴き声を
聞いたことがなかったので
不思議に思い
僕はその音色に耳を傾けていたのですが

蝉は自分の命の
果てる時が近いことを知り
それで時間を惜しむように
暗闇に鳴きつづけているのでしょうか

あるいは東京の街の明りの中では
人間と同じように
蝉も昼夜の関係が無くなっているのでしょうか

風の中に秋めいたものを
多く感じるようになり
蝉の声は僕には
とても寂しく聞こえました

夏霧に迷い溶け込む白き翅 【季語:夏霧】

2018年08月11日 | 俳句:夏 天文
山道を進んでいたら
濃い霧が立ち込めてきました

せっかくの高原の景色も
その白さに隠れてしまい
見えなくなって行きます

せっかくの機会なのにと
残念に思いながら
少し未練がましく
遠くの方に目線を送っていると

霧と同じような色をした紋白蝶が
ヒラヒラと行ったり来たり
迷ったように飛んでいます

それは急に立ち込めた霧の白さに
自分の羽との境目が分からなくなり
とまどっているといった風情でした

白壁に静かなるもの炎天下 【季語:炎天下】

2018年08月04日 | 俳句:夏 天文
照りつける陽射しが
すべてを黙らせてしまうような真昼時でした

僕も車から降りると
小走りするように
訪れた温泉宿の
風の通り抜ける部屋に逃げ込んだのですが

日陰を求めていたのは
僕だけではなかったようです
見ると温泉屋の白壁には
糸とんぼが羽をピクリとも動かさず休み
太陽を追い過ごそうとしているようでした