風のささやき 俳句のblog

訪問ありがとうございます
オリジナルの俳句を中心にご紹介しています
詩や短歌も掲載しています

家に入る温かさを知る秋の暮 【季語:秋の暮】

2016年10月29日 | 俳句:冬 時候
秋の夕べのことです
すっかりと日は短くなり
空には太陽が
足早に沈んで行こうとします

紅色に暮れて行く空に
風も冷たさを増していきます
外をしばらく歩いていた僕ですが
気づかない内に随分と
体も冷えていたようです

玄関を開けて家に入ると
風も僕の体に触れることはできず
家の中の温かさを
ありがたく思っていました

秋空に吐息のように消えたくて 【季語:秋空】

2016年10月15日 | 俳句:秋 天文
青空を眺めていることが好きです
青空もそれぞれの季節ごとに
違った顔を見せてくれますが
秋の空は深く澄んで
見ていてため息がでるようです

どんな思いに満たされれば
あんな静かな色合いを
たたえていられるのだろうと

その秘密を知らない僕の吐息だけが
空に溶け込んで行き
魔法のようには消せない体が
長い影を引いていました

空遠く追いつけなくて秋の蝶 【季語:秋の蝶】

2016年10月08日 | 俳句:秋 動物
秋の気配が風景に染みて行くにつれ
冷たくなっていく地上を嫌ってか
空が高さを増して行きます

その空に追いつこうとしているのでしょうか
小さな蝶が空高く舞っていました

きっと蝶は自分の生きられる時間の少なさを
予感しているのでしょう
その最後の場所として
青空にたどり着こうとしているように思えて

けれどそれを拒絶するかのように
空は日毎に高くなる一方です

語り部の多さを思う星月夜 【季語:星月夜】

2016年10月01日 | 俳句:秋 天文
まん丸の月が空を飾っている夜でした
道を歩く僕の四方からは
様々な語り口の虫が鳴き
夜の静けさを深めるようでした

虫たちは何を思って鳴いているのでしょう
今宵の満月の美しさ
吹いてくる夜風の心地よさ
それとも自分の短い生への嘆き

その声は様々な物語を
新しい生へと語り継ごうする
語り部の話しのようにも思えて来て

その一つ一つの物語を分かろうと
耳を傾ける自分がいました