朝から雨が降っていました
耳には起きた時から雨音が響いていました
今日は一日雨かなと空を見上げていたら
程なく雨も上がりました
陽射しも差し込んできたので
それに誘われるように畑に出かけると
里芋の大きな葉が
なみなみと朝の雨を湛えていました
良く零れないものだと感心していると
その葉っぱの上には雨蛙
そうして隣の葉にはありが一匹歩いていました
もしかするとこの生き物たちのために
雨を零さずにいるのかなと思うと
頑張れと応援したい気持ちにもなりました
「合歓の木陰にまた」
合歓の木陰で休む
心には真っ黒な闇が広がる
白いテーブルクロスの
黒いインクのように
合歓の木陰に抱かれて
消えたはずなのに
一層 濃い影が体から滲み
僕が浮かび上がる
その底なしに
傍らの蟻も慌てて逃げる
きっと近づいてはいけない
僕は不幸の販売人
いつからこんな闇に
支配者されていたのだろう
あるいは闇自身が正体であることに
気が付いただけかも知れない
その闇に落ちてしまった
素直な笑いや怒り
悲しみを取り戻そうと
けれどその試みは徒労だった
嘆きさえも貪欲に飲み
広がる闇に黙って梢を見上げる
風が吹き
合歓の影もゆれる
葉の間から落ちる陽射しも
同化させる闇が
しっかり心を占拠している
合歓の木陰にも滲みだす
闇の濃さに動きだせずにいる
「合歓の木陰に」
頭上の太陽は
形あるものを黒くなぞる
まるで汚点であるように
地上に広がる僕の影
親指 人差し指 薬指と
指の一本さえも逃さずに
存在がヒリヒリと
夏の地面に焦げ付く
お前の罪だと見せつけるように
自分のものではないような影を
動かしてみる指先につられ
操り人形のように動く影
あるいは影の操り人形の僕
傍らの合歓の木
沢山の羽のような葉を生い茂らせて
夜になれば重ね合わせる
千手よりも多くの祈り
その木陰に逃げ込んで庇われて
姿を失う僕の影
腰を下ろして
そっと安堵の吐息をついている
緊張から解き放たれて
一滴の汗が額を走り地面に落ちる
その跡をもう影はなぞらない
見上げれば合歓の葉が揺れ
風の真っ直ぐな通り道
空に手向ける桃色の花を
罪滅ぼしの数だけ咲かせるように
合歓は母のように庇う
そっと休ませる
何かをした訳でもないのに
葉を重ね合せ
僕のために祈ることを止めずに
黒い一匹の蟻が傍らにきて
そっと動きを止める
合歓の木陰に一緒に隠れる
一息をついて
庇ってくれる
合歓の梢を見上げている
ほっと救われている
お酒を飲んで夜遅くの帰路でした
人も少なくなったホームで
電車が来るのを待っていました
手持ち無沙汰で
辺りを眺めていたら
破れかけた蜘蛛の巣が目に止まりました
良く見ると大分前から
捨てられた状態なのでしょう
蜘蛛の姿もなく
そこに捕まる間抜けな虫もおらず
ただ三日月だけが捕らえられていました
(Haiku)
Spider silk is spun,
Fragile moon, host not seen,
Autumn stillness pervades.