風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

夏なのにもう落ちるのか未熟の葉 【季語:夏】

2020年06月27日 | 俳句:夏 時候
その日の空は晴れ上がっていました

地下鉄の出口から足を踏み出すと
陽射しの強さに一瞬目がくらむようでした

僕は額に汗が滲むことを感じながら
いつもの道を歩いていたのですが

一瞬気持ちのいい風が吹いてきたかと思うと
街路樹の銀杏がざわめき
それから乾いた小さな葉が落ちて来ました

これから夏の陽射しを受けて大きくなるはずが
散ってしまった葉っぱに
一抹の寂しさを感じていました

夕暮れの野原に 【詩】

2020年06月25日 | 
「夕暮れの野原に」

楕円の夕日が稜線に落ちて行くと
遠くの家々の窓に明かりが一つ二つと点って行く

そこからは随分と遠く離れて
僕は一人で小さな野原に立っている
懐かしい匂いのするあぜ道を通り抜けて
風と鬼ごっこをしながら
僕の歩みはいつでも人から
離れて行こうと欲している

けれど僕は寂しくはない
何も語らない野の草が
懐いた犬の尻尾のように
僕にじゃれ付いて来るから
そうしてすすきは
夏の面影をきれいにする作業に
うっとりとしている
その穂先にはキラキラとした
夏の残骸が光ったままだ

僕はそっと目をつむる
葉を生い茂らせる木立を真似て
空を飾る星を背にまとい
このまま地中深く足が根を張り
両腕が天指す梢の
一本の木になれればと思っているんだ

人の多い雑踏の中で
感じている正体の分からない眼差し
その影に潜む暗い気持ちを思うたびに
僕の胸には青白い火花が走るよ
その度に鼻の奥がこげくさくなって
目の奥がちかちかと寂しいよ

怯え続ける心は
すっかりと人といることには力をなくし
誰もいないところへと足を向けるのだ

こんな山里の夕暮れに隠れこんで
誰にも知られないところで
木立になれればいいと思っているんだ

君はまだ大丈夫ですか僕はまた駄目になりそうでも頑張ります 【短歌】

2020年06月24日 | 短歌
昔よりはだいぶ少なくはなってきたのですが
あいもかわらず
色々なことにめげることの多い自分です

そんな時には友人とお酒を飲んで愚痴をこぼしたり
不貞寝をしたりと
自分を紛らわす術も増えてきました

その中の一つはあまり
頑張りすぎないこと

時には手を抜いていると
ちょうどいいタイミングで
解決策が転がってくる時もあります

機が熟す時がやはりあるようで
それまでは焦らず慌てずということも
大事な頑張り方だなと思います

もちろん日々の積み重ねは
怠ってはいけないのだと思うのですが

人は自分なりの方法を見つけ
駄目になりそうになりながらも
頑張っていくのでしょうね

そんなときに誰か
心の中で思える人がいれば
それは大きな力になってくれるように思います

長梅雨や客来ぬ店主にぼやきあり 【季語:長梅雨】

2020年06月20日 | 俳句:夏 天文
友人がやっているバーも
長雨の影響を受けているようです
客足も悪くお店の売り上げも今ひとつ

さえない空模様は
外に出かけようとする気持ちを
萎えさせるものなのでしょうか

そんな友人のお店に貢献しようと
足しげく顔を出したりしているのですが
客が来ないよというぼやきが止まない
ここ数週間です

土方 【詩】

2020年06月18日 | 
「土方」

「工事中」
の看板の向こう側
赤い夕日に 背中を押されて
一人 地面を掘る土方

彼の服はすり切れて
体には 土がこびりついている
肌からは汗を 目からは大粒の涙を
ぼろりぼろりと こぼし
声もたてずに 泣いている

彼の持つ つるはしは
堅い意志で 鍛えられていて
太い腕の 振り下ろす力で
ダイヤモンドさえも 砕こうとする

仕事を終えて 会社から
ぞろぞろ出てくる 人々は
泥に汚れた そんな彼を嗤い
頭のいかれている 奴だと
役には立たない 奴だと
そうして 夜の街へと
生命をすり減らしに 消えてゆく

しかし彼は 知っているのだ。
そんな立派な人々に 蔑まされながらも
そこには掘るべきものが あることを
土の中深く 堀だされたがっているものが
埋もれていることを

いくつもの明かりが まだともるビルの
土台を築いてきたのは 彼だ
この街並みの 生活を支える
根っこを探してきたのは 彼だ

一人だけの 作業場に
土方が 地面を掘っている
手のひらを 豆だらけに
赤い夕日に押されて
土方が 地面を掘っている
血のような汗を したたらせながら

背広で着飾った 人々に嗤われようとも
しかし彼は 知っているのだ
そこには掘るべきものが あることを
土の中深く 堀だされたがっているものが
埋もれていることを

彼は その声を聞くのだ
そしてその声の主を
掘り当てることが 出来ない日には
人々の嗤いと 自分の無力さとに痛み
ああして時折
声もたてずに 大粒の涙を流すのだ

約束を守らぬ幼子怒られて新たな約束また破ってる 【短歌】

2020年06月17日 | 短歌
反抗期の子供たち
ここのところ悪ふざけばかりです

わざと怒られるようなことをしては
こちらの関心を引き
怒ろうと近寄っていくと
笑いながら逃げていきます

つかまえて「もうやらない?」と
約束をさせるのですが
その約束もほんの束の間のもの

まるで嘘をつく狼少年のようです

一緒にいると一日怒られている二人
まるで改心する様子もなく
今日も家の中を逃げ回っています

カラス二羽デコイとなりぬ梅雨の町 【季語:梅雨】

2020年06月13日 | 俳句:夏 天文
朝になっても
前の夜から降り続いた雨は
やんではいませんでした

空には重い雲が居座ったまま
外に出るのも億劫に感じられます

それでも出かけなければいけないと
いつもの仕度をして
傘を持って玄関を出ました

そうしてエレベータのところまで歩いて行くと
大きなカラスが二羽
廊下の塀のところにとまって
身を硬くして雨宿りをしていました

人には驚くことがないのか
僕が近づいても飛び立つこともなく

じっとして動かない様は
まるで模型の鳥のようです

こうして間近でカラスを見ると
やはり大きいものだと関心しつつ
時間のない僕はエレベーターに乗り込みました

とある朝に 【詩】

2020年06月11日 | 

「とある朝に」

長い雨には沢山の傘が咲く
六月 雨音のリズムにも
少し飽きてきたころ
曇り空の窓辺
あじさいの花を花瓶に差した

子供達の着る黄色
合羽の渡る横断歩道
赤い車も濡れて
白い車もワイパーを動かす

ダムを満たして
空っぽになった空には
虹が橋を渡した
赤い屋根の軒先から
声をあげて見上げた
七色に瞳は楽しんだ

買い物帰り
それを誰かに伝えたくって
あなたに電話をかけてみた
会話は弾んだ
あなたも雨にすっかりと飽きて
青い空を恋しがった

早く眠った爽やかな朝
眩しい光りが
カーテンの合間から
顔の上にこぼれ落ち
本格的な夏の消息を伝えていた


生活に精一杯のタクシーに終電のとき問い詰められてる

2020年06月10日 | 短歌
お酒を飲み久しぶりに寝過して
隣駅に行ってしまいました

結構距離もあるので
タクシーで帰ることにしました

金曜日の夜だったせいか
タクシーの数も多いようで
僕の前には3人が待っている程度

直に自分の順番も来ました
乗り込んで行先を告げると

運転手さんからは
「お客さんのは終電」と問いかけられました

もう一本後の電車もあったので
そのように答えると後は無言
僕を下ろすとまた急いで走り去っていきました

ノルマを果たすので大変なのだろうなと思いつつも
荷物のような扱いだなと感じられて
少し寂しい気分になっていました

走り梅雨チューしてた子は高いびき 【季語:走り梅雨】

2020年06月06日 | 俳句:夏 天文
その日は朝から雨が降っていました

体力を持て余している子供たちを
外に連れて行きたいと思いつつも
雨が止む気配も無く
一日家で遊ばせることにしました

本を読んだり抱っこしたりと
ずっと構うことを強要され
外で遊ばせている方が
まだ楽かも知れません

大分智恵がついて来たせいか
色々なことが出来るようになりましたが
チューと言ってキスするのも
ここのところの技です

そんな遊びにも飽き
やることもなく眠くなったのでしょうか
やがて二人とも布団に横になり
眠ってしまいました

さっきまでの騒ぐ声は消え
寝入り端の鼾が
部屋に響いていました