駅のホームに円い模様が散らばっている。
ガムのかすを吐き出して踏んだ跡、いや、踏んでべったりついたのをはがした跡だ。
踏みつけ踏みつけ、永く放置されると、周りの舗装面は汚れてガムの跡だけが最初に踏んだときの色で残るから薄く見えるのかと思ったが、そうではなさそうだ。
いっせいにガムが吐き出されるのではないから。
薄い色になるのは、はがしたガムに汚れが一緒についていってしまうのかもしれない。
こうして、美しいとはいえないが、まったくランダムに描かれた紋様が出来上がる。
巧まずして作られたものは見る目に抵抗を感じさせない。
それだからあんなふうに無遠慮に吐き出されるのか。
捨てるとなれば、その場所に少しは気を使うものだが、そのときは捨てるという感覚さえ持たない人がただ吐き出すのだろう。
これも60余年前に厚木から入ってきたGI文化を真似たのが因になっているのだ。
路上吐き出しの悪習は、1940年代前半にはまだなかった。