アール=伯爵、マーキス=侯爵、デューク=公爵。
であるらしいからにして、この刻銘によればアール東郷であーる。
しかるに、ご本人は、死す前日に侯爵位を賜っている由にて、此処ではマーキスと敬意を払うものであーる。
若き諸君は、知らぬかも知れぬが、かの世界最強と謳われたロシア帝国の誇るバルチック艦隊をティーバック、いわゆるティ字戦法をもって撃滅さしめた戦神であーる。
当時の欧米列強の大元帥に対する人気はネルソン提督にも比肩されうるほど大変なものであったと聞き及ぶ。
尚、ゴルゴダの13番、デューク東郷との関係について我輩は存じ上げない。
承詔必謹。「しょうしょうひっきん」と読むと覚える。
ある寺領にて堂宇に掲げてあった言葉であーる。
神様の言葉が、寺にあるというのも、今となっては不思議に思われるかも知らんが、その当時は、神仏及び人に隔たりはないのであるからして、気にしてはならん。
これが本物の自書かどうかはいかにも調べようはないが、言葉は本物であるからして、尻の穴をキュっとしめてよく心に刻むように。
趣はいろいろあろうけれども、はばかりながら、我輩は東郷平八郎卿の心中をこう受け取るものであーる。
つまりは、意味をあえて今風に申さば、「自らが承知し賜った天の意志である信念理念であれば、泣き言をいわず、言い訳をせず、必ずやそれを謹んで執り行うに吝(やぶさ)かは無い」と我輩は承るものであーる。
いかにも気骨。うら若き日本男児の諸君。かしこみかしこみ承られよ。