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彼の心は底のない嚢のように行き抜けである。何にも停滞しておらん。随処に動き去り、任意に作し去って、些の塵滓の腹部に沈澱する景色がない。もし彼の脳裏に一点の趣味を貼し得たならば、彼は之く所に同化して、行屎走尿の際にも、完全たる芸術家として存在し得るだろう。
ー夏目漱石「草枕」より
たとえばタクシーを捕まえようとして、駆け足で走れば「自動的に」心拍数が上がる。たとえば聴衆の前に立って話をしようとすると「自然に」副腎からアドレナリンが分泌される。たとえば魅力的な異性を見ると「反射的に」瞳孔が拡張する。
自動的に、自然に、反射的にとは、身体本来のシステムが環境の変化に反応するときの様子を表した言葉である。
あれこれややこしくすることはない、私たちはそれそのまま自然にて生きている。それにどんな不都合があるといえるのか。
Ennio Morricone - Theme from "Once Upon a Time in the West"